「第1話;もうヒトじゃないから」

 繁華街のはずれの薄暗い路地。
 表通りの喧噪に紛れて一人の少女が絶望的な喘ぎ声を漏らしていた。
 少女は怯えていた。この界隈では有名な有名私立高のセーラー服は無惨にもまくり上げられ、若々しい乳房は男の舌で舐め回され、無骨な手でこねくり回されている。
「い、いやっ……やめ……て」
 スカートが下ろされ、下着を脱がされた。脂っこい視線が彼女の大事な場所を視姦する。そこはまだ野獣の目に触れたことのない処女地だった。
 男達の一人が指をふれた。少女の背筋に悪寒が走る。汚らわしい、そう思った。だが、指はゆっくりと前後運動を始め、徐々に青い果実を濡らしていく。
「……あっ、あぅっ」
 少女の喘ぎがしだいに恍惚の響きに変わっていく。彼女を囲む男達はニヤニヤと笑い、一人の男がズボンのジッパーを下ろした。それはすでに天に向かって屹立していた。
「あ、ああ、あ……」
 少女の顔が恥辱に歪む。その時になって彼女は目の前の男の顔に見覚えがあることに気がついた。いや、周りにいる男達でさえ見知った顔だった。
 彼女は繁華街の裏口でボーイフレンドの桑島クンと初デートの待ち合わせをしていた。
 だが、時間になっても桑島クンはあらわれず、代わりにこの男たちが彼女を裏路地に引きずり込んでいってしまった。今までは通りすがりの狂犬の犯罪だと思っていた。だが……
「最初は俺だぜ、なんせこの取り澄ました女は俺が口説いたんだからな。な、桃子?」
「し、しらないっ! やめてっ! 人を呼ぶわよ!」
「呼べるモンなら呼べばいいじゃねえか。明日になったら学校中にオメーのイヤらしい写真をばらまいてやるぜ、それでもいいのかよ、おらっ!」
「うっ……」
「わかってるぜ。オメーはそんな野暮なことはしない。なんつったって俺はオメーはの素敵なボーイフレンド様だから、な!」
「ギャハハハハハ」
 下卑た笑い声。では、私は売られたんだ。桃子の頭の中で冷静な声が教えた。優しいカレシは、実は山賊以下の男だったというわけだ。彼女の恥丘に二人の男がむしゃぶりつき、さかんに舌を入れてくるが、そんなことはもうどうでも良くなった。裏切られたという思いが快感を押しのけた。
「おい、こいつ泣いてるぜ」
「ようやく何が起こったのか気がついたんじゃねえか。おいよ、桑島、なんかカレシらしいこといってやれよ」
「いまに足腰たたねえぐらいイイ目にあわせてやるから泣くんじゃねえよ、桃子ってか?」
「ギャハハハハハ」
 桑島は自分の屹立しているアレの先端に白い粉をまぶした。反応はすぐにあらわれた。アレが充血し、さらに大きくなったのだ。ほとんど桃子の腕ぐらいもある太さだ。残りの二人もそれにならう。
「桑島クン、やめてっ」
「うるせえっ、ガタガタいうんじゃねえ、メスブタのくせに!」
 桑島が仲間に命令して桃子の足を広げさせ、一気に挿入した。胎内に強引に侵入してくる異物感に桃子は悲鳴を上げた。処女だったのだ。
 最初は痛いだけだった。あまりにも巨大なモノを受け入れた桃子のアソコは血を流し、悲鳴を上げていた。だが、ピストン運動が続くうちにだんだんと痛みが快感に変わり、陶然となってくる。桑島が自分のアレに擦り込んだ粉末の効果が、粘膜を通して桃子にもあらわれたのかもしれない。
 ゾクゾクするほどの刺激が全身を駆けめぐった。熱い液体が放出されたが、桑島のモノはまだ少しも萎えていなかった。それどころか前より大きくなっている。
「壁に手をつけて、尻をこっちに見せろ」
 桃子はいわれたとおりにした。壁に手をつき、男達に自分の恥ずかしいところがよく見えるようにと、精一杯に尻を上げた。恥ずかしさより、これから味わうだろう快楽への期待が勝っていた。
 男達は桃子の期待通り、入れ替わり立ち替わり彼女を犯した。顔も身体も制服も、白濁した精液でベトベトに汚され、それでも桃子は男を求め続けた。自分でも信じられないことに、犯されれば犯されるほど快楽はいや増した。ついには気も狂わんほどになって、男達に奉仕する。男達の背中や首筋に爪を立てておねだりするのだ。
 カリッ
 桑島の首筋から何かがはがれた。
 透明でキラキラと輝く、魚のウロコのような断片。
 なんだろうと思う間もなく、今度は仰向けにされてアナルと口にも入れられた。
 痛みはない。ただ溺れるような快感があるだけ。いつしかあのウロコのことも忘れていた。
 ガサッ
 繁華街側の通路から何かを取り落とす音が聞こえた。
「桃子……ちゃん?」

illast

 クラスメートの矢立朧花(やだてろうか)の声だった。部活の帰りなのか、ギターケースを肩にひっかけている。
「見つかっちまったな」
桑島がいった。仲間たちが笑う。明らかに異常な雰囲気だった。その間も桃子は奉仕を続けさせられている。
「桃子……なにしてるの?」
「ハハハハッ、こいつを見て『なにしてるの』ときたぜ! ナニしてるに決まってるじゃねーか、え、おい!」
 桑島が腰を激しく動かし、桃子の顔に白い液体をぶちまけた。
「朧花! お前にもこの世の楽園を味わわせてやるぜ、感謝しろよ。俺は一度でいいからお前のそのお高く止まった顔を汚してやりたかったんだ」
 他の二人もボロクズのような桃子を放り出し、新たな獲物の後ろに回る。
 桑島は新たな獲物を値踏みした。
 朧花は背が高い。ポニーテールに髪を結わえ、強情そうな眼差しを持っている。
 身体は若さと健康に満ちあふれ、身体つきは決して豊満とはいえないが、スポーツで鍛えたらしい身体はひとことでいえばヤりがいのある、そそる身体つきをしている。
 そして性格は男勝り。この状況下でも、少しも怯むところがない。内心では脅えているのかもしれないが、それを表に出すような女ではないのだ。
「三人がかりで囲まなきゃ女一人口説けないのね」
 朧花は憎まれ口を叩きながらゆっくりとギターケースを胸に抱えて後ろに下がった。背中はぴったりと壁に押しつけられている。
「ヘヘヘッ、もう逃げ場はねえ。余裕ぶっこいてられるのも今のうちだぜ。テメーはこの俺様の下で許してくださいって謝ってもゼッテー許さねー。アソコが壊れるまでテッテーテキに楽しませてもらうからな、グヘヘヘヘッ」
 男たちの下司な笑い。朧花は唐突にギターケースを開けた。中に入っていたのはギターではなく、銃身を短く切ったソードオフ型のライアットガン。拳銃のお化けである。
「な……」
 なんだそれは、という声はライアットガンの発射音に掻き消された。男たちの一人が肩を砕かれ、後ろに吹っ飛ぶ。モデルガンではない。硝煙の匂いが鼻を突く。これは本物の銃だ。だが、どうして彼女が?
 考えている間に、もう一人の男が太股を砕かれ、キリキリ舞いをして倒れた。あっけなさすぎて現実感がなかなか沸いてこない。
 ガシャッ
 ライアットガンに新しい弾丸が装填される音だ。
 銃口はピッタリと、正確に、小揺るぎもせずに桑島の胸を狙っている。ただの女子高生にこんなことができるわけがない。桑島の胸中に一つの疑問が膨れ上がった。
「テ、テメーは何者だ……」
「クラスメートのせっかくのお尋ねだけど、答える義務はないわ」
 桑島は言葉に詰まり、無意識のうちに首筋をガリガリと掻いた。奇妙な感触に驚いて手のひらを見るとウロコのようなものがこびりついている。いったいこれはなんなのだ?
「可哀想に。誰かからクスリを貰ったのね。そして自分は何でもできると錯覚した」
「そ、そうなんだ。クスリだ。クスリのせいなんだ! オレは被害者……」
 ガオンッ!
 銃声が響き、桑島の左腕が妙な角度にねじれていた。なぜか痛みはない。きっとあのクスリのせいだろう。
「まだ生きてるのね、ブタ野郎。さっさと死になさいよ」
 朧花の優しげな声が聞こえ、もう一発銃声が響いた。
 胸に何か重い物がのしかかったような感じがしたが、その直後に意識がブラックアウトする。
 三人のクラスメートがそれぞれ胸に一発ずつ、至近距離からのとどめの一撃を加えられるのをボーッと見守る桃子。レイプの後遺症だろうか、感情がどうしようもなく乾いていた。どうでもいい、それが本音だった。
「桃子、あたしがわかる?」
 返事はない。瞳がうつろになっている。陵辱された身体を隠そうともしない。
 朧花はため息をついてライアットガンをギターケースにしまうと、彼女の額に手をかざし、聞き慣れない言葉を唱えた。
「Uijt jt b qfo.」
 桃子の抜け殻のようだった顔に困惑・怒り・悲しみ・恐怖の入り交じった、混乱した表情が戻ってくる。
「いや、桑島があたしに……そしたら朧花が殺した……」
「いいのよ、彼、もうヒトじゃないから」
 やけにあっさりとした乾いた口調だった。桃子は息を呑む。そんなこたえが返ってくるとは思ってもいなかった。
「あなたもこれを見ればわかるわ」
 そういって朧花が倒れ伏している桑島の首筋に手をやる。
 ウロコに覆われたそこを指でなぞると、三筋の開口部があらわれた。内側が紅い。
「これはエラよ。わかるでしょ、彼はもうヒトじゃないの」
 表通りからサイレンの音が聞こえてくる。何台ものパトカーや救急車がかけつけているようだ。銃声にたまげた付近の住人が警察に通報したのだろう。
「何も怖がらなくてもいいわ」
 桃子は陵辱の跡の残る身体を抱きしめた。その言葉は彼女の傷ついた心を温めていく。
 朧花は集まってきた警察官たちに手帳のようなものを見せ、現場から立ち去っていった。桃子はその後ろ姿をぽかんと見送る。
 事情がどうあれ、彼女は三人もの人を殺したのだ。それなのに、手帳を見せられた警察官は彼女に敬礼までして見送っている。わけがわからない。
「彼女は退魔特捜。この世界を闇から守護する退魔一族の長ですよ」
 振り向くと訳知り顔の救急隊員がいた。手には注射器を持っている。
「さあ、お嬢さん。今はぐっすりと眠るんだ。悪いが魔物に関する記憶はすべて消させてもらうよ。そんなものが公になったら国民はおろか世界中がパニックになってしまうからね」
 その言葉を最後まで聞くことなく、桃子は幸せな眠りに落ちた。