« 2005年11月 | メイン | 2006年05月 »
2005年12月25日
リプレイ HOI2 第三帝国
「ハイル・ヒトラー」
さわやかな朝の挨拶が、澄みきった青空にこだまする。
総統のお庭に集う軍人たちが、今日も天使のような無垢な笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく。
汚れを知らない心身を包むのは、ドイツ陸軍と武装親衛隊の軍服。
階級章とハーケンクロイツは乱さないように、ドクロマーク付きの軍帽は翻らせないように、ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。
ドイツ第三帝国。ここは軍人の園。
ハーツ オブ アイアンⅡ【完全日本語版】発売を記念してドイツ第3帝国リプレイ記事をまとめます(筆者の環境は日本語版ではなく、英語版バージョン1.3に日本語化パッチをあてたものですが)。
難易度ノーマル
CPUの好戦度HARD
1936年シナリオ
選択国ドイツ
1936年1月1日
「ハイル・ヒトラー」
「ハイル・ヒトラー」
床屋の親父が似合っていそうなチョビ髭の小男、ヒトラーに貴族出身のドイツ高級軍人たちが一斉に敬礼を捧げる。
その顔つきは苦々しげなものから純粋な崇拝の念まで様々だった。
「諸君、ありがとう」
ドイツ第三帝国の総統にしてドイツ国民の期待を一身に集めるヒトラーはそういった。
「ところで昨晩のことだが、余は一幕の夢をみた」
いきなりなにをいいだすのかと、けげんそうに首をかしげる一堂から目をそらし、ヒトラーは続ける。
「余は、夢の中でドイツが燃えている姿を見た。東西から米英ソ連合国に挟み撃ちにあった我が第三帝国は灰燼と消えていったのだ」
ヒトラーは居並ぶ将軍たちを炯々たる瞳で睨みつける。
「余はドイツを灰にする気はない。今日の会議はドイツ第三帝国百年の計を練るものである。諸君らもそれを肝に銘じて必勝策を考えてもらいたい」
そして会議がはじまった。
陸海空の将軍らはばらばらな意見を述べる。
結局、ヒトラーは第一目標として国内の工場群の性能を高める政策を、第二目標として戦車師団を含む陸軍の大増勢、第三目標として英国本土強襲上陸に使える艦隊を二セットと輸送船団及び護衛艦隊の増勢を命じた。潜水艦の開発は中止。空軍については迎撃機と戦術爆撃機の開発を命じただけであとは事実上の開発中止が命じられる。
「イギリスある限り、我が軍は常に挟み撃ちの危険を免れない。だが、邪魔ならば占領してしまえばいいではないか」
「それではこの編成は対英作戦を考えた布陣なのですね」
「もちろんだ。だが、上陸作戦は1942年以後になるだろう」
「しかし総統閣下、海軍に生産力を傾注しては対ソ戦の戦力が危ういのではないでしょうか」
「もちろん対ソ戦も大事だが、それ以上にイギリスとその背後にいるアメリカは目障りだ。余はアメリカ参戦につながるような戦略はできるだけとらないつもりだが、やつらが参戦してきた時には諸君らの健闘に期待するものである」
居並ぶ将軍たちは目の前の床屋の親父を奇妙なものを見る目つきでみた。そこにいるのはとんでもない先読みの天才か狂人のどちらかだ。
「まずはフランスとの国境線沿いにあるラインラントに進駐する。これをやると連合国との関係は悪化するが、やらないと我がドイツ国民の不満度があがる。損得でいえば関係悪化のほうがマシだ。その後、軍備を充実させつつスペインのフランコを支援し、オーストリアを併合、次にズデーデンランドをチェコから奪う。残余のチェコはハンガリーと二分し、ハンガリーを枢軸の同盟国として迎え入れるつもりだ」
「しかし、ハンガリーは同盟軍として役にたつのでしょうか」
「後方の占領地でパルチザンを狩らせるぐらいの役目はこなせるだろう。征服戦争には頭数が必要だからな」
ヒトラーはにんまりと笑った。
こうして歴史は総統の計画通りすすみ、ドイツ軍はポーランド国境線沿いに集結した。
「総統閣下、図上演習の結果ですがポーランド軍は意外と手強い敵と判明しました」
「戦車もろくに持っていないあの国がかね」
「はい。攻撃力は弱いのですが、平押しに押すと首都ワルシャワに立てこもられる可能性があります。三〇個師団以上で首都にたてこもられると戦争は長期化いたします」
「ふむ、それでは我が軍の機甲師団をワルシャワにもっとも近いケーニヒスベルグに全軍展開させたまえ。そして開戦と同時に突撃させて首都を包囲してしまえばよい。副次的にポーランド北方の敵軍を包囲した形にもなる」
「なるほど、さらにハンガリー方面から北へつきあげればポーランド全軍を包囲することも可能ですな」
ポーランドは一ヶ月とかからず陥落した。

▲ポーランド蹂躙。協定によりポーランド東部はソビエトが占領。
「総統閣下、戦後処理はいかがなさいますか」
「このときのためにつくっておいた守備隊を憲兵つきで駐留させておくがよい。全軍はひきかえしてベルギー・ルクセンブルク・フランス国境に集合させよ。特に足のはやい自動車化歩兵と戦車師団はすべてベルギー前面に集めるのだ」
「了解しました。ところで外交はどうなされますか」
「そうだな、英仏連合軍が敵に回った今、余はスペインを枢軸に迎え入れようと思う。スペインにフランス南方を侵略させると同時に地中海の生命線であるジブラルタルを攻め落とさせよう」
「ではスペインに連絡をとってみます。……閣下、フランコが同盟参加に飛びついてまいりました」
「よろしい。スペインの軍備はどの程度のレベルか」
「陸海ともに第一次大戦レベルですね。かろうじて空軍が使い物になりそうですが、数が少ないようです」
「では全力でジブラルタルを攻略させよ。地中海の制海権をとるのに必要な場所だからな」
フランコ軍はジブラルタルを攻め落とす。しかし、スペイン海軍は英国海軍に補足されて壊滅。残余の艦船を航空部隊に援護させてジブラルタルに回航させた。
「これではとうぶんスペイン海軍は作戦には投入できませんね」
「もとからスペイン海軍にはなにも期待しておらんよ。それより我が軍の期待の星はどうなっているか」
「お喜びください、このたび46センチ砲装備の超ド級戦艦ビスマルクが竣工してレーダー元帥の艦隊に配属されました。同型艦はあと3隻が計画されており1944年までにはすべて竣工するでしょう。ただし、空母のほうは手間取っております。そこそこの性能をもった空母を設計できるまではいましばらくの時間がかかると思われますが、1942年までには間に合わせてみせます」
「期待しておるぞ。陸軍のほうはどうなっているか」
「機甲師団は順次、三号戦車にグレードアップしてベルギー正面に集結中です」
「では、集結次第、中立国のベルギーとルクセンブルクに宣戦布告せよ。機甲師団はアルデンヌを抜けてパリを目指すのだ」
「オランダは征服されないのですか」
「あの国を征服するとアジアの植民地地帯に亡命政府が自動的にできて連合国に入ることになる。そうなると我が東の友邦、日本が石油不足になるからな」
「はあ」
「考えてもみろ、もし日本が石油問題を解決するためにアメリカ及びイギリスに喧嘩を売るとどうなる?」
「なるほど、自動的に我が国もアメリカと戦うことになりますね。しかし、その日本ですが、さきほどソビエト相手に開戦したもようです」
「なんだと! まだ中国の征服も完了していないのにか」
「どうやらノモンハンの局地戦がそのまま全面戦争に拡大したようです」
「ええい、世話の焼ける国だ。ともかく目の前のフランスを片づけるぞ」
フランスはアルデンヌの森を抜けたドイツ機甲師団の活躍でたった1週間でパリを占領されあっけなく降伏した。

▲機甲師団がパリを蹂躙。独仏国境線のマジノ要塞線は役立たずに終わる。
ドイツ軍は占領地にパルチザン対策としてハンガリー・スペイン師団と治安維持用の守備隊を配置し、ユーゴスラヴィア国境に向かう。
「今度の敵はユーゴだ。強い敵ではないからサクッと占領するぞ」
「あの、総統閣下、じつはイタリアがすでにユーゴと開戦しており、我々が部隊をユーゴ国境に集結させているあいだにユーゴを征服しかけております」
「なんだと、あのイタリアがそんなに強いのか」
イタリアは三流国を相手にした時は強かった。ユーゴはたちまちのうちに攻め取られていく。
「ふむ、これでドイツの南方はとりあえず安全になったな。このぶんならイタリアとは同盟を結ばず、友邦国という扱いで連合国との壁になってもらうか」
「ではギリシャはくれてやりますか」
「そのくらいの役得は当然だろう。イギリスのほうはどうなっているか」
「西部戦線はいまのところイギリスからの戦略爆撃を迎撃戦闘機が出撃して凌いでいるところです。レーダー基地が完成するまで迎撃が後手に回りますが、迎撃部隊を増産しているのでしばらくは問題ないでしょう」
「すると懸案はソビエトだな。予定より1年早いが、1940年3月頃に対ソ戦をはじめるか」
「しかし、1年待てば陸軍の増勢が……」
「敵も今なら戦力不足だ。とりあえず出撃基地としてリトアニアが欲しい。速攻で攻め落とせ」
ドイツ軍は嵐の勢いでリトアニアを征服した。
開戦劈頭で敵が前線にへばりつかせている全師団を包囲殲滅するため、中央に足の遅い歩兵師団を、両翼に機甲師団を配置する。
1940年3月3日
1940年3月、ヒトラーはソビエトに対して一方的に不可侵条約の破棄を通告、そして宣戦布告を告げる。
ドイツ国民は不可侵条約の破棄にすこぶるお冠で不満度が5%もあがった。不満度があがるとパルチザン活動が活発になったり工場の生産能力が落ちるが、そうしたデメリットを甘受しても開戦するメリットは高かった。
極東では中国とソビエトの二正面作戦を迫られた日本が満州国全土をソビエトにとられて苦戦しているが、それは裏を返せばソビエトが極東に戦力を集中していることを意味している。
「つまりここで開戦すればソビエトは二正面作戦を戦うことになるということですね。では、折良く三国同盟のイベントが起こっておりますし、同じ敵と戦う仲間として日本と同盟を結んではいかがでしょうか?」
「いや、日本との同盟は一時棚上げにする。奴らは戦争バカだから同盟したとたんにオランダとアメリカに喧嘩をふっかけるぞ」
「なるほど、そうなるとドイツは全世界を敵に回すことになりますね」
「そういうことだ」
「総統閣下、対ソ戦の戦略はどうなさるおつもりですか」
配置図を前にグーデリアン中将が聞く。
現在、ドイツ軍は南北に長い戦線の上端と下端に機甲戦力を集中させ、戦線そのものは歩兵師団で支えるという形をとっている。
ヒトラーはチョビ髭をなでつつ、指揮棒で国境沿いに集結しているソビエト軍のまわりをクルリと円を描いた。それだけで百戦錬磨の将軍たちは納得する。
「機甲師団の突破力と速力をいかし、南北で敵の戦線を突破し、そのまま敵戦線後方を走り抜けて包囲殲滅するわけですな」
「余の戦略は、ソビエト軍の殲滅だ。いかにソビエトが無限の回復力を誇ろうと、殲滅された師団は二度と復活しない」
「そうするとモスクワやレニングラードは戦略目標にされないのですか」
「予定より早く開戦するわけだから、我が軍もまた準備不足なのだ。敵地に長駆進出する兵力はない。そうだろう、ロンメル中将?」
「おっしゃるとおりであります」
ドイツが三国同盟を棚上げし、イタリアも中立をまもったためアフリカ戦線はまだ存在しない。そのため、ドイツは持てる戦力のすべてを対ソ戦に注ぎ込むことができたが、それでもソビエトは圧倒的に広かった。
「我が軍の戦略は徹頭徹尾、敵戦力の包囲殲滅である。冬がくるまでに100個師団ほども殲滅できれば、モスクワへの道を阻む敵はいなくなるであろうよ」
そういってヒトラーは笑う。
そして目論見通り、緒戦でソビエトは最前線の師団をごっそり失った。

▲開戦と同時に戦線北方と南方で包囲作戦にでるドイツ軍

▲包囲され四分五裂するソビエト軍
「総統閣下、敵は新たな戦線を構築中であります」
「よろしい、こちらも戦線を整理し、補給する時間が必要だ」
そして1ヶ月後、ドイツ軍は再度の包囲殲滅戦を実行する。
「総統閣下、これで50個師団ほどの敵を殲滅したことになります」
「ふふふ、スターリンめ青くなっているな」
「しかし、歩兵師団の補給率低下が著しく、しばらくは戦闘ができません」
「ならば動ける師団を動員して南部の敵を包囲する。戦車師団は動けるのだな?」
「はい」
機甲師団がセバストポリ周辺になだれこみ、敵を制圧していく。

▲機甲師団のみで手薄なセバストポリ方面の包囲殲滅を実行。
「問題は次の一手だな。そろそろ戦線も限界まで伸びている。対パルチザン対策の守備隊も底をついた。思い切って手薄なバクー方面に兵を動かし産油地帯をおさえたいが、戦線を支える兵力がない」
「総統閣下、敵がこちらの前線に沿って戦力を集中させはじめました」
「ふむ、スターリンも必死だな。戦線を整理し、敵の戦力が集中している中央部を包囲殲滅せよ」
「中央部を突破するとモスクワが目と鼻の先になります」
「余力があればモスクワに突入してもいいが……」
1940年7月、ついにドイツ軍はソビエト軍の戦線を食い破り、モスクワに攻勢をかけた。突出した3個機甲師団による攻撃はしかし、籠城するソビエト軍によって跳ね返された。

▲要塞化されたモスクワは硬い。
「さすがにそううまくはいかないようだな」
「戦力が不足しております。あのとき6個機甲師団を追加できていればモスクワ占領は成功したでしょう」
「グーデリアン将軍、ないものねだりはよくないな。それに失敗したものにいつまでもこだわるのもよくない。このまま戦線を整理しつつ、レニングラード方面に攻勢をかける」
「総統閣下、なぜレニングラードなのですか」
「地図をよくみろ。陸路でレニングラードにいくのは時間がかかるが、海路でいけばものの数日の距離だ」
「つまり戦艦の艦砲を使って強襲上陸をかけるわけですね」
「ちょうど後方で編成中の機甲師団がある。あれを使おう」
戦線の整理と残敵の掃討を行いつつ8月、ついに46センチ砲戦艦の援護のもと機甲師団がレニングラードに無血上陸する。
「総統閣下の戦略どおり、スターリンは深刻な兵力不足になっているようです。なにしろレニングラードというソビエト第2の重要拠点の防備すらままならないのですから」
「よろしい。戦線を整理したおかげで40個師団ほどが次の攻勢に使うことができるようになる。これでどこを叩くか……。グーデリアン将軍の意見は」
「はい、まずはレニングラードへの陸路をつくり、この方面の敵を撃破して不敗の体勢をつくるべきかと存じます」
「ロンメル将軍の意見は」
「冬が来る前にモスクワを攻略します」
「どちらの意見も一長一短ある。だが、ここは基本に忠実に敵兵力の包囲殲滅を優先したい。敵はレニングラードとモスクワのどちらに集結しておるか」
「モスクワ正面に敵が集結しております」
「よし、この敵をたたき、モスクワをとるぞ」
ヒトラーは決断を下した。各戦線から抽出された40個師団もの大軍がモスクワ前面に集結していたソビエト軍を包囲し、一気に殲滅。その余勢でモスクワを攻略。部隊の一部はそのままレニングラード方面の敵包囲に向かい、また一部は南方の秩序の乱れた敵におそいかかった。

▲1940年9月、モスクワ陥落。
「敵はスターリングラードを新しい首都と定めてその前面に戦線をはりました」
「敵兵力の詳細は?」
「機甲兵力はほとんどなく、民兵が主体です」
「それならレニングラード方面の部隊を待つまでもない。平押しに押してシベリアまで突進せよ」
ソビエトが弱体化したとたん、周辺諸国が次々にソビエトに宣戦布告をする。
「スターリングラードが陥落しました! 敵はもう組織的な抵抗力はないものと思われます。これより残敵掃討作戦に入ることを進言します」
「許可する。ときに連合軍の動きはどうなっているかね」
「それが総統閣下、ペルシャが連合軍によって占領されました」
「ふむ、バクーの油田狙いだな。同盟国軍の部隊で壁をつくり、レニングラード方面から南下させているドイツ軍の到着までもたせるんだ」
ドイツ軍がソビエトの残敵掃討作戦を続けているうちにとうとうスターリンが講和を申し出てきた。

▲この後、スターリンは処刑されたのかソビエトのリーダーが一新する
ヒトラーは沸き立つ司令部の面々と祝杯をあげたあと、次はイギリスを叩くと宣言した。
「それですが」
とロンメル中将が地図をひろげる。
「連合軍に併合されたペルシャを侵攻路にすれば中東・アフリカ方面、あるいはインド方面になだれ込むことが可能です」
「レーダー提督、海軍のほうはどうなっておるか」
「空母建造のほうはあと半年はかかります」
「そうか、ではインド方面とアフリカ方面に一気になだれ込み、イギリスの大事な資源地帯を奪うことにしようではないか」
「ハイル・ヒトラー!」
ドイツ軍の士気は最大限に盛り上がった。
対ソ戦で鍛えられた部隊が狭い回廊を抜けてペルシャ方面の英軍を各個撃破していく。たちまちのうちにペルシャとイラクが陥落し、ついに1942年4月、スエズ・アレキサンドリアまで占領された。
だが、そこへ驚天動地の事実が沸き上がる。
「なんだと、日本がアメリカ・オランダ・イギリスに宣戦布告しただと? 中国の併合もすんでいないのに、連中は何を考えているのだ」
「我が国はいかがいたしましょう」
「どうもこうもない。幸いまだ同盟は結んでいないのだから参戦する義務はない」
「閣下、オランダが連合軍に参加して我が国に宣戦布告してきました」
「一気に揉みつぶせ」
イギリス上陸用にリザーブされていた30個機甲師団に包囲されたオランダは開戦3日で本国を喪失した。
「よし、次はイギリス本土上陸作戦だ!」
調子にのるドイツ軍だったが、そこに冷酷な事実が待ち受けていた。
「総統閣下、石油がありません」
「どういうことだ。バクーの油田が手に入ったはずではないか」
「機械化師団が急激に増えたこと、常に部隊が奔走していること、今まで我々に石油を供給してくれていた各国が日本の対米参戦を機に急に交易を断ってきたためです」
「では、イギリス本土上陸作戦はどうなる」
「おそらく上陸直後に燃料切れになる最悪のパターンかと思います」
「くっ、イタリアを枢軸同盟に迎え入れろ。アフリカはイタリアにくれてやる。グーデリアン大将、アフリカ軍の半分をソビエト国境に貼りつけろ」
「では、戦線の拡大は」
「石油がなくてはなにもできん」

▲ここまでのドイツの占領地集計。
「閣下、ベネズエラが石油を大量に持っておりました。交易を申し込んだところ、かなりよい条件で手に入れることができました」
「うむ、備蓄はどうなっている」
「難しいところですが、大作戦を決行しなければ徐々に増えていくかと思われます」
「そうか、ではイギリス本土上陸作戦を決行する。目標はドーバー。ケーニヒスベルグの全艦隊に24個師団の機械化部隊を載せて出発させろ。ゲーリングの航空艦隊にはドーバー近郊のイギリス軍を叩かせ、救援に迎えないように釘付けにさせておけ」
「ちょっと待ってください、総統閣下!」
「どうしたレーダー提督、海軍は空母も戦艦も就役して準備は万端なんだろう?」
「それはそうですが、さきほど大作戦を決行しなければ備蓄ができると……」
「うむ、それがどうかしたかね」
「イギリス上陸作戦は大作戦です。石油の備蓄が底をついてしまいます」
「レーダー提督、君はバカかね? 石油は使うためにあるのであって、備蓄するためにあるわけじゃない。この理屈がわかるかね?」
「わかります。また、インドとアフリカに圧迫を受けたイギリスが本土の兵力の過半を植民地に回して手薄になっていることもわかりますが、危険です! 失敗したら全土で我が軍の行動がストップしてしまいます」
「提督、すでに賽子は振られてしまったんだ。石油切れの危険があろうといまここで英国を落とす!」
そして周囲の反対を押し切り、英国上陸作戦が始まった。
ドイツ海軍はこのとき、第1から第3までの海上艦隊を有していた。そのうち第1は空母と戦艦、輸送艦を集中させた完全な戦闘上陸艦隊で、第2は重巡と駆逐艦、輸送艦で構成された上陸師団警護艦隊、そして第3艦隊は旧式艦で構成された囮艦隊だった。
囮の第3艦隊が優勢なイギリス艦隊主力を北方におびき寄せているあいだに第1及び第2艦隊がドーバーに強襲上陸をかけるのがこの作戦のカラクリだった。
「閣下、上陸成功です!」

▲1942年6月20日、ドーバー上陸。
「ただちにイギリス本土征服作戦を発動せよ。グズグズするな!」
「閣下、もうひとつご報告があります。スカパフロー沖で囮役の第3艦隊がさきほど全滅いたしました」
ヒトラーをはじめ司令部にいた全員が瞑目する。
そして1週間後、上陸したドイツ戦車部隊の前にイギリス本土はあっさり陥落し、チャーチルはインドに亡命政府をつくった。
「総統閣下、これでソビエトに続き英国に対しても我が国の勝利が確定しました、おめでとうございます!」
「ありがとう、これもドイツ陸海空軍のがんばりのおかげだ。余もドイツ国民も皆に感謝しておる」
「ハイル・ヒトラー!」
「さらに総統閣下、嬉しい知らせがあります。ロンドンに莫大な量の石油が備蓄されておりました! これで我が軍はあと10年は石油の備蓄を気にせず戦えます」
「よし、アフリカとインドの方面軍に攻勢を命じろ。チャーチルの息の根を止めるのと同時に世界をゲルマン民族のものにするのだ!」