第5話・第一部;「最も淫らな迷宮・上編(あるいは「愛しているわ、誰よりも」)」


プロローグ


 六本木のおしゃれな地下鉄出口を出て徒歩三〇秒。
 周囲にはトーキョーウォーカーに出てきそうなハイカラな料理屋がいくつも並んでいる。
 午後一時。車と人の大渋滞の中、そこだけ刻が止まってしまったような空間がある。チャイナ服に身を包んだ若い中華娘が、一軒の食い物屋を慄然と見上げている空間だ。
 牛丼の吉野屋!
 ゴゴゴゴゴゴ……!
 いま、吉野屋に嵐が近づいていた。
 中華娘が油断なく四方に目を配りつつ、店内に入る。
「へい、らっしゃ……」
 店員が凍りついた。中華娘の背後にうそ寒いオーラが立ち上がっている。
 この客、ただものじゃない!
「ラ……」
 中華娘が口を開いた。
 ゴクリ……
 店員はおろか居合わせた客までが息を呑む。
「ライス!」
 中華娘はマイ・ドンブリを店員に押しつけた。
 押しつけられた店員は完全に気迫に呑まれた。
「ああああ、ああ……て、店長! ヘルプゥゥゥゥ!」
 ゆらりと店長が店の奥からあらわれる。ゴリラじみた面構えの男だった。
「お客さん、なんのつもりですかい?」
中華娘が無言で、人差し指をピタリと店長に向けた。
「グググッ……グムゥ」
 柔道三段、剣道二段、空手黒帯の店長がうなった。この中華娘には一片の隙もない。
「ライス!」
 ああ、なんということだろう! 中華娘の人差し指は店長の頭の後ろ、『ご飯おかわり一五〇円』というメニューを指さしていたのだ!
 店長と中華娘が睨みあう。
 いま、この一瞬、六本木の吉野屋で人外の魔戦が繰り広げられていた!
「へっ、負けたよ」
 店長が先に目を伏せた。
 中華娘の相貌に燃えていた蒼い炎がフッとゆらめく。
店長自らが盛り分けたライスを受け取った中華娘はお店に備え付けの紅ショウガをライスにふりかけた。
「こ、これが幻の紅ショウガ丼! まさか、この目で見る日が来るとは……」
 思わず漏らした店長にニヤッと微笑みかけ、
 ガガガガガガガガガガガッ
 ガガガガガガガガガガガッ
 ガガガガガガガガガガガッ
 一気にガッつき、喰い干した。
「す、すげえ……」
 店内がシンと静まり返った。
「げっぷ!」
 中華娘はテーブルに百円玉一つと十円玉4つ、五円玉1つに一円玉五つを置いた。
「ごっつあんアル」
「す、すげえ! なんてすげえ喰いっぷりなんだ! あんた、さぞや名のある高名な方に違いねえ! 名前はなんてんだ!? 教えてくれ!」
 歯茎を紅色に染め、風のように立ち去ろうとするチャイナ服の後ろ姿。店長は感動にむせび泣く。
「チェイ・パオ」
 娘は立ち止まり、一言そっとささやいた。
 一陣の風が吹く。風はパオのチャイナドレスをめくり、クマさんパンツをあらわにした。
 ブハァッ!
 店長が鼻から血を流して倒れた。
「店長ォォォッ!」
「また、無益な殺生をしてしまったアルか……しかし、これも運命アル」
 チェイ・パオはゴミ箱からフロムエーを拾うと風の中に歩み去っていった。

「こちらでご主人様がお待ちです」
 ツバメ色のエプロンスカートを着たメイドに案内され、屋敷の奥へと通される。
 ここは赤坂の閑静な住宅街。各国の大使館が居並ぶ一角だが、その屋敷は各国の大使館と比べても遙かに大きく、そして優雅だった。
「なにか良くない気配アルね」
 退魔師という職業柄、パオは屋敷に潜む鬼気に気がついた。
「最近、なにかヘンなこと起こってないアルか?」
「ヘンってなにがですか?」
 メイドの璧琉(へきる)さんはにこやかに答えた。
「魔物がらみの事件アル。この鬼気は尋常じゃないアル」
「そうですか? わたくしの家は、山本家に代々お仕えしておりますが、変わったことなんか一つもありませんでしたよ」
「ならいいアルが……」
 どこか割り切れない表情のパオ。
「ご主人様、パオ様がご到着なさいました」
「入りたまえ」
 落ち着いた感じの書斎だった。パオの前に三人の先客がいる。落ち着いた感じのしっとりしたお嬢様、その横には首輪をつけた奇妙な少女と巫女の姿をした負けん気の強そうな娘がいる。
「これで全員が揃ったようだな」
 窓際の初老の老人が口を開いた。老人は足が不自由らしく車椅子に座っていた。
「まずは自己紹介をしよう。私が諸君らを呼び寄せた山本です。ご覧の通り立ち上がれないので座ったまま失礼する」
「私は真行寺霧香(しんぎょうじきりか)です」
 落ち着いた感じのお嬢様がペコリと頭を下げた。黒づくめの服を着て、態度も礼儀正しいが、どことなく冷たさを感じさせる。
「ウチは一条菖蒲(いちじょうあやめ)。霧香お姉さまの下僕ですー。お姉さまが死ねといえば死ぬし、脱げというなら脱ぎまーす」
 いかにもお気楽極楽な首輪少女が霧香に頬をすり寄せる。霧香はそれを無視したが、菖蒲自身はそれでも幸せなようだった。
 奇怪な物を見たというように山本老人の眉が動く。昭和一桁の彼には理解の出来ない光景だったのだろう。
「あたしは御子柴優美香(みこしばゆみか)。強い敵がいると聞いて飛んで来たんだけどな」
 こちらは巫女さん姿の女性である。だが、決して清楚というわけではなく、口調も男っぽくどちらかというと姉御肌の女性だった。足にはスニーカー、拳にはバンテージ。顔には小さな生傷がいくつもある。
「チェイ・パオよ、中国出身の退魔師アル。お金が欲しいアル」
 最後にパオが口を開いた。まだ歯茎に紅ショウガがついている。
「強い敵もいるし、報酬も十分に用意しました。ただし、死ぬほど危険なお仕事です。詳しい話の前に璧琉さん、この娘たちにお茶とお菓子をお願いします」
「かしこまりました」
 メイドが退出する。あらかじめ準備してあったらしく、さほど待つこともなく全員の前に紅茶とケーキが配られた。お茶もケーキも金のかかった一流のものだった。
「そろそろ、お話を聞いて貰いたいのですが、その前にコレを見てください」
 メイドの璧琉さんがビデオを操作した。部屋の一角にあるテレビが息を吹き返す。
「この屋敷の地下には先祖代々から伝わる古い迷宮があります。私自身は退魔師ではないのですが、ご先祖は東の退魔師一族を束ねる矢立家の右腕ともいわれ、かなり優秀な退魔師として知られていました。この迷宮は矢立家から託された秘宝を封印するために建設されたものだと聞いておりますが先日、矢立家から秘宝を返還して欲しいとの依頼が来ました」
「へえ、朧花の命令かい?」
 東の退魔師一族の一統である御子柴が聞いた。たしかに彼女も、赤坂の一角にあるという迷宮やそこに奉られた秘宝のことは子供の頃に聞いている。だが、秘宝はあまりにも強力なため、それが本当に必要になるときまで封印されることになったとも聞いていた。
「いえ、退魔特捜の隊長さんからです。ここでは詳しいことは述べられませんが、近日中にも彼女がその秘宝を必要とするだろうといっておられました」
「よくわかんないけど、お金が貰えるならなんでもいいアル」
「あたしおねーさまと一緒なら何でもいい」
「そうですね。では、説明をしましょう。このビデオは先日、水瀬という退魔師の方に秘宝発見をお願いしたときの映像です」
 映像がセーラー服を着た少女を映す。迷宮の入口でカメラに向かってガッツポーズをとっている。
「思い出した。水瀬っていえば霊波刀を使う実力派じゃないか」
 御子柴が密かにいつか手合わせをしたいと思っている人物でる。かなり腕は立つと聞いている。
「ええ、そのとおりです。しかし、彼女は失敗しました」
 ビデオには迷宮に潜った彼女を出迎える小鬼の大群が映っていた。水瀬も霊波刀でよく戦うが所詮は多勢に無勢。捕らえられ、拘束されてしまう。
 仲間を霊波刀で大量に屠られた小鬼たちは激怒していた。水瀬の服を切り裂き、卑わいな言葉を浴びせかけ打擲を繰り返し、無数の男根で陵辱した。ビデオはそこで止まる。
「彼女がその後どうなったのかは誰にもわかりません。ただ、諸君にはこの仕事が危険な物であるということはおわかりいただけたと思います」
「おねーさま、どうしますぅ?」
 霧香はちょっと考え、菖蒲の頭を撫でてやるとコックリとうなずいた。
「わーい、じゃあウチ、頑張るです」
「あたしはお金が必要だから当然やるアルよ」
「水瀬を倒すぐらいの手強い敵がわんさといるんだろ、やるよあたしも」
 全員が参加を申し出た。老人はちょっとためらい、そして深くうなずく。
「では、迷宮に関してわかっていることを説明しよう」
 結論からいえばわかっていることはごく基本的な事柄だけだった。
 迷宮は地下何階にもわたって建設されており、そのそれぞれには宝とそれを守護するガーディアンや罠が存在するということ。ガーディアンはいずれも式神のようなもので、倒さなければ執拗に追ってくることなどだった。
 ほどなくして準備を終えた退魔師四人組が迷宮の中に消えていく。
「そういえば、さっきのビデオは誰が撮ったのかな?」
 長い長い階段を下りながら、御子柴の放った疑問に全員が首を傾げる。
 たしか老人は水瀬が一人で入っていったといった。だが、カメラの視線は完全に第三者のものである。それにカメラの持ち主は少しも戦闘に参加しておらず、まるで傍観者のように事態を見つめていた。
「結局、この迷宮と同じく謎アルな」
 階段を下りきると扉があった。迷宮地下一階の扉だ。
「さぁーて、いよいよね」


地下一階;有刺鉄線デスマッチ



 扉を開けた。
 迷宮地下一階は巨大なホールになっていた。
「なんだ、何もないじゃないアルか。がっかりしたアルな」
「パオさん、あまり舐めてかかったらアカンですよ。ねー、おねーさま」
 霧香が菖蒲にしか聞き取れないくらいの小さな声でなにかボソボソと呟く。
「キャハハッ。そーよねー、さすがおねーさま!」
 ラブラブな二人を見て、さすがの御子柴とパオも呆れ顔だ。その隙を狙ったのだろうか、天井から大量の護符が落ちてくる。それは地面に到達するとムクムクと大きくなり、無数の小鬼の姿になった。
「出たなっ!」
 水瀬が敗れた敵である。一つ一つは大したことはないが、数が並ではない。退魔師達は円陣を組んで相互にカバーしあいながら迎撃する。
 御子柴が念を込めた拳で殴り、菖蒲がモーゼルキャリバーを連射。霧香とパオは呪符で防御を固める。
 だが、彼女たちは単独で戦うことに慣れすぎていた。徐々に陣形は崩れ、闘いは乱戦模様になっていく。
 気がつくとパオは仲間からかなり離れたところで戦っていた。すでに呪符は底をつき、トンファーだけが頼りだった。
 タンッタンッタンッ!
 まるで京劇のようにトンファーを振るいながらあたりを縦横無尽に飛び回る。変幻自在な闘いぶりだが、皮肉なことに飛び回れば飛び回るほど皆から孤立してしまった。
 気がつくとパオは壁際に追いつめられていた。こうなったら壁を背にして戦うほかあるまいと腹をくくったその時だった。
 今まで壁だと思っていた物が脈動した。壁土がぼろぼろと崩れ落ち、伸縮する触手がパオの右手をからめ取る。
「タスケッ……!! ムググッ」
 悲鳴を上げようとした口に触手が無理矢理侵入してくる。残った左手のトンファーで壁を叩くが、まるっきり効果がない。逆に両手両足に触手がからみついてきた。
 触手は酸性の液体を分泌する。チャイナドレスが溶け、ぷりぷりした胸に触手が絡みつく。
 ぬめっとした液体が身体を汚し、そのあまりの気持ち悪さにパオは涙を流した。歯を食いしばり、なんとか逃げようとむちゃくちゃに暴れるが、効果はない。
 触手がクマさんパンツを溶かした。大小の触手が肉襞を強引に掻き分けて侵入してくる。アヌスも犯された。身体の奥へ奥へと侵入してくる触手は脈動し、のたうっている。
 不意に触手が赤黒くなり、膨張した。表面に無数の鋭い突起が生まれ、まるで有刺鉄線のようなその棘がパオの玉の肌に突き刺さっていく。血が触手の体液と混じって異様な匂いを放つ。
 だが、何よりきついのは口、膣、アヌスの中に潜入した触手の棘が柔らかな粘膜を突き破ったときだった。名状しがたい痛みが全身を貫き、身体が際限なく痙攣した。しかも伸縮運動そのものは少しも止まらないのだ。

illast

 汚濁した液体を何度も浴びせかけられ、快楽を伴わない責め苦にパオはとうとう失神した。
「おねーさま! パオさんが!」
 最初に気づいたのは菖蒲だった。霧香はうなずいただけだったが、御子柴が素早く反応した。
「チッ! 世話の焼ける中国人だぜ」
 小鬼どもを蹴散らし、御子柴が走る。
「グギャアッ!」
「ウギィッ!」
 念のこもった拳で叩かれた小鬼どもは悲鳴を残して消滅し、破れた護符になる。さすがに形勢不利を悟ったのか、小鬼共は一致団結して御子柴の前に壁を作る。こうなると手強い。
「チイッ!」
 ためらっている間にも気を失ったパオは陵辱され続けている。股間に侵入した触手から大量の薄汚い粘液が腹の中に注入され、膨れ上がっていた。
「クソッ! 南無三ッ!」
 ええい、ままよと覚悟を決めた御子柴が空中にジャンプする。小鬼共の迎撃を空中で一回転してかわし、そのままかかと落としを喰らわした。
「タアリャアッ! トリャッ! ホウッ!」
 大技の連発で大量の小鬼が紙切れになっていく。さながら競馬場のハズレ馬券の雨にも見えた。御子柴はなんとか小鬼どもの包囲を突破すると、壁に念を込めたローリングソバットを決行する。
 ズバァァァン!
 退魔の念が電撃のように壁伝いに走り、ざわめく触手が灰になる。
 パオはしばらくして目を覚ました。その頃になると小鬼どもの始末も完全に終わっており、パオは霧香が処方した薬を飲ませられる。
「ありがとうアル」
 いつもは陰気な霧香だが、この時ばかりは病人を慰めようという気配りか、ニッコリ微笑んでみせる。
「おねーさま、お宝がありましたですよー!」
 菖蒲が嬉しそうに走ってくる。
「ほら!」
 いかにもゲームのなかにでてきそうな木製の宝箱だった。鍵はかかっていない。開けると、どこかで見たようなアイテムが入っていた。
「これってレオタードじゃん?」
「うー、説明書にレオタード+1って書いてあるよー」
 霧香がポンと手を叩く。そしておもむろにパオの溶けたチャイナドレスを脱がせ、レオタードに着せ替えた。
「さっすが、おねーさま! あったまいいですー♪」
 一方のパオは赤面する。少し小さめのサイズのレオタードがピチピチに身体を押さえつけ、女体の複雑なラインを浮き彫りにしているからだった。
 胸のラインぐらいならともかく、乳首や恥骨、それに割れ目のラインまでクッキリと見えてしまうのはどうにも扇情的というしかない。


地下二階;六〇分三本勝負



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
 下り階段をフルスピードで駆け下りていく菖蒲。
「そんなに闇雲に走ると罠にはまっちゃうアルよー。もっとゆっくりみんなと行こうアルよー」
 ピチピチのレオタードで歩きにくそうなパオが後ろから忠告した。
「大丈夫ー、ふつーは入口に罠なんか仕掛けないからー」
 ダダダダダダダダダダッ……トンッ!
「ていっ! ライダーァァキィィック!」
 菖蒲が地下二階の扉をライダーキックで蹴り破った。
 グワァラガラガラ……
「大丈夫アルかー?」
「へっへーん! 楽勝ー。えっとねー、うんとねー、この部屋ねー、誰もいないみたいだよー」
 大きな声で報告する菖蒲の足下がいきなりパカッと割れた。
「おおおおおおおおおおおお、訂正〜、落とし穴ありありあり〜っ!」
 ヒュルルルルルルルルルル……ポチャン。
 遅れて階段を下りてきた三人は、底知れない深さの落とし穴を覗く。
「いわんこっちゃない」
「霧香さん、菖蒲ちゃんどうするアルか?」
「……」
 ふと思い出したかのように、霧香がポケットから小型コントローラーを取り出した。
 菖蒲の首輪にはICチップが埋め込まれており、電気ショックや記憶の制御をこのコントローラーから行うことが出来る。
 霧香は嬉しそうに電気ショックのボタンを押した。
「ウギャギャギャギャーッ!」
 どこからか菖蒲の悲鳴が聞こえてくる。まだ死んではいないようだ。
「極悪人」
「東洋鬼アル」
 そんな批判の声に霧香は傷ついたフリをしてみせる。涙がポロポロとこぼれた。
「ワニの空涙アル」
「だいたい、なんでお前がそんな洗脳装置を持って……」
 いいかけた御子柴の足下が唐突に揺れだした。
 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ
 床が割れ、地下二階の何もない空間に巨大なセットが持ち上がってくる。
「アァーレキュイジーヌ!」
 クラッシックなBGMとともにせり上がってきた台の上で長髪の小鬼がいやにもったいぶった声を出す。
「わぁたしの記憶が確かならば、この部屋を通り抜け下の階に行くには、こぉの陵辱スタジアムの用意した陵辱師を破らないとイケナーイ」
 どこからかナレーションが入る。
「陵辱スタジアムだって……?」
 ズズズズズッと霧香、御子柴、パオの足下がせり上がる。
「ハレンチの鉄人、真行寺霧香!」
「和姦の鉄人、御子柴優美香!」
「中華の鉄マン、チェイ・パオ!」
「そしていまこそ、よぉみがえれぇ! 陵辱シェフ!」
 三人の足下からスモークがモクモクと沸き上がる。
 クラッシックのBGMがひときわ大きく鳴り響き、小鬼が桃尻をガブリとかじった。
 BGMがおさまり、スポットライトがスタジアムの一角を照らす。
「挑戦者、もっとも淫らな迷宮の主任シェフにして愛液鑑定家シルスキー・山岡の入場です!」
 陵辱スタジアムを埋め尽くす観客の万雷の拍手。柳刃包丁を手にした小鬼があらわれる。
「それではさっそくですが、今宵の対戦者を選ばねばなりません。シルスキー・山岡?」
「ハレンチの鉄人!」
「さぁ、ハレンチの鉄人・真行寺霧香が指名されましたぁ! 陵辱スタジアムの長い歴史に、また新たな一ページが刻まれようとしています!」
「シルスキー・山岡はロシア風輪姦術に長けていますよ。ハレンチとはいい勝負ですね」
「なお、今夜のゲストは毎度おなじみツツジ陵辱学校のツツジさんと御子柴さん、パオさん、そして実況のわたしで陵辱コロシアムからお送りいたしております」
「あう、なんで私ココにいるアルか?」
「う、いつのまに!」
 いつのまにか実況席に座らされている御子柴とパオ。
「さあ、待ちに待った対決の瞬間です! ハレンチの勇者か、はたまた我らが英雄シルスキー・山岡か!」
「なあ中華娘、変な雲行きだな」
「そうアルね。こんなヘンテコな対決、聞いたことないアル」
「霧香、勝てるかな?」
「勝てないと困るアルね。負けたらあの連中、あたしたち殺すつもりアルよ」
 二人がコソコソと話してるうちにも事態は動いている。
「今日、この場に高名な陵辱人二人を迎えられてわたくしも感激しています。かたやハレンチの鉄人、かたや我らが最も淫らな迷宮を代表する料理人。そのどちらの実力も引き出し、なおかつ私の舌を喜ばせる魅惑的な食材はないかと愚考しました……。あれでもない、これでもない。悩みに悩み、選びに選び抜いた今日の食材は、コレです!」
 ゴゴゴゴと床から白磁の皿の載ったテーブルがせり出してくる。皿の上には裸に剥かれた菖蒲と水瀬の姿があった。
「今日のテーマは『じょぉ・し・こぉう・せい』!!」
 実況席の御子柴とパオがずっこけた。
「あ〜っと! これは大変なことになってきました! 女子高生です! 青い果実の女子高生が今日のテーマなのです! 解説のツツジさん、どうですか?」
「いやぁ、素晴らしい食材ですねえ。でも、ちょっと見てくださいよ。テーマは同じ女子高生ですが、水瀬の方はすごい巨乳ですよ」
「なるほどなるほど。たしかに水瀬の方は女子高生とは思えぬほどの巨乳であります」
「これは食のバリエーションとしては菖蒲よりも水瀬を取った方が有利になりますね」
「ああーっと、そういっている間にもシルスキー・山岡が水瀬をゲットしました。霧香選手は菖蒲です。ハレンチの鉄人、少し出遅れたかー?!」
「霧香、ボサッとしてんじゃねえぞ!」
「あうあう、こっち見てブイサインなんかしなくていいアルー!」
 いつもどおり、ちょっと変な霧香。
「あっ、シルスキー選手の方を見てください。何か動きがありますよ」
 いましめを解かれた水瀬が霊刀を振り回して暴れている。
「いや、なんともイキのいい食材であります。水瀬は前回の迷宮探索で捕虜になって以来、ここの地下牢に繋がれていましたから、かなり鬱憤がたまっているのでしょう」
「そーゆー問題アルか?」
 うなりをたてて振り回される霊刀。シルスキーは軽くスエーバックでかわすと、音もなく水瀬に駆け寄り、首筋に柳刃包丁の柄を当てた。たったそれだけのことで水瀬は糸の切れた人形のように昏倒する。
「あの料理人、やるアルな」
「ああ、あれでも水瀬は実力派だぜ」
 シルスキーは助手を呼び、まな板の上に全裸の水瀬を横たえる。そしておもむろに硯を取り出した。
「ああーっと! シルスキー十八番のお品書きだーっ!」
 シルスキーが水瀬の白い肌に墨痕凛々とお品書きをしたためていく。
「その間に霧香選手の方にも動きがあったようです」
「おねーさまー、ウチ、おねーさまがお迎えに来てくれてちょー嬉しいですー」
 霧香は黙ってお皿の上にうつぶせに眠る菖蒲の身体を揉みほぐしている。
「霧香選手はマッサージをしているようですが、一体何をしてるのでしょう?」
「あれはオリーブオイルを塗ってるんじゃありませんか?」
「ツツジ先生はそういっていますが、レポーターの田中さんに聞いてみましょう。田中さーん?」
「放送席、放送席。こちら田中です。いま霧香選手に聞いてみたんですが、どうやらオリーブオイルで間違いないようです」
「やっぱりね。オリーブオイルで食材の臭みをなくしてるんですよ。女子高生はいまいち体臭がキツイですからね」
「なるほどなるほど、さすがハレンチの勇者といったところでしょうか」
「おねーさまは優しいからウチ、だーい好きー」
「食べられちゃうとも知らずに……なんか哀れアルね」
「まだ子供なのにな……」
 そっとハンカチで目頭を拭く御子柴。
「おや? ハレンチの鉄人、今度は菖蒲にビールを飲ませてますよ?」
「ウグッウグッウグッ! ぷはぁーっ! おねーさまもう飲めないっすー」
 菖蒲の足下には五〇〇oリットルのビール缶が何本も転がってる。
「え? まだまだ飲め? おねーさまがそういうなら……グビッグビッグビッ! げっぷ」
「あれは、ああやって下味を整えてるんですね。ビールはお肉を柔らかくする効果がありますから」
「ははあ、なるほど。ハレンチの鉄人も準備は万端のようであります。さて、おや、今度は菖蒲をロープで縛り付けて、頭を下に空中にぶら下げましたよ?」
「おね〜さま〜、逆さまにしたら酔いが回ります〜」
 霧香はキッパリと無視して、宙に逆さに吊られた菖蒲の股を開かせ、その姿のまま荒縄で固定した。
 陵辱スタジアムの観衆が見守る中、菖蒲のアソコはパックリと開き、そこにスポットライトが当たっている。
「いや〜ん、おねーさまー、みんな見てる〜」
 霧香は外科医のような真剣な顔つきでオリーブオイルを手に取った。そして菖蒲のあそこを広げた。
「アンッ! おねーさまウ、ウチ、そんなことされたら……」
 霧香の指がクリトリスをはじいた。
「あうっん」
 アヌスにもオリーブオイルのついた指が侵入してくる。いまや菖蒲の体でオリーブオイルのかかっていない場所はどこにもないといってもいい。

illast

「お、おねーさま、それっ!」
 陶然としていた菖蒲が霧香が持ち出したものを見て驚いた。
「ああーっと、これは驚きです! なんと霧香が浣腸器を取り出しました。浣腸の中身はミートスパゲティです!」
 ズブずぶズブずぶズブッ……
 ミートスパゲティが菖蒲の直腸の中にどんどん、どんどん、どんどん押し込まれてくる。
「あうっ、あうっ、ああああうっ! おねーさま痛いィィ!」
 それでも容赦なく浣腸は続く。四人前のスパゲティを押し込むと、ようやく霧香は浣腸器を捨てた。
 ホッと安堵の息をつく菖蒲。だが、常に尻に力を入れていないとスパゲティが漏れてきそうだ。そうやって、猛烈な便意を押さえていると、苦痛がなぜか快感にかわってくる。
「あああ、おねーさまはこの快感を味わわせるためにわざとこんな非道いことを……」
「……菖蒲ってバカあるね」
「うん……」
 野菜のコーナーを物色していた霧香が大きなセロリを抱えて帰ってくる。
「おねーさま、ソレ……?」
「はい、アーンして」
 釣られて口を開ける菖蒲。セロリが口の中に押し込まれた。
「イヤーッ! セロリは嫌いなのー、匂いがダメなのーっ! おねーさまのバカバカバカバカバカバカバカバカッ!」
 バカといわれてちょっとムッとする霧香。例のコントローラーを出して記憶制御のボタンを押す。
 ビビビビビッ!
「菖蒲ちゃんはセロリ大好きよねー?」
「大好きですー」
「セロリ食べたいよねー?」
「食べたいですー」
 記憶を制御された菖蒲は嬉々としてセロリを口にくわえる。
「霧香選手、妖魔顔負けの鬼畜ぶりを発揮しています! あっと、シルスキー選手の方で何か大きな動きが起こっています!」
 シルスキーの手が神速のスピードで動き、一階の壁に生えていた触手の刺身をつくっている。
「触手草ですね。コリコリしていて美味しいんですよ、コレ。酢漬けにするのかな?」
「ここで蒸し器に入れられていた水瀬が出てきました。シルスキー、水瀬の身体からエキスをとっていた模様です。おおっと、ここでまたシルスキー選手が動いた。サッパリした水瀬をキャビアが大盛りになっている皿に盛りつけています!」
「豪快ですねえ。これにさっきの触手の酢の物をあえるんですね? いや、ちょっと食べてみたいかななんて思っちゃいますね」
「一〇分前……」
「さあ、一〇分前のアナウンスです! ここで霧香選手の方もラストスパート! 手に謎の食材を持っていますよ?」
「いや、ボクもアレは見たことないな。わさびの根っこに似てるけど、もっとずっと大きいものですよ?」
「五分前……」
 霧香が菖蒲のアソコを広げた。
 謎の植物の根っこは拳よりも巨大で、なかなかなかにおさまらない。
「むぐふふふふぅ!」
 セロリを口にくわえたまま、菖蒲が激しく悶える。
「一分前……五.四.三.二.一」
 最後の三秒で、なんとか植物の根をおさめることができた。
「そこまで!」
「シルスキー選手、自信のほどはどうですか?」
「やるだけやったよ。自信はあるよ。あとは天知る地知る神ぞ知るってヤツダネ」
「霧香選手、シルスキー選手は今日の料理に自信があるそうですが?」
「…………ニヤリ」
「自信たっぷりのシルスキー選手、それに不敵な霧香選手でした!」
「さあ、いよいよ試食であります!」
 試食会。テーブルの上に乗った水瀬を囲む審査員たち。
「まずはシルスキー選手の試食からであります。審査員は羞恥院議員・栗本真二郎、陵辱評論家・岸あちゃこ、拳で語る退魔師・御子柴優美香、中華な退魔師チェイ・パオの四人であります」
 シルスキーが椀物を配った。
「前菜は女子高生を蒸し器にかけ、その汗を利用して作ったスープです。味付けはトマトと軽く塩をふり、冷やしてカルパッチョ風味に仕上げました」
「なんかいきなりゲロゲロあるね」
「美味しそうな匂いじゃないな」
 たしかに汗くさい。
「まあ、そういわずに一口だけでも食べてみてくださいよ」
 ズズッ……
「ふぐっ!」
「ああっ!」
 口の中に広がる得も言われぬ芳醇な味! これが女子高生の汗なのかぁぁぁっ!
「ふっふっふっ……声も出ませんか。次の料理はコレです」
 キャビアまみれになった水瀬が出てくる。
「水瀬の乳首にキャビアを載せ、ペロリと食べてみてください」
「そ、そんなレズみたいアル」
 いやがるパオと御子柴。だが、さっきのスープの影響か、えらく喉が渇く。他の審査員が次々に乳首キャビアを食べるのを見ていると生唾が止まらなくなる。
「こ、公正な審査のためアル。水瀬ごめんアル!」
「あ、おい! 裏切り者!」
 パオは水瀬の大きな胸にたっぷりとキャビアをのせ、ペロリと食べた。
「ふわああああああああああああああっ!」
 しょっぱいはずのキャビアがかろやかに甘い! そして味が深い!
「こ、この味はぁぁぁっ、食べたことないアルぞぉぉぉッ!!」
「ちょっと喰わせて見ろ!」
 御子柴も一口食べた。電撃が背筋を走る。
「なにを隠し味に使ってるアルか?」
「ふっふっふっ、水瀬の母乳を使ったんですよ!」
「母乳って、まだ子供も産んでないアルのに!」
「母乳のでるツボがあるんですよ。妖魔だけが知ってるツボですがね」
「うぉぉぉぉっ! うまいぞぉー!」
 御子柴は我を忘れている。水瀬の胸を搾乳してはキャビアをのせ乳と卵のハーモニーにどっぷりと浸かっている。水瀬の乳がでかいという利点を生かした見事な料理だ。
「さあ、最後になりましたがメインデッシュはシェフ自らがとりわけます!」
 シルスキーが水瀬の膝を大きく開いた。水瀬本人は薬で身体がしびれて動けないが、意識だけはあるようだ。羞恥に顔を歪ませている。
 シルスキーは男根の形をしたソーセージを人数分取り出すと、水瀬の剥き出しのクリトリスや膣の内側にマスタードをたっぷりと塗った。敏感な肌にヒリヒリと刺すような刺激。だが、身体はしびれて動かない。気が狂いそうになる瞬間。
 そしてソーセージを挿入。こすりつけるように出し入れをする。愛液とマスタードがほどよく混じり合い、糸を引く。
「こ、この絶妙の味わいはぁぁぁぁっ!」
「女子高生の甘みとマスタードの苦さがマッチしてグーざます!」
 料理評論家のベタ誉めを聞いてパオがフラフラと手を伸ばす。
「なんで?! なんでこんなに美味しいアルの?」
「やめろよパオ! 水瀬は……水瀬は仲間じゃ……ああっ、美味しい! ほっぺがとろけるぅ!」
 結局、御子柴も術中にはまってしまう。
 シルスキーは奥に引っ込み、代わって霧香が出てくる。だが、あんな美味しい物を食べさせられた後では不利だ。
「さあ、ハレンチの鉄人・霧香選手です! 霧香選手は菖蒲を食材に用いましたが、料理はシルスキー選手と同じく三品です!」
「おねーさまーぁ……」
 心細そうに菖蒲がいった。彼女は荒縄で逆さ吊りになり、がんじがらめに固定されているだけで意識はちゃんとある。
「前菜はセロリですが、その前に調味料を掛ける必要があります」
 菖蒲を無視し、淡々と説明する霧香。彼女は助手の小鬼たちに合図をした。
「お、おねーさまぁ?」
 小鬼たちが競ってセロリをくわえた菖蒲の顔に白濁した液体をかける。荒縄で縛られているため、逃げることもできない。
「うえ〜ん、ベトベトだよ〜! もう、おねーさまなんて嫌い!」
 ビビビビビビビビッ!
「菖蒲ちゃんは白くてベトベトしたの好きよね?」
「はい、おねーさま!」
 首輪で記憶を制御される菖蒲。
「さあ、さめないうちに召し上がれ」
 と白い液体で味漬けされたセロリを配る。
「おおっ! 濃厚な液体の味をカバーするセロリの清々しさ! これは微妙な味わいだ!」
「取り合わせの妙もイカシテルざます!」
「……私、いらないアル」
 パオは一口かじって捨てた。御子柴は二口だったが、やっぱり捨てた。この勝負に勝敗がかかっているとはいっても、ダメな物はダメなのだ。
「二皿目はスパゲッティです。シェフみずからが取り分けます!」
 霧香が菖蒲の下に大きな皿を置く。
「おねーさまぁ?」
「菖蒲ちゃん、お腹が苦しかったでしょう? もう、全部出しちゃってもいいわよ」
「いやですー。みんな見てるのにそんなのできないですー」
 霧香は無視して菖蒲の膨れたお腹をポンポンと叩く。
「無理に我慢すると体に良くないのよ?」
「でも、でも、恥ずかしいですー」
「そう……」
 霧香は記憶制御スイッチを押す。
「おねーさま、ウチ、おなかのもの全部出しちゃってもいいですか? ウチ、みんなに見られながらするのが大好きなんですー」
「しょうがない娘ねー、菖蒲ちゃんは。恥ずかしくないのかしら?」
「ウチはとっても恥ずかしいのが好きなんですぅー。あっあっあっ、出るぅー」
 ミートソーススパゲティがゾロリぞろりとアヌスから出てきた。
「うぇっぷ。あんなの見たらとても食べられないアル」
 だが、妖魔側の審査員は全員、霧香の一挙手一投足に釘付けになっている。異臭を放つスパゲティの試食の時も随喜の涙を浮かべながら食べていた。
 一方、当然というかなんというか、御子柴とパオは涙を浮かべて試食を辞退した。
「最後の品にも、ちょっと工夫があるんです」
「おおっと! ここで菖蒲のあそこに刺さった謎の植物の根っこが何かわかるわけです!」
「菖蒲ちゃん、シーしてちょうだい。シー」
「シーってなんですか?」
「お小水よ。さっきビールをいっぱい飲んだからたまってるはずよね?」
「そ、そんな、おねーさま! ひど……」
 ビビビビビビビビビッ!
 菖蒲の記憶が制御される。
「はい、菖蒲はみんなの見てる前でシーするのが大好きです。ヘンタイな菖蒲を見てください」
 菖蒲の尿道から黄色い水が噴水のように放出される。
 その道が好きな者にはたまらない光景だが、御子柴とパオにはそんな趣味はない。
「むちゃくちゃだぜ」
「悪趣味アル」
 だが、次の瞬間、さすがの彼女たちも我が目を疑った。
 菖蒲のアソコに突っ込まれていた特大の謎の植物の根っこがピクリと反応したのだ。
「な……?」
 そいつはほとばしる黄色い液体を吸収し、ぐんぐん太く大きく根を張っていく。
「ひゃ、ひゃ、ひゃああああっ! 熱い! 熱いよぉっ! おねーさま!」
「もうちょっと我慢してね」
「ア、アレッ! アレは幻の触手茸ですよ!」
 陵辱専門学校のツツジが指摘した。
「触手茸ですか?」
「ええ、千年に一度生えるか生えないかの大変珍しい茸です。いや、私もはじめて見ましたよ」
「ツツジ先生ですら見たことのない幻の茸だそうです! いや、これは期待が持てます」
「ウチのおしっこ吸ってどんどん、どんどん大きくなるよ、お姉さま!」
「そうねー」
「いやぁっ! 根っこが奥に入ってくるのう!」
「そうねー」
「おねーさま! 助けてぇっ!」
「そうねー」
「ああああっん! おねーさまのバカ……」
 ビビビビビビッ!
「おねーさま大好き。ウチもっと頑張って茸おおきくしますぅー」
 やがて茸の先端がポンと割れ、中から大粒の種が四つ出てきた。
「これは! 珍品中の珍品! 一万年に一度の触手茸の種子ですよ! しかし、人間のくせに霧香選手はどうしてこんな食材の調理法を知っていたのでしょうか? 謎です!」
「さあ、どうぞ。何もかけずに召し上がれ」
 種子をすすめられるがパオと御子柴は断った。あまりにも得体の知れない食べ物だったからだ。だが、他の審査員は争うように種子をむさぼった。
「ほむほむほむ、この味はまったりとしてしつこくなく、それでいて後味を引いてサッパリ系の……」
「ハグハグハグ、天井の美味! 和洋中華を越える究極の味! 東西南北中央界すべての至高! ああ、ここに陵辱道極まれりざます!」
「そ、その幻の食材、俺にも味見させてくれ! 頼む」
 霧香は気前よくシルスキーに茸をわけた。
「ぐむううぅぅ。この幽玄なる味の深み、奇抜なアイデア、観客を引きつけるパフォーマンス、食べた後に胃の中で膨れる満腹感。すべてにおいて俺の敗北だ!」
「ああーっと! シルスキー選手、自らの敗北を宣言しましたーッ! よって今回は霧香選手の勝ちということになります! そして今、両者ガッチリと握手を交わして互いの健闘を讃え合っています! 美しい! まことに美しい陵辱人どうしの友情であります!」
 パチパチパチ……
 観客席からも惜しみない拍手が送られる。
「う……はぐあっ?!」
 突如、二人の審査員の身体が膨張し、破裂した。ほどなくシルスキーも後を追って、内蔵をまき散らして散華する。体の中に入った触手茸の種子が一斉に繁殖をはじめたのだった。
「フッ、フフフフフッ! これぞハレンチ流七分殺し! あたしはどんな勝負でも負けないわ! あたしの料理は最強なのよ!」
「さ、最強ってなにアルか……」
「最狂の間違いじゃねーの?」
「おねーさま、凄いですー。ウチも体を張ったかいがありましたー。でも、この触手茸、ぜんぜんぬけないですー」
「あ、いいわすれてたけど、それ、いちどくっついたら外れないから」
「おねーさ……」
 ビビビビビッ!
「おねーさま、おねーさまは天使ですー」


地下三階;電流爆破デスマッチ



「おねーさまー、待ってくださいですー」
 菖蒲が元気に階段を駆け下りてくる。
「ちょっと! ゆっくり走らないとまた罠にはまるアルよ!」
 菖蒲はかまわず走り込んでくる。ひんぱんに記憶を制御されるため、制御されなかった記憶まで曖昧になっているようだ。
「しかし、なんちゅーカッコかね」
 御子柴が嘆く。
 地下二階の陵辱コロシアムを撃破した一同は宝箱を発見した。中には料理用の白いヒラヒラのついたエプロンが入っていた。
「説明書も入ってるアル。『伝説の裸エプロン』効用;旦那様が元気になりますアルって」
 結局、裸で着るもののなかった菖蒲が裸エプロンを着ることになる。
「おねーさま、見て見て見て!」
 コケティッシュに腰を振ってみせる菖蒲。触手のおかげで股間がモッコリとなっている。
「かわいそうに」
「自分がどんなに惨めかわかってないアルね」
 同情の視線をなんと勘違いしたのか、菖蒲は二人にも手を振った。
「このままじゃいけないアルね」
「そうだね」
 二人の密談が聞こえているのかいないのか霧香は黙っている。
 そして地下三階の扉が開いた。
 ザワザワザワ……
 大量のざわめきが、
 ドヨドヨドヨ……
 大量のどよめきに変わった。
「な、なにアルか、この小鬼の数は?」
 部屋を埋め尽くす護符の小鬼たち。彼らがパオたちに気がつき、歓声を送っている。そのどよめきなのだ。
「どうやらリングみたいね」
 御子柴は部屋の中央を見ていた。そこにはプロレスのリングがある。
「あそこで勝てば、下の階にいける仕組みね」
「毎度毎度、アホなこと考えるアルよ」
 だが、リングの上には誰もいない。挑戦者がリングにあがってからディフェンディングチャンピオンが登場する仕掛けのようだ。
「武者震いがする。ここはあたしに任せて!」
 御子柴が花道を突進する。
「あーあ、御子柴は格闘になると見境ないアルなあ。野蛮人アルよ」
「ねえ、おねーさま! リングサイドに行きましょー。ウチ、セコンドって一回やってみたかったんですー」
「うっしゃああ!」
 御子柴の袖を肩までめくった巫女ルックというのはかなり異様だが、それなりに動きやすそなスタイルだった。ちなみに両拳にはバンデージが、足にはスニーカーを履いている。
 リングの中央で御子柴がシャドーで身体をほぐしていると観客のボルテージが一挙にあがった。
 ウオオオオオオ……
 小鬼たちの歓呼に包まれて巨体が花道に姿をあらわす。
 スピニングトゥーホールドの軽快なテーマが流れ、柔道着を着た小鬼、いや巨漢だから大鬼と呼ぶべきだろうか、が片手を高々と突き上げる。
「イチッ!」
 観客も1と合唱し、
「ニッ!」
 2!
「サンッ! ダーーッ!」
 ダーッ! 観客と大鬼が一体になって燃えている。
 そしてそのまま観客の熱狂を従えてリングに入ってきた。大鬼はガウンを脱ぎ捨てた。闘魂伝説とかかれたガウンの内側に隠されていたのは隆々たる筋肉の鎧だ。御子柴はその肉体美に見惚れた。
「ゾクゾクする……」
「どうしたアル? 恐くなったアルか?」
「いや、強い敵がいてくれて嬉しいんだ」
「まったくどうしようもない格闘バカあるね」
 レフェリーがマイクを持ってリング中央に進み出る。
「レディース&ジェントルメン!」
 その一言で騒がしかった会場がピタリと静まる。
「第九七回もっとも淫らな迷宮・地下三階『グスタフの間』、鬼畜勇者王杯争奪戦特設リング。青コーナー挑戦者、拳で語る退魔師・御子柴ゆぅみぃかぁぁー!」
 四方に極真式の礼をする御子柴。ブーイングが巻き起こる。
「赤コーナー、ディフェンディングチャンピオン、吠える闘魂・七色の筋肉・鬼畜勇者王、ケーン・コスギーッ!」
 ブワアッと真紅の紙テープがリングに投げ込まれる。頭が割れるような歓声が続く。
「ルールをご説明します。試合は10ラウンド、勝敗はKOのみ認められ、テンカウントは不採用。ロープには電流が流れており、ロープに逃げようとすると爆発が起こる仕掛けになっております。なお、1ラウンドは五分、休憩も五分とします。10ラウンドで決着がつかない場合は、時間無制限のデスマッチで決着をつけさせていただきます」
「電流爆破ってなんかひどいルールあるな」
「そうかな? あたしには燃えるルールに聞こえるけど」
 レフェリーが両者のボディチェックをする。
 ディフェンディングチャンピオンがレフェリーからマイクを借りる。
「こらぁーっ、退魔師! 調子に乗ってんじゃねえぞぉーっ!」
 マイクアピールが始まる。
「俺達、妖魔がただ退魔されるだけだと思ってるなら大ハズレだぁーっ!」
 観客が沸く。
「俺はなッ! テメエらのその正義の味方面した一方的な態度が気にいらねえんだよ! 人間共は俺らを嫌い、退魔師ばかりをありがたがるがよ、俺らがいなかったら退魔師の活躍もねえんだよ! そこんとこをしっかり身体に記憶してもらいてえんだ!」
 そこでマイクを御子柴に渡す。観客からブーイング。
「お言葉たしかにうけたまわった! たしかに退魔師ばかりがイイモノになってるところもあるかもしれない!」
 意外な言葉に観客のブーイングが消えた。
「しかし、それもこれも言葉でいうことじゃあないと、あたしは思ってる。武闘家なら拳と拳で語り合うだけ。あんたの言葉はあんたが勝ってから聞くわ!」
 チャンピオンは「ほう」という感心した目つき。観客たちもチラホラと拍手を送ってよこした。御子柴はコーナーに戻る。
「ナイス、マイクアピールある。場内の険悪な雰囲気が少しは和らいだアルよ」
「……」
 御子柴の視線はリングの対角線、チャンピオンに注がれていた。パオの言葉など半分も聞いていない。
「チャンピオンなんて気にする必要ないアルよ。どんなに大きくても御子柴さんの念を込めた回し蹴り一発で妖魔なんて破魔できるアルよ」
「セコンドアウト! セコンドアウト!」
 御子柴とチャンピオンがリング中央に進む。
「1R、開始ッ!」
 ファイッというレフェリーのかけ声。御子柴とチャンピオンはチョンと拳を合わせた。その瞬間、御子柴とチャンピオンがお互いに驚いた顔をした。両者とも拳を通じて相手の並々ならない闘気を感じたのだ。
 少し離れて両者は睨みあう。油断できない敵だ。観客にもそれがわかるのか罵声は出ない。
 最初に動いたのはチャンピオンだった。軽いジャブを放ってくる。
 それを前に踏み込んでかわした御子柴は逆に脇腹へのジャブを打った。その切っ先は空を斬るが御子柴にとってそれは計算済みのことだった。踏み込んだまま身体を半回転させ、裏拳につなげる。
 あるいはこの時までチャンピオンは油断していたのかもしれない。不意をついた裏拳はガードをかいくぐり、マトモに脇腹に入った。
 ズシッとした手応え。あばらにヒビくらいは入ったはずである。御子柴の攻撃はそれだけではない。
「消え失せろっ、御子柴流破念法!」
 身体の奥から沸き上がる破邪の念が激流となって流れ出す。
 チャンピオンの身体がグラリと揺れた。勝った!
「フフフフッ、危ねえ危ねえ。かわいい姿にちょっと油断しちまったみてえだな」
「なに?」
 いつもの十倍の念を込めた拳だった。それなのに効いてない。
「打撃は一点に集中してこそ威力がある。念も同じだ。だが、俺様の身体は特殊な油を分泌していてな、これが念を身体中に拡散するのよ。そうなればどんな大きな念もむず痒い程度で終わってしまうのさ」
「御子柴さん!」
 これで事実上、御子柴の勝ちはなくなった。退魔師が武器もなく呪力も通じない相手に素手で勝てるわけがないのだ。
「へ、へへっ、面白い!」
「御子柴……さん?」
「血がゾクゾクするよ! こんな強い敵に出会ったのは初めてだ!」
「あちゃあ、バカある……」
「違うですー。あれは大バカって言うんですよねー、おねーさま?」
 霧香もコックリとうなずいた。
「さあ来な! バケモノ!」
 御子柴とチャンピオンのバトルが再開された。
 チャンピオンの動きはまだ慎重である。すばしっこい御子柴の攻撃を適当に受けつつ、敵の癖を見切ろうとしている。熟練した動きだ。
 カーン!
 第1Rが終了した。
 コーナーに引き上げてきた御子柴の身体を裸エプロンの菖蒲がマッサージし、食い込みレオタードのパオが水を飲ませる。霧香はあっちを見て知らんぷり。
「やめるアルよ。今なら間に合うアルよ」
「大丈夫。勝算ならあるから」
 たしかにあの特異体質のおかげで破邪の念は拡散されてしまう。だが、それでも何度も同じ場所にピンポイントで当て続けたらチャンピオンもたまらないはずだ。それが証拠に、裏拳の入ったところが薄く痣になっている。あれは破念法独特の傷跡である。
「なら止めないアル。がんばるアルよ」
「絶対勝てるですー、ねー、おねーさま?」
 霧香は微妙に口元をゆがめた。
「たぶん無理ね……」
「あーん、おねーさまの意地悪ーぅ」
 セコンドアウト! セコンドアウト!
 第2R、ファイッ!
 このラウンドも軽やかにステップを踏む御子柴。チャンピオンは守りの姿勢で終始した。だが、御子柴も変幻自在の足技でチャンピオンのガードをかいくぐって脇腹に二発の打撃を与えた。
 ゴングが鳴り、コーナーに戻ってきた御子柴は激しく肩で息をついていた。当たり前である。ガードに徹している敵を間断なく攻め立てていたのだ。
「こんなに疲れてて最後まで持つアルか?」
 さきほどの霧香の謎の言葉の意味がやっとわかった。彼女は10Rまで体力が持たないだろうといいたかったのだ。
「わかってる。倒れる前に倒すしかないんだ」
 カーーン!
 ゴングがなり、御子柴とチャンピオンが拳を交わす。
 3R、4R、5R……
 6Rに入りついに御子柴のガードが下がった。そのあいだ体力を温存してきたチャンピオンは脇腹を蹴りに来た御子柴の足をガッチリ捉える。
「くっ!」
 試合始まって以来、守りに回っていたチャンピオンの最初の攻撃らしい攻撃である。御子柴の足を小脇に抱えるとそのまま足を回転軸に一回転する。
「うがぁっ!」
 まったく受け身をとれないまま御子柴は足をひねってしまう。床に倒れたまま立ち上がれない。思わぬ大技に観客も大喜びだ。
 チャンピオンは一気に勝負を決めようとしたのか、ドラゴンスクリューから足四の字に持っていく。ひねった足を徹底的に責める腹づもりである。
 苦痛に必死に耐える御子柴はゴングに救われた。
 足を引きずりつつコーナーに引き返してきた御子柴。チャンピオンの脇腹は彼女のピンポイント攻撃で真っ赤に腫れ上がっていたが、もうそこを攻撃するだけの体力は残っていない。おそらく御子柴は立っているのがやっとだろう。
 パオと菖蒲がひねった足を賢明にマッサージする。
「なあ、御子柴さんもうやめようアル。これ以上戦っても勝ち目はないアルよ」
「……イヤだ」
 御子柴は首を振る。
「まだ勝つつもりでいるアルか」
「ああ。勝機はまだある」
 パオにはそれは単に意地を張っているだけとしか見えなかった。チラリとタオルを見る。
「パオ、試合中にタオルを放り込んだらお前を殺す」
 ギクッとするパオ。しかし、御子柴はチャンピオンを睨み付けているだけで、パオには少しも注意を払っていなかった。なぜわかったのだろう?
「とにかく勝つ。どんなことがあってもタオルは投げるな」
「わ、わかったアル……」
 セコンドアウト! セコンドアウト!
 第7Rが始まった。このラウンドが正念場である。
「カマーン!」
 ラウンド開始早々、御子柴は奇妙なことをした。両腕をダラリと下げ、敵の攻撃を誘ったのだ。
 チャンピオンはその挑戦に真っ向から答えた。御子柴めがけてタックルをかけたのだ。
「かかった!」
 御子柴はヒラリとかわす。チャンピオンの先には電流爆破ロープが待っている。そういう作戦だった。
「うわっ!」
 かわしたつもりだったが、かわしきれなかった。足をひねったためイメージ通り身体が動かない。体当たりされた御子柴は背中からロープに突っ込んだ。
 バババババババッ!
 御子柴の背中が燃えた。電流爆破の威力はすさまじい。たった一撃で彼女の巫女服がボロボロになった。
「おい!」
 疲れと爆発のショックで半失神状態の御子柴の黒髪を掴んで引き起こす。
「こ、この……」
 体力を使い果たした御子柴。ペチペチと念の籠もらない拳がチャンピオンを叩くが効果はない。
「ガハハハハ! 観念しろ!」
 チャンピオンが巫女服を千切っていく。スポーツブラも脱がされ、紅い袴も脱がされた。御子柴は生まれたままの姿を観客の前にさらした。
「御子柴!」
 パオがタオルを投げ込もうとしてやめた。御子柴の目がそれを止めたのだ。まだ彼女は逆転を狙っていた。
「俺の身体から分泌される油にはこういう使い道もある」
 そういってチャンピオンが御子柴の乳首を摘む。乳首はムクムクといやらしい反応を見せた。
「ああっ!」
「どうだ、声も出ないだろう。なにしろ全身の感覚が鋭敏になり、全ての刺激に弱くなっているんだからな」
 テカテカと輝く油を御子柴の身体にぬりたくっていく。
「おお、ここも忘れずにな」
 すでにしっとりと濡れている秘所に指をあてがった。
「おまえ、処女だな?」
「しょ、処女で悪いか?!」
「クッ、ハハハハッ! 悪くはない! 悪くはないとも!」
 チャンピオンの股間がせり上がった。ものすごく大きい。
「なら、最初は俺がいただく」
 いきなりアヌスに侵入してくる。
「イタッ! そ、そこじゃない!」
 御子柴はアソコの処女よりも早くアヌスを奪われてしまったことでパニクる。しかも、チャンピオンの巨根はそれ自体が例の油を分泌しており、下半身が灼熱感に襲われた。
「ああああああっ! や、やめてっ!」
 御子柴がめちゃくちゃにチャンピオンを殴った。だが、相変わらず念の入っていない拳では効果があがらない。
「ホレ、お客さんにお前の処女のアソコを見てもらえ!」
 チャンピオンは尻を犯しながら御子柴を背中から抱え上げた。そして愛液したたるアソコを思いっきり広げて観客に見せる。
「うおおおおおおおっ!」
 観客のボルテージが一気に上がる。
 カーン!
 ゴングが鳴った。第7R終了だ。
「次だ。次は前を犯してやる。覚悟しろ」
 チャンピオンの白い液体にまみれた男根が尻から引き抜かれる。
 御子柴が疲れた足取りでコーナーに戻ってくる。パオがバスタオルを肩に掛けてやる。
「大丈夫アルか? まだ試合を捨てないアルか?」
「やる、やってやる! 途中で逃げ出すのは性に合わないから」
「でも、逆転できるアルか?」
「やってみるさ」
 一方、エプロンサイドの菖蒲と霧香はコソコソと密談していた。菖蒲が嫌がってる。ビビビビッ! 記憶を制御された。嬉しそうに霧香に甘えている。
「みっこしばさーん」
 菖蒲が御子柴にすり寄っていった。
「菖蒲ちゃん、なにしてるアルか?」
 裸エプロンの菖蒲の股間がモッコリ盛り上がっている。
「あのねえ、お姉さまが御子柴さんを犯せって」
「おか、犯せって、なんでアルか……」
 パオが呆然としている間に菖蒲の股間の触手茸が御子柴に伸びてゆく。
「御子柴を勝たせるためよ」
「き、霧香……いったい何を考えてるアルか!」
「処女を敵に奪われるよりは味方に奪われた方がいいでしょ」
「や、やめろ! このヘンタイ!」
「犯すですー」
「ああっ!」
 御子柴のアソコに触手茸の先端が当たった。7Rを闘い終えた彼女に抵抗する気力は残っていなかった。パオと霧香が押し問答をしている間に御子柴の処女は奪われた。
「ああーっ、気持ちいいですー。こ、腰が勝手にカクカクと動くですー!」
 チャンピオンサイドと観客席はこの幕間劇を呆気にとられて見守っている。観客たちも息を呑んで一人の少女が強引に処女を奪われるシーンを見つめていた。
「あっ、あっあっー!」
 触手の先端から白い液体が飛び散り、御子柴を汚す。
「あ〜あ、やっちゃったアルよ。ぜんぜん休息できてない上に運動までさせられちゃって……」
 セコンドアウト! セコンドアウト!
 ゴングが鳴った。第8Rの始まりである。霧香に連れられて菖蒲がリング外に引きずり出される。
 足腰の立たない御子柴はチャンピオンのいいようにされた。自分の手で処女を奪えなかったチャンピオンは腹いせとばかりに何度も何度も御子柴を乱暴に犯す。

illast

 巨根をアソコに突っ込まれながら、乳首を噛まれ、尻を叩かれる。観客に見られながらの暴力的なセックスは御子柴の理性を崩壊させていった。
 9R、10R。御子柴は徹底的に犯されたが、それでも勝敗がつかない。チャンピオンは彼女をいたぶるために意識的にトドメを刺さないのだ。
 10Rが過ぎ、時間無制限のデスマッチになると、御子柴はゴングに救われることもなくただ延々とレイプされ続けた。
 会場のボルテージは上がりっぱなしで、御子柴がチャンピオンに肉棒のおねだりをするようになると一気にクライマックスに達っする。
 御子柴がチャンピオンの上にまたがり、腰を浮かせては沈める。つい先刻まで処女だったとは思えない腰つきで快楽をなまめかしく絞り尽くしていく。
「ううっ!」
 チャンピオンの巨根をずっぽりとおさめた膣から白い液体が漏れた。
 その瞬間、チャンピオンが一瞬だったが隙を見せた。そのことに気が付いたのはこの広い会場で何人いただろう。そして御子柴がこの瞬間を延々と狙っていたことに……。
「ひゅううううううっ!」
 腹から絞り出す声と同時に人差し指と中指がチャンピオンの両目に垂直に突き刺さった。
「喰らえぇぇぇっ! 御子柴流破念法!」
 指先から奔流のような破邪の念がチャンピオンの体内に直接流れ込んでいく。
「ぐぎゃあああああああああああっ!」
 チャンピオンの頭部が消え失せた。御子柴は勝ち名乗りを受けるために立ち上がる。
 しかし、御子柴の顔は曇っていた。強い敵を倒したはずなのに、どこか心の中が曇っている。
「やったー! 御子柴さーん勝ったですー!」
 菖蒲の声。
 胸がうずく。
 これだ。これが原因だったのだ……。


地下四階;ノーロープ時間無制限マッチ



 とうとうここまで来た。
 パオは地下四階の扉を開けながら嘆息する。
 地下一階では彼女が触手に捕まり、地下二階では菖蒲が陵辱コロシアムの犠牲になった。そして地下三階では御子柴がリング上で処女を奪われるものの、なんとか敵を倒した。思えば泥まみれの勝利ばかりだった。
 いや、まだ泥にまみれていない仲間が一人いる。
 霧香だ。
 パオはうさんくさい目で霧香を見る。おとなしそうな顔をしているが、その性根は腐りきっている。いや、腐っているというと若干の語弊がある。公平な目で見れば、霧香の行動はいずれも勝ち抜くために必要な行動だったともいえるからだ。
 地下四階はそれまでの階と比べて、どこか違っていた。
 部屋の中央に巨大なプールがあり、そのそばに塀で囲われた脱衣所らしきものが見える。不思議なことに彼女たちを待ち受ける敵や罠の姿はまったくない。
「これは……」
 御子柴がうめいた。彼女の巫女服は地下三階の激闘で失われていた。代わりに、といってはなんだが、地下三階の宝箱から見つかったアンミラの制服(魅力+2)を着込んでいる。
「もしかすると、何もないと見せかけて、あのプールか脱衣所の中に敵がいるのかもしれないな」
 妥当な推測である。
「あ、菖蒲ちゃん? プールを一緒に調べないか? 一人じゃ調べきれない広さだしさ」
 ぎこちない口調で菖蒲を誘う。
「え〜っ? ん〜っとねー」
 かわいく小首を傾げ、霧香を見上げる。御子柴の胸が切なげにキュッと鳴った。
 地下三階のリングで菖蒲に処女を奪われてからというもの、身体の調子がおかしい。強い敵に勝っても満足感がなく、菖蒲の笑顔ばかりに目が行くようになってしまった。
「おねーさまぁー。御子柴さんと一緒に行ってもいいですかぁー?」
 菖蒲は霧香にゴロゴロと甘える。
 御子柴の中に霧香に対する憎悪がムクムクと膨れ上がっていく。菖蒲が霧香に甘えるのを見ていられない。
 だが、なぜ見ていられないのだろう?
 もしかすると、この憎悪は嫉妬なのかもしれない。そう気がついたとき、御子柴の中で最後の何かが崩れた。
「そう、あたしは菖蒲が欲しい。霧香は邪魔だ」
 心の中で呟く。
「ねー、返事してくださいよぉー」
 菖蒲の頭をよしよしと撫でながら、霧香は考える。
 地下三階のリングで菖蒲に御子柴の処女を奪うように命令した時のことだ。
 あの時、御子柴を犯す菖蒲を見て、霧香の胸がチクリと痛んだのだ。自分以外の人間を菖蒲が喜ばせるのにそんなにも抵抗があるとは思わなかった。
 いまも御子柴が菖蒲を誘っている。
「行きたいなら、行きなさい」
 残ってくれることを期待していった。
「はぁーーい」
 無邪気な子供のように菖蒲はプールへと突進する。
 霧香は記憶制御装置のボタンに手をかけ、やめた。そして、そっとため息をつく。菖蒲は退屈していたのだ。別に霧香をフッたわけではない。
 もうこの機械を使うのはやめよう。殊勝にもそう思う。菖蒲のためにも。
「じゃあ、私はあの脱衣所を調べるアル。霧香さんはここで待機してて欲しいアル」
 霧香は中華娘の言葉にコックリとうなずく。しばらくここで自分の気持ちを整理してみよう。この胸の中の暖かな気持ちを噛みしめてみるのも悪くない。
「うひゃああああああああああっ!」
 ドッポーン!
 菖蒲がプールに飛び込んだ。
「菖蒲ちゃん、危ないよ!」
 御子柴が慌てて菖蒲をプールから引きずり出し、このプールにどんな危険が潜んでいるのかもわからないのにとお説教する。
「えへへへへ、怒られちゃったですー」
 バシャッ!
 彼女たちの目前で透明な、だが巨大な何かが跳ねた。おそらくこの階の守護者だろう。菖蒲があのまま泳いでいたら危なかったところだ。
「わー、御子柴さんありがとさんですー」
「いやぁ」
「ん?」
 菖蒲の股間が勃起した。ムクムクと大きくなっていく。
「触手茸がプールの水を吸って大きくなるですー!」
「ちょ、ちょっと見せてごらん」
 エプロンをめくると巨大なイチモツが天をさして隆々とそびえていた。それを見ているだけで御子柴の股間は濡れてきてしまうのだった。
「熱いッ! 熱いですーッ!」
 衝動に駆られて御子柴はイチモツを口にくわえた。
「あうっ、あうっ、あっ……」
 舐め回してやると菖蒲の痛みもおさまったようだ。もう大丈夫と思って口を離すと、また痛がり出す。
「ダメッ! 御子柴さん、もっと! もっとしてぇ!」
 そういって菖蒲は御子柴のスカートのなかに手を入れた。
「ねえ、この中に入れれば、もっと痛くなくなる気がするのぉ!」
「あ、菖蒲ちゃん……」
 スルスルとパンティを脱がされる。
「ダメだよ、そんな……」
「熱いのぉ! 待てないのぉ!」
「……じゃあ、一つだけ約束してくれる? 約束してくれたら……」
「する! するする! 何でもする!」
 菖蒲は安請け合いをして御子柴を押し倒す。アンミラのスカートをめくって秘密の花園にむしゃぶりつき、触手で犯す。
「アンッアンッアンッ! 気持ちイイのぉーッ!」
 狂ったように犯す菖蒲。押し倒された御子柴は菖蒲の強烈な攻撃を全て受け止める。そして霧香に対する優越感に浸っていた。

 パオは脱衣所に入った。
 脱衣所は狭く、誰もいない。備え付けなのか水着とタオルが数着あるだけで、特にめぼしいアイテムや武器もない。
「やっぱり怪しいのはプールあるか……?」
 脱衣所を出ようとしたとき、微妙な差違に気が付いた。天井が周囲の壁に比べていやに新しい。
「そこアル!」
 トンファーを投げた。
 ドサッ!
 天井から何かが落ちてきた。人間だ。
「くせものアルね!」
 足先で倒れた人間を仰向けにする。黒ずくめの忍者スタイルのその人物は、どこかで見た顔だ。
「ぺ、璧琉さんアルか?!」
 パオたちを雇った山本家のメイド、璧琉だった。片手にハンディカムビデオを持っている。
「う、うーん」
 ようやく目が覚める璧琉。くノ一にしてはだらしない。
「あ、あはははははは」
 笑ってごまかして逃げようとする。その足首をパオが掴んだ。
「待ていアル!」
「え〜ん! わたし、悪いこと何にもしてないのに〜」
 しかもくノ一なのに泣き虫だ。
「どーゆーことなのか説明して欲しいアル」
「フ、フン! 忍者がそう簡単に秘密をバラすわけないじゃないですか!」
「じゃあ、ちょっと痛い目にあってもらおうかしらアル」
 パオがちょっと恐い顔で迫ると璧琉はベラベラと秘密を喋り始めた。
「じつはご主人様のご命令で、パオさんたちが失敗しても次の人たちの参考になるように、戦闘記録を取ってたんです。わたしは山本家に代々仕えるお庭番の一族で、メイドや執事をやりながら情報収集や密書を届けたり、時には三丁目の魚屋までお使いに行ったりとそれはもう大変過酷な任務を……」
「もういいアル」
 では、水瀬が遭難した姿を撮っていたのは璧琉だったのだ。
「水瀬を助けようとは思わなかったアルか?」
「わたし、実はちょっと恐がりで……」
 頭痛がしてきた。これでは忍者になる適正がまったくゼロではないか。
「わかったアル。もういっていいアル」
「あ、ありがとうございます! このご恩はちょっとの間は忘れません!」
 璧琉は姿を消した。
「なんか疲れたアル……」

「脱衣所は異常なしアル」
「プールはちょっと変なところがありましたですぅー。おねーさま、ちょっと来て欲しいですぅー」
 霧香はちょっと首を傾げた。考え事に夢中だったので、御子柴と菖蒲の睦言には気がついていなかったが、それでも菖蒲の態度にどこか異常を感じた。
「こっちですぅー」
 引きずられてプール沿いに来る。
「ほら、おねーさま、あそこ!」
 釣られてプールの真ん中を見た霧香の背中を、菖蒲が押す。
 ザボォォンッ!
 菖蒲の裏切りに驚く霧香。記憶制御装置のボタンに手をやったが、押さない。ただの悪ふざけだと思ったからだ。それに自分はもう菖蒲の記憶を制御しないと誓ったばかりだった。逆に笑顔で片手をさしだし、菖蒲に引き上げてくれといった。
「ほら」
 手を差し出したのは菖蒲ではなく御子柴だった。菖蒲が御子柴の後ろで怯えているのはお姉さまに折檻されると思っているからだろう。しかたなく御子柴の手を借りる。
「よいしょっと!」
 御子柴が霧香の手を掴み、そして記憶制御装置だけを引き上げた。霧香は再びプールの中へ落とされる。
「なっ!」
 菖蒲が裏切ったことを信じられない霧香。少し呆然としていたが、全てを悟った。裏切ったのは御子柴だ。御子柴なら、まあ仕方ないかとも思う。
「おねぇーさまぁ!」
 狂ったように菖蒲が叫ぶ。
「黙ってろ!」
 御子柴が菖蒲を突き飛ばす。その時になってはじめてカチンときた。菖蒲を虐める者は許さない。

illast

 御子柴は霧香の顔色が変わったのを見た。いつものとりすました顔ではなく、怒りを剥き出しにした鬼女の形相だ。だが、いまさら気がついてももう遅い。霧香の後方に奇怪な波が起こっている。あれはプールの怪物だ。
「?」
 霧香は御子柴の遠くを見る視線ではじめてプールの怪物に気がついた。あいつに追いつかれる前にプールから出なくては。
 際どいところだったが、ギリギリで対岸に泳ぎ着く。わざわざ対岸まで泳いだのは御子柴に蹴落とされないためだった。
 岸に手を掛け、身体を持ち上げる。その霧香の前にパオが立っていた。手を借りようと右手を差し出すが、トンファーで頭を殴られた。また、プールの中に逆戻り。
「悪いアルね。別に恨みがあるわけじゃないアルが、こうしたら御子柴が自分の分の報酬をくれるっていったアルよ。私、お金には弱いアル」
 思わぬ攻撃で水の中にたたき落とされた霧香にプールの怪物が追いついた。
「おねぇーさまぁ!」
 菖蒲の悲鳴。御子柴はプールに飛び込もうと涙混じりに暴れる菖蒲を後ろから羽交い締めにして、なんとか押しとどめる。
 プールの怪物が霧香を口にくわえて大きくジャンプした。
「おねぇさまぁぁぁ!」
 霧香は生きていた。プールの怪物から少し離れたところから片手をつきだして菖蒲に合図を送っている。プールの怪物が襲ったのは霧香の上衣だったのだ。本物の霧香はボンテージスーツ姿になっている。
「くうっ……」
 ボンテージスーツの中に仕込まれていた注射器を左腕に刺す。中身はアドレナリンを強制的に分泌させるホルモン剤だ。この薬のおかげで霧香は男顔負けの怪力と敏捷性を獲得することができる。
 退魔用のお札もとり出したが、すでに水に濡れてボロボロになっていた。まあいい、最初からこんなものに頼るつもりはない。このボンテージスーツにはもっと強力な武器が内蔵されているのだから。
 来た!
 プールの怪物がサメのような巨体をくねらせてこっちに来る。困ったことに、怪物は表皮が透明で、波飛沫がなければそれとわからないことだった。
「もうちょっと……」
 狙いを確かめ、腕のニードルプロジェクターを発射した。数千の微少な針が射出される。これが命中したらどんな怪物だろうがイチコロミンチだ。
「チッ!」
 怪物は無傷だった。水の中だということを忘れていた。クスリのせいで動物的な戦闘本能は高まっているが、そのぶん理性が落ちている。
 こうなったらモノフィラメントチェインソーを使った接近戦だ。単分子の刃はいかなるものをも斬り裂く。
「絶対ポアしてやる」
 怪物が大きな口を開いて迫る。水ごと霧香を飲み込もうとするのに対して、うまく上顎に飛びつくと、足の力だけで馬乗りになる。
 ニュルッ!
 締め付ける霧香の足が怪物の透明の胴体に吸収されていく。
「お姉さまァー!」
 菖蒲が応援してくれている。霧香は意志力を総動員し、モノフィラメントチェインソーを怪物に巻きつけてグイッと引いた。
 手応えがない!
 怪物はジェル状の原始生物なのだ。それに気がついたときにはすでに遅かった。
「いやぁぁぁぁっ!」
 泣きわめく菖蒲。御子柴は霧香に激しく嫉妬した。おそらく自分が怪物に飲み込まれても菖蒲はこんな風には悲しんではくれない。
 ふと、霧香から奪ったばかりの記憶制御装置を見る。これさえ使えば菖蒲は……。いや、記憶を制御される菖蒲が哀れだから、彼女を愛しているから霧香から奪ったのだ。ここでこれを使ってしまえば霧香と変わらなくなってしまう。
 それにしても怪物に飲み込まれていく霧香は安らかそうだった。菖蒲に心配してもらえるのがそんなに気持ちがいいのか。
 その時だった。菖蒲が御子柴の手を振りきってプールに飛び込む。バカな! あれでは死にに行くようなものだ。
 御子柴はとっさに記憶制御装置を使った。
 これで霧香と同類になってしまった。菖蒲の偽りの笑顔は自分のものになった。だが、彼女が本当に欲しかったものは……。
 怪物に吸収されながら、霧香は至福を味わっていた。菖蒲が御子柴を振り切って自分のところに駆けつけてくれるのだ。
 だが、至福は長くは続かない。菖蒲は道のりの途中で回れ右をするや、御子柴の方に引き返してしまうのだ。
 霧香は絶望に狂った。
 血走った目、金切り声の罵声、長い黒髪を振り乱して狂い乱れる。
「おねーさま、恐いですー」
 菖蒲の新たなお姉さまになった御子柴は彼女をぎゅっと抱きしめ、鬼女の最後を見守った。御子柴の瞳にはたとえ偽りとはいえ菖蒲を手に入れたという幸福感、そして霧香を狂わせてやったという底意地の悪い満足感に溢れていた。
「かわいい菖蒲ちゃん」
「おねーさま、痛いですー」
 ギュッと抱きしめられている菖蒲が苦しいともがいた。
 御子柴は抱いている力を緩めると、菖蒲の口を奪って舌を入れる。同時に触手茸を手でしごき、それを自分の蜜壷にと誘導した。
 わざと断末魔の霧香に見えるように大きな声で愛を唄いつつ腰を振った。
 じゅぷ。じゅぷ。
 いま御子柴は精神的に霧香を陵辱しているのかもしれない。
 不意にプールが静かになった。怪物が絶望の霧香を吸収し終えたのだ。
「最後はあっけなかったアルなー」
 パオがプールをのぞき込む。
 水面はいつもと変わらぬグランブルー。底知れぬ青。引き込まれるような青。
 その水面がいきなり盛り上がって、パオを飲み込んだ。プールの怪物はそのまま岸辺へと上陸する。
「あれは……!」
 プールの怪物はすでにプールの怪物ではなかった。たしかに透明のボディこそ同一だがその外見は霧香である。彼女の怨念が怪物の精神を支配したのだ。
「ち、畜生!」
 御子柴が走り寄って念を込めた一撃を見舞う。
 いくら霧香に乗っ取られているとはいえ、所詮は妖魔。破魔の念には勝てず、殴られた場所が黒ずんでいる。だが、御子柴の方にもダメージがあった。脇腹の肉を霧香に同化され、えぐり取られたのだ。
 こうして愛に狂った者同士の死闘が始まった。
 ようやく修羅場が終わり、最後に立っていたのは霧香だった。パオと御子柴を吸収した身体は以前よりも巨大になっている。
「菖蒲、だいじょうぶ?」
 部屋の隅でガタガタと震える少女に優しく声をかける霧香。
「お、お、おねーさま?」
「そうよ、私が菖蒲のお姉さま」
「おねーさま? おねーさまなの?」
「しょうのない娘ね、お姉さまがわからないの?」
「ほんとに、ほんとにおねーさまなの? ウチのおねーさまなの?」
「見てわからないの?」
「き、き、霧香おねーさま?」
 菖蒲の薄らぼけた記憶に一つの影が蘇る。
「おねーさま! 恐かったですぅー!」
 霧香は菖蒲を抱きしめる。
 ズブズブズブ……
「おねーさま?」
 霧香は菖蒲を同化していく。
「い、いやぁぁ!」
「菖蒲、ずーっと一緒よ。絶対離れないから。愛しているわ、誰よりも」
 狂った怪物のクスクス笑いが、いつまでもいつまでも響いた。

 山本家の居間。
「それで霧香君たちはどうなったのかね」
 老人がメイドに尋ねている。
「……そうか、全滅か」
 重苦しい雰囲気。
「次の退魔師たちを呼ぼう。準備を頼む……」

 第五話・第一部・了(第二部に続く)