« 歴史からみる韓国分析 | メイン | トンデモな話からblog論へ »

2005年03月26日

ポーランド1936 嵐の東部戦線

*これはHearts of Iron2というゲームをプレイした読み物風の記録です。ちなみにHearts of Iron2は日本では発売禁止になったゲームなので、英語版でのプレイになります。
*読み物として面白くするため、実際のゲームにいくらかの脚色を加えていることをあらかじめお断りします。それではお楽しみください。


 1936年1月、ポーランドの首都ワルシャワ。
 私の名前は提督。日系ポーランド人にして、このたび第2次大戦前夜のポーランドを任されてしまった大統領だ。
 しかし困った。
 我が祖国ポーランドは西にドイツ帝国、東にソビエト連邦という巨大な戦争狂国家に挟まれ、史実では第2次大戦直後に両国によって分割占領されるという悲劇を味わっている。
 もちろん私が大統領である以上、そんな悲劇を国民に味あわせるわけにはいかない。なんとか生き残って見せよう。
 しかし、なんとかするといっても我が祖国は第1次大戦後に建国された新興国家に過ぎず、建国以来一貫して軍事よりも民事を優先させてきた文化国家なのだ。
 そのため、軍事力は限りなく弱い。というか独立当時から装備をいっさい更新しておらず主力は戦車ではなく騎兵という第1次大戦レベルの装備だ。とてもドイツやソビエトの怒濤の攻撃を跳ね返す力はない。

●ポーランド1936周辺地図
 中央の黄色い国がポーランド
 左と上の灰色の国がドイツ帝国
 右の赤い国がソビエト連邦
 下の緑色の国がチェコスロバキア

「まず、どのようにいたしましょうか」
 そういったのは私の秘書のポリーニャさんだ。
 ポリーニャさんは我がポーランドの化身のように美しい。巨乳でメガネをかけていて有能で、という秘書の三大必須能力を備えている。
「その、なんだ、どうするといってもだな……」
 私は居並ぶ閣僚や三軍の長を見る。
 みんな平和ボケした顔でやる気がなさそうだが、更迭すると支持率が下がるのでそのまま留任させたメンツだ。
「とりあえず時間を稼いでそれなりの軍備を整えるしかあるまい」
「どうやって時間を稼ぐのですか?」
「まず前門の虎と後門の狼にツケ届けをして心証をよくする」
「狼がドイツ、虎がソビエトですね」
「そうだ。しかるのちに、ソビエトの産出する石油や貴金属と我が国の資材で貿易し、その石油や貴金属をネタにドイツと貿易する」
「いわゆる三角貿易ですね。しかし、それで狼や虎が見逃してくれるでしょうか」
「大丈夫だろう。貿易を続けている間は無理に攻撃してくる理由はないし、まだ両国とも軍備を整備している最中だ」
「たしか、史実では1939年11月、ドイツとソビエトは共同で我が国になだれ込んできましたね」
「そうだ。そのとき我が国はイギリスと同盟していた」
「はい、我が国は大統領制であり、議会政治のイギリスと政体が似ていますのでその縁で。さらにいえば我が国が建国できたのもイギリスのおかげですから」
「その通りだ。だが、私は恩人のイギリスと同盟する道は選ばず、自由と民主主義を犠牲にしてドイツ枢軸に入って生き残るつもりだ。もちろん今すぐは無理だからしばらく貿易をして独ソ両国のご機嫌をとる」
「しかし、ドイツと同盟する道が本当に賢明なのでしょうか? 史実ではドイツは米英ソの連合軍に滅ぼされています」
「必ずドイツが負けるとは限らないし、やばくなったら米英に寝返ってもいい」
「では、最初からドイツを滅ぼす予定のソビエトと同盟したらいかがでしょう?」
「共産主義者は条約破りで有名だな。同盟したからポーランドの安全が保証されるとは限らない」
「なるほど、閣下のお考えがわかりましたぞ!」
 陸軍大臣のエドワードが甲高い声でいった。
「ドイツと同盟し、時間を稼いでいるあいだに我が陸軍を育てるのですな。さすがは閣下だ!」
「いや、そんな金はない。当面、軍事にはビタ一文ださん。我が国の生産力は貿易用の資材をつくるだけで手一杯だ」
「しかし、陸軍の装備は旧式で国境警備も不安なほどですぞ」
「うむ。ほとんどの部隊が第1次大戦の装備だからな」
「では戦車師団の新設とはいいませんが、せめて装備の更新だけでも許可願いたい」
「ダメ。工場を新設したり、新戦車開発や工場の効率をあげる研究はするが、そのほかに使う金はない。いまポーランドにある旧式装備の部隊ですら国庫には負担なのにこれ以上軍事に金を使えるか。いいか、諸君。我が国は当面、ケチケチ作戦でいく」

 こうしてポーランドの生き残り大作戦が始まった。
 独ソとの三角貿易はスムーズにすすみ、国富が溜まりはじめた1937年の7月、ポーランドは稼いだ金を外交に使い、ドイツの世論を動かして枢軸同盟に加入することができた。といっても、この段階でほかに枢軸に入っている国はドイツとポーランドだけ。
「おめでとうございます。これで前門の虎に集中できますね。では、軍団をさっそくソビエト国境に貼りつけましょうか」
「いや、時期的にもうすぐドイツのチェコ進駐がはじまるはずだ。我が国も枢軸国として参加して分け前にあずかり……もとい同盟の義理を果たす必要がある。全軍をチェコ国境へ向けろ」
「自国が生き残るために弱小国を占領するとは、ずいぶん鬼畜な戦略ですね」
「なんとでもいえ。ポーランドは資源も工業力もない上に列強に挟まれているから、鬼畜なことをしないと生き残ることすらできないんだ」
「しかし、全軍をチェコ国境に向けて、ソビエトは黙っていてくれるのでしょうか?」
「史実をみると、当面ソビエトがなだれ込んでくる余裕はないはずだ」
「もう一つ、我が軍の装備は旧式です。チェコに勝てるのでしょうか?」
「戦車師団の新設は無理だが、歩兵師団の装備更新くらいは許可しよう」
「ありがとうございます閣下!」
 陸軍大臣が大喜びで官邸を去る。秘書のポリーニャが心配そうに口を挟んだ。
「しかし、我々は第2次大戦最弱とうたわれたポーランド軍です。本当に大丈夫でしょうか?」
「うむ、我が国最初のバクチだな」

 それから1年後の1938年7月。
 ポーランド軍の装備更新は遅々として進まない。そんななか、突如としてドイツがオーストリアに攻め込んだ。
「あ~あ、あんなところに攻め込んでも分け前がもらえないのに~」
「そういう問題ですか。しかし、さすがはドイツ軍、我が国が配備すらしていない戦車を駆使してあっという間にオーストリアを滅ぼしました」
「ううむ、電撃戦というやつだな。このまま装備が更新されるのを待っていたらチェコを丸ごととられてしまう。そうなると我が国は貧乏なままだ。そうなる前にチェコに宣戦布告をだそう」
「しかし、ドイツは同盟国ですから一緒に攻め込んできます。独り占めにできませんが、よろしいのですか?」
「かまわん。どうせ我が国は単体ではチェコにも劣るのだ。首都攻略はドイツに任せて我々は西部の工場都市を狙おう。第1目標Bratislava州、第2目標Holaburun州、全軍すすめ!」
 大統領の指示のもと、ポーランドのほぼ全軍45個師団が一斉にチェコ領東方五州に侵入する。
 しかし、敵は合計12個師団で果敢に反撃。旧装備のポーランド軍は手こずりながらも強引に数で押しつぶしていく。こうして、なんとか第1目標は確保したものの、補給切れでモタモタしているあいだに第2目標はドイツ軍が奪ってしまった。
「しかし、危なかった。2倍の数で攻めても攻めきれないとはな。相手が軽装備の歩兵師団で良かった」
「まったくです。これでは戦車を装備した連中がでてきたらどうなることか。閣下、いまこそ戦車師団の生産を願います」
「陸軍大臣、それは却下だといっているだろう。今は損害の補充と歩兵師団の装備更新で我が国の国力は手一杯なんだ。それよりこのままバクチを続けるぞ。損害から回復したら次はハンガリーに宣戦布告だ」
「矢継ぎ早に戦争をすると国民の労働意欲が落ちて生産力が落ちますが、よろしいのですか?」
「ソビエトがおとなしくしている間に少しでも多く土地と工場と資源を確保したい。そのためなら国民にはいくらか泣いてもらおう」
「まるで戦国大名の国盗りですね」
「たしかにそうだな。しかし、我がポーランドは戦車も戦闘機もなく騎馬と歩兵だけの軍隊だから、戦国時代並かもしれないぞ。今川と織田に囲まれた徳川の気分だな。もっとも我が国が徳川と違って人材がほとんどいないわけだが」
「泣けてきますね。そういえば我が国は空軍と海軍の開発は無視していますが、よろしいのですか?」
「よくはないが、どこをひっくりかえしても余分な生産力はない」
「結局、それなんですね」
「みんな貧乏が悪い」
 大統領はいいきった。

 1938年。
 損害を補充したポーランドはハンガリー国境に集結した。
「諸君、いきなりだが予定を変更する」
「は?」
「我々はこれよりルーマニアを占領する」
「なぜでしょうか」
「それはだな、我が軍の装備を強化しはじめたとたんに油の消費が増えたからだ。このままではケチケチ作戦で備蓄してきた油が底をついてしまう」
「なるほど、ルーマニアには油田があるからそこを占領してしのごうということですか。まったく山賊みたいな戦略ですね」
「なんとでもいえ」
 軍団の再配備を終え、9月には対ルーマニア戦が始まった。敵は若干の戦車師団を持っていたが、ポーランドの人海戦術に呑まれていく。
「大統領閣下、ルーマニアを完全に併合しました。しかし、各地でパルチザンが横行しており、治安維持のために引き続き部隊をルーマニアに駐留させなければなりません。また、歩兵師団の消耗分を徴兵したため国力がかなり減りました。当分は大規模侵攻が無理です」
「わかった。生産力を民需に大目に回して国民の不満を緩和し、しばらくは地道にパルチザンを掃滅しよう」

●ポーランド1938周辺地図
 チェコスロバキアの一部とルーマニア全土をポーランドが占領した

「閣下!」
「なんだね、陸軍大臣」
「今度こそ戦車の配備をお願いします」
「君もしつこいね。しかし、いつまでも歩兵主体でいくわけにもいかないな。わかった、戦車師団を創設しよう。戦車を10個師団、自動車化歩兵10個師団を新設してポーランド全軍で70個師団体制にする」
「しかし、それだけ新設しますと補給が追いつかないのではないでしょうか」
「そうだな、あとでハンガリーとユーゴスラヴィアも併合するか」
「それならなんとかなりそうですが、70個師団でどこを攻めるのですか?」
「なにをいってるんだ、もちろん最終目標はソビエトだ」
 閣僚達が一斉に腰を抜かす。
「それは……いくら70個師団を揃えても無理では……。史実では倍以上の軍勢を持っていたドイツ軍ですら敗北したんですよ」
「もちろんポーランド単独なら無理だ。だが、ドイツにも協力して貰えばなんとかなるんじゃないかな。いまのところドイツは英米と戦争をはじめていないから、余力があるはずだ」
「しかし我々はポーランドですよ! 今まで生き残ってこれたのは独ソにおべっかを使ったからじゃないですか」
「たしかに」
 閣僚達は沈痛な顔をする。すっかり負け犬が板についている。
「うるさい。なんといわれても対ソ戦をするぞ!」
「閣下、あなたはポーランドを滅亡させるおつもりか」
「黙れ。これは決定事項だ。滅亡したくなければ、敵を滅ぼせ」
 こうしてポーランドの狂気の軍拡がはじまった。
 次々に近隣国を併合し、生産力を高めて軍団の装備を更新し機械化師団を新設する。
 そして貧乏国ながらなんとか20個師団の増設に成功し、全軍をソビエト国境にはりつけた。
「よし、まずはソビエトに対し旧領回復交渉を行う。不法に占拠したポーランド東部諸州を返還しろとスターリンにいってやれ。要求を呑まないときは開戦する」
 戦争準備の整っていないソビエトはやむなく交渉を受け入れ、戦わずしてポーランド軍は一歩前進した。これでお膳立ては整った。

●ポーランド1943周辺地図
 さらに南方の国を占領し、ソビエト国境に集結したポーランド軍

「諸君、これよりラグナロック作戦を発動する。第1次攻略目標はラトヴィア。この国を占領してドイツ軍団のソビエト進撃路として確保する。皇国の荒廃この一戦にあり、各員の一層の奮励努力を期待する」
「大統領、それ極東の国の決まり文句ですよ」
「一度いってみたかったんだ」
 1944年末。
 ラトヴィア攻略作戦が始まった。ラトヴィアと同盟していたエストニアが参戦するがドイツ=ポーランド同盟の敵ではない。ほとんど瞬殺され全土が蹂躙された。
「よし、ラトヴィア攻略部隊をソビエト国境に戻せ。それが終わったらソビエトに宣戦布告する!」
「閣下、申し上げにくいことなのですが」
「なんだ、いってみろ陸軍大臣」
「じつは先ほど陸軍参謀本部で机上演習をしてみたところ、どう計算しても圧倒的に兵力不足ということがわかりました。このままですと、戦線が突破され、戦略予備のない我が軍は包囲殲滅されてしまいます」
「たしかに兵力の厚みは違うが国境沿いの正面戦力はほとんど同じだぞ。持久戦もダメなのか」
「じつは、ソビエト師団1個に対し我が軍は3個師団でやっと同等の戦闘力なのです」
「そんなにポーランド軍は弱いのか」
 大統領は絶句した。
「陸軍としましては作戦の延期を勧告します」
「むぅ、兵力をさらに追加する。それに東部国境沿いの要所に要塞を建造しろ。それまで作戦を延期だ」
 そして時は流れて1947年6月。
「よし、今度こそ準備は整った。第2次攻略作戦発動!」
 ソビエトとポーランド=ドイツ枢軸は開戦した。
 ポーランドはとにかく東部国境沿いに全兵力を集めて敵の足止めをする。そのあいだに北方からドイツ軍が侵攻し、モスクワを攻め落としてくれるのを待つ作戦だった。
 モスクワが落ち、さらにドイツ軍が東進すれば、東部戦線は巨大な包囲網と化す。あとは補給切れで動けなくなった国境の敵を駆逐するだけだ。それぐらいならポーランド軍にもできる。
「我ながら完璧な作戦じゃないか。なあ、陸軍大臣」
「さすがは大統領閣下です」
 そのとき秘書のポリーニャさんが血相をかえて官邸にやってきた。
「大変です! ソビエト軍が東部戦線を突破しました!」
 ソビエト軍は要塞線の隙間に機甲師団を波状攻撃でぶつけてきた。要塞線のあいだには通常より多くのポーランド師団がはりつけてあったが、これがあっけなく突破されたらしい。
「敵は突破したところから次々に新手の師団を侵入させてきます。はやく手を打たないと要塞線が包囲されますぞ!」
「そういわれても予備兵力はない」
「では、全軍後退しますか」
「要塞を放棄して、戦線を保てるか?」
「おそらく無理でしょう。しかしこのままでは各個に包囲殲滅されるだけです」
「いっそ首都周辺に全軍を集めて壁にするか。持久しているあいだにドイツ軍がモスクワを落としてくれればなんとかなるだろう」
「それが一番確実ですか」
 しかし、ポーランド軍の後退はすぐに潰走に変わった。
 よく考えてみればポーランド軍はほとんどが歩兵師団で移動力は低い。あっというまに各所で戦線は分断され包囲殲滅されていく。
「ドイツはどうなっている、ドイツは」
「モスクワを包囲しましたが、籠城されててこずっている模様です。それより大統領閣下、我が国の首都の心配もしてください。すでにソビエトの機甲師団が包囲にかかっています」

●ポーランド1947周辺地図
 国土を分断され、軍団も包囲された末期状態

「首都防衛用に呼び戻した師団はどうした!」
「ほとんどが各地で包囲されています。首都防衛に間に合った師団は全軍の十分の一です」
「大統領、ここまでですね」
 秘書のポリーニャさんがワルサーを大統領のこめかみに当てた。
「君はいったい……!」
「大統領、あなたはポーランドを生き残らせるためといって多くのポーランド人を死地に追いやった。あなたの無能、死をもって償ってもらいます」
 銃声が大統領官邸にこだました。

end

投稿者 teitoku : 2005年03月26日 19:04

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://teitoku.sakura.ne.jp/blog/mt-tb.cgi/54