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第5.2話;「最も淫らな迷宮・下編(あるいは「挽肉500g」)」
お肉屋さんがうっそうとした店内から顔を出す。豚のような顔つきの剣呑な肉屋で、血のついた肉切り包丁を持っている。 「なんにしましょーかッ!」 フンッ! いきなり、お肉屋さんが肉切り包丁を投げてくる。抜く手も見せない早投げだ。 「キャアッ!」 ツバメ色のエプロンドレスが壁に縫いつけられた。あわれ璧琉ちゃんはお亡くなりになられたかと思ったその時だった。 「むう、代わり身の術か!」 エプロンドレスの中に璧琉はいない。 「ここでーす!」 忍者服の璧琉がお肉屋さんのズボンから飛び出した。ディズニーもびっくりの早業だ。 「うぬぅ、さすがメイド忍者よ。これはお肉屋さんも完敗だなあ」 ハッハッハッと笑ってオマケに100g追加してくれるお肉屋さん。 「あっりがっとさーんでーす」 東京赤坂近辺では挽肉を買うのも一苦労なのだ。 「ギャーッ! R・ジャジャが来た〜っ!」 「な、なにぃ!?」 警視庁霊能課に稲妻のような緊張が走る。 「がはあっ! ぶぎゅるびゅぎゅるどへえっ!」 警告を発した警官が髪の毛をむしり取られ、床をのたうち回る。 「な〜によ、そのR・ジャジャってのは」 哀れな警官の髪の毛をむしり取ったのは朧花だった。R・ジャジャとは朧花のじゃじゃ馬。そんな意味である。 「そんなことより音乃さん、ちょっと」 「ハァ……」 霊能課特別班・月縒(つきより)隊隊長の音乃がため息をついて立ち上がる。 警視庁霊能課は朧花の属する退魔特捜とは別組織である。退魔特捜が朧花や冬仔のような、強力な組織力を持つ民間退魔師を主力としているのに対し、霊能課は警視庁生え抜きの人材のみで構成されている。 「音乃隊長!」 今年で二十歳になる平間音乃は隊員に好かれている。隊員達の心配そうな眼差しに音乃は笑顔でこたえた。 「大丈夫、とって喰いはしないから」 退魔特捜と霊能課の関係は微妙だった。本来は別組織だが、格や実力・実績からいけば退魔特捜が圧倒的に優位だからだ。 特に朧花は霊能課を新しい子分ができたぐらいにしか考えていなかった。そのため様々な雑用を押しつけに来る。 二人は別室に入る。 「蒼騎紫暮はどこにいるの?」 紫暮は音乃の部下だ。もともと神社の娘だったが素晴らしい霊能力を持っていたので音乃がスカウトした。まだ入隊したばかりだが、その本格的な霊能力には期待がかかっている。 「彼女とは昨日から連絡が取れなくなっています」 「探してよ」 「我々も彼女を捜索しているところですが、どうして朧花様がそのことを?」 「紫暮に夏休みの宿題を頼んだのよ。明日から新学期じゃない?」 音乃は絶句した。公私混同どころの話ではない。 「承……知しました」 絞り出すようにいう。退魔特捜の機嫌を損じてはいけないと上司からもきつくいわれていた。 「今日中に見つけます」 案外、紫暮は二人分の宿題が終わらなくてどこかの図書館で泣いてるのかもしれない。最初は軽く考えた音乃だが、捜索をすすめるうちに彼女が東京赤坂の山本邸で行方不明になったことを知る。 山本邸といえばもっとも淫らな迷宮のある場所である。きな臭い予感を覚えた音乃は紫暮捜索のため月縒隊から精鋭を抽出し、山本邸へと向かった。 「たしかに紫暮さんはうちの迷宮に入りました」 「なぜですか? あなたの地所にある迷宮では紫暮の他にも無数の退魔師が行方不明になっていますが?」 本に囲まれた山本邸の書斎で、音乃と山本が面談していた。他の仲間達は外の応接室で待っている。 「お夕食をお持ちしましたー」 メイドの璧琉が書斎のドアをお尻で開け、元気な声とともにハンバーグ・ライスを運んでくる。 「ま、それはともかくです」 パクパクとハンバーグライスを平らげながら音乃が続ける。 「どうして紫暮が迷宮に?」 「なんでも夏休みの宿題にこの地下迷宮にしか存在しない仮性包茎触手の観察日記をつけなければならないと泣いておりましたな」 「……ハア……」 朧花がまた無茶苦茶な命令をしたのだ。きっとそうに違いない。まったくあの娘は人の部下を肉奴隷か何かと勘違いして……と音乃が怒りで顔を真っ赤にしていると璧琉が食後の紅茶を持ってきた。 「ラララ〜今日の紅茶は〜アッサムアッサム〜♪」 ミュージカルよろしくクルクルと踊りながら紅茶を注ぐ。さすがは一騎当千のメイド忍者だ。動きに無駄がない。音乃は黙って感心した。 「それでは長々とお邪魔になりました。これから我々は蒼騎紫暮を探しに行きます」 「うむ。璧琉、案内してあげなさい」 「はーいご主人様〜♪」 音乃様月縒隊ご一行はメイドの璧琉に案内され、最も淫らな迷宮に関する簡単なレクチャーを受けたのち、地下一階の扉を開けた。 第五章;「死闘! 最も淫らな迷宮!」 ガシャーーン! 腹にずしりと響く音をたて、地下迷宮と地上を結ぶ唯一の扉が閉まった。 「音乃隊長、扉が……閉じこめられてしまいました」 ハイネックにパンツルックの伏し目がちな女性が驚いたようにいう。胸にはロザリオがかかっている。 「そう心配するな、シスター。敵を全て倒せばおのずと扉は開くはず」 と男っぽい口調で隻眼の退魔師がいう。銀色の髪、紅い瞳、そして醜くただれた右目を持つ一種異様な雰囲気を持つ女性だった。 「いや、華羽祢、この迷宮をあまり舐めない方がいい。ここはあの御子柴・パオ・菖蒲・霧香チームを飲み込んだ迷宮だ。油断は死を招くと覚悟した方がいい」 「……」 緊張に包まれたまま警視庁の精鋭・月縒隊の三人は音もなく地下にくだる。 驚いたことに地下一階から三階まではもぬけの殻だった。そして運命の四階。メイドの璧琉が事前にレクチャーしてくれた情報によると、この四階で御子柴を含む四人が全滅したという。 「いいか、私が最初に扉を蹴破り、突入する。華羽祢とシスターは銃で援護してくれ」 「ラジャー」 「了解です」 バッ! 音乃が部屋になだれ込みながら突入する。FBI仕込みの早業だ。 しかし、部屋はガランとして静かだった。報告にあった液状の怪物やプールすら見あたらない。 三人は部屋の隅々まで調べるが、バケモノの痕跡はおろか人間の足跡一つ見つからなかった。 「誰も……いない?」 「いったいどうしたんでしょう?」 その時だった。 「パパラパ〜♪」 「誰だ!?」 「わ・た・しでーす! 愛と夢と希望のメイド忍者〜せっくし〜璧琉〜ちゃあん!」 音乃の影の中から璧琉が忽然とあらわれる。気配すら感じさせない見事な忍びの術だ。 「ハハハハ……」 音乃の頬がヒクヒクと痙攣している。生真面目な彼女はこのメイド忍者の人を喰ったハイテンションなノリについていけなかった。 「あの、何しに来たんですか?」 シスターの冷静な問い。華羽祢は顔をしかめている。 「へへへーっ、ご主人様に最後まで案内してこいって怒られちゃいました〜」 かわいくベロをだす。 「ケッ、好きになれねえ奴だ」 半顔に醜い傷跡のある華羽祢が敵意を剥き出しにして言い捨てた。 「隊長、こんな奴に道案内をして貰うまでもないですよ。どんどん下にくだっていけばいいんだ。迷子にもならねえ」 「たしかに」 シスターもうなずく。音乃は困り顔で思案している。 「えー、璧琉ちゃんはお役にたちますですよー」 かわいく腕をグルグルと回す。 「自分で『ちゃん』をつけるなよ、気色ワリィ」 「たとえば華羽祢さんが立ってるその場所!」 「ああん?」 華羽祢の足下がパックリと割れた。 「そこは落とし穴になってるですー」 パパンがパンと意味もなく踊る璧琉。その間にも華羽祢は…… ヒュー…… 「うーわーわー、もっとはーやーくー言えーーーっ!」 ヒュルヒュルヒュル…… 「か、華羽祢!」 「華羽祢さん!」 音乃とシスターが駆け寄るが、手遅れだった。 ドッスン! 華羽祢が落ちた先は地下五階だった。 「アテテテテ……あのメイド野郎、今度会ったらギタギタに……ん?」 地下5階。そこは今までの殺風景な雰囲気とはうってかわって殺気に満ちあふれている部屋だった。 「早くどいてよ!」 尻の下からしゃがれ声が聞こえる。 「あんた、誰?」 「我こそはこの地下5階の守護者、今泉彩!」 とカッコつけてるが華羽祢の尻に敷かれているのでカッコ悪いことこの上ない。 「って早くどけーっ!」 「ハハハッ、わるいわるい」 ようやく華羽祢が彩の上からどいた。 「ハァハァ……どうやらこの伊賀黒闇流くノ一の今泉彩を怒らせてしまったようだな。貴様には死あるのみだぞ」 「なにっ伊賀のくノ一だと?!」 華羽祢がギロリと彩を見据える。たしかに言われてみれば青い忍び装束を着て日本刀らしきものを持っている。 「ちょうどいい。くノ一には恨みがあるんだ。お前でその恨みをはらしてくれよう」 ニタア〜と笑う。喧嘩を売った彩が一瞬、引いてしまうほどの邪悪な笑みだった。 「しゃ、しゃらくさい!」 二人の間に緊張の火花が散る。ちょうどそこへ音乃とシスター、それに璧琉があらわれた。 「ああっ、あの忍者娘は!」 「知ってるのか、璧琉」 すでに華羽祢と彩は剣を交えている。華羽祢の魔を封じる紋章の施されたレイピア「ブラッククロス」と、彩の「水落刀」と呼ばれる日本刀の奏でる金属音が甲高く響いた。 「あれは伊賀黒闇流の今泉、華羽祢さんでは絶対に勝てません!」 「なぜですか?! ハッキリいってください!」 シスターが璧琉の襟首を掴んでガクガクと揺らす。 「そそそそ、それは忍者娘の必殺技が……」 「たわけッもう遅いわッ! 黒闇流影八身!」 突如、彩が八人に分身した。 「ぐう……」 「ハハハハハッ! どうしたどうしたぁ!」 隻眼の華羽祢は残像を残して高速移動する彩を捉えきれない。致命傷はないるものの、次々に浅傷を受け流血していく。 「簡単に殺しはせん! じっくりと恐怖を味わいながら死ぬがいい!」 「隊長! 助けにいかないと……!」 「う……うむ……」 「来るなッ!」 華羽祢の一喝が今にも助けに行こうとしていたシスターをすくませた。 「た、隊長……」 「華羽祢は何か成算があるのかもしれない。黙って見ていよう」 だが、華羽祢は防戦一方。なますのように斬り刻まれていくだけだ。 「これでトドメだぁっ!」 八体の彩が大きく振りかぶり、そして…… 「な、なにいっ!?」 グガキッ! 彩の日本刀が華羽祢の口で受け止められる。 「フフフッ、最後に首を狙いに来るだろうと思っていたよ」 ガギギギギギギッ! 耳に残る嫌な音と共に日本刀が噛み砕かれた。 「バ、バカな……」 「貴様の負けだな」 華羽祢は牙を剥き、鉄片の混じった血の塊を吐き出すとニッと微笑んだ。 「勝負あったな」 音乃も呟く。 「ま、まだだぁ! まだ終わってはいない!」 「往生際が悪い!」 華羽祢のレイピアを間一髪のところで避けると、彩は日本刀を投げ捨てて犬笛を吹いた。人間の可聴域をはるかに越えた音が室内に鳴り渡る。 「あっ! 隊長! 犬が!」 どこからあらわれたのか真っ黒なドーベルマンが三匹、彩のまわりにいる。 「ホホホッ! これぞ伊賀黒闇流忍犬の術!」 そして胸元からなにやら透明な液体の入った珠を取り出す。 「この忍犬は特別な修行を積ませ、斬っても焼いても死なない生命力を身につけておる。そしてこの珠の中には忍犬どもを狂わせる媚薬が入っているのだ!」 「そうか。それは災難だな」 「ひ、他人事のように! 今からお前はこれを喰らって、絶対に死ぬことのない犬どもに犯され続けるんだぞ!」 彩が犬笛を吹いた。忍犬に華羽祢を襲わせる合図だ。だが、犬たちはギロリと睨む華羽祢の圧倒的な闇の血の気配に負けて尻尾を巻いて大地に伏せる。 「お、おまえら、それでも伊賀の里で訓練された無敵の忍犬か! おい!」 だが、三匹の犬はクーンと鼻で鳴くだけだった。 「笑止。犬にも見放されたとはな。貴様はもう負けているんだ」 華羽祢がクルリと背中を向けて音乃たちのところへ向かう。まるで彩のことなど眼中にない。 「バ、バカにしてぇぇぇぇっ!」 彩は最後の武器、犬をも狂わせる媚薬の入った珠を華羽祢に投げつけようとした。だが、まさにその時だった。珠が粉微塵に割れたのだ。 「え?」 砕けたガラスの破片のように美しい媚薬の滴を全身にかぶる彩。 ハッハッハッ…… たちまち三匹の忍犬の鼻息が荒くなる。 「あはははは……」 華羽祢は先ほどのレイピアの一撃でこの珠にヒビを入れていたのだ。 「いやぁぁぁぁ!」 泣き喚く彩を押し倒すと、三匹の忍犬が彩の忍者服を噛み千切り、あそこを長い舌で舐め回し、巨大な肉棒を口の中にねじこんでくる。 「あわれですね……」 シスターが呟く。その間も彩はドッグスタイルで延々と犯される。 ズボズボと音を立てて出し入れされる肉棒。 ピチャピチャと乳首が舐められ、尻に牙がたてられる。 犬の涎と精液まみれの顔に涙がとめどなく流れた。 「華羽祢、助けないの?」 「隊長がそうおっしゃるなら」 華羽祢のレイピアが光り、三匹の首が宙を舞った。だが、それでも忍び犬たちは彩を犯し続ける。絶対に死なないバケモノだからだ。 再度レイピアの銀光が舞い、忍犬はバラバラになった。 「大丈夫ですか?」 シスターが歩み寄ったが、彩はまだ身もだえていた。切断された忍犬の肉棒がそれでもまだ彼女の中で蠢いていたからだ。 第六章;「喜劇・駅前陵辱出発進行!」 「地下六階への入口がない……な?」 地下五階の守護者である彩を倒した音乃たちであったが、困ったことに下に降りる階段が見つからない。 「忍者娘は回復したか?」 「もうちょっと……」 裸のシスターが生気のない彩を抱いている。三匹の忍犬に輪姦され疲労困憊した彩だが、シスターに抱かれているうちにみるみる回復していく。 シスターの能力は治癒だ。自らの生命力を相手に吹き込んでいく。 「おねーさま、あいしてるー」 むにゃむにゃとシスターの乳房にかぶりつく彩。 「寝ぼけてるなコラ、下への扉の場所を教えやがれ!」 「いやーよー、だーれが片目なんかにー」 「テッ、テメェ! もう一度ぶっ殺……」 「華羽祢さん、私に任せて」 シスターが華羽祢にかわって彩に尋ねる。するとスラスラと扉の場所を教えた。シスターの能力の副作用のおかげだ。彼女に抱かれた者は愛の奴隷となる。 そして地下六階の扉が開いた。 「わたしは長崎いずみ」 地下六階の主がいった。 「誰がわたしと戦う? それとも全員で来る?」 「ヘッ、貴様なんかオレ一人で……」 前に出ようとした華羽祢の肩を掴むシスター。 「あなたは戦ったばかりじゃないですか。ここは私に任せて……」 そのシスターの横をすり抜けていく影。 彩だ。 「おねーさまを戦わせるくらないらあたしが!」 「彩ちゃん!」 「へへへっ、うまくやったらまた抱いてね!」 「最初の敵は彩ちゃんね? 敵に丸め込まれちゃったってわけね?」 「かつての戦友だけど手加減はしない! いきなり黒闇流影八身!」 日本刀を持った八人の彩が猛烈な勢いでいずみに襲いかかる。だが、いずみは慌てず騒がず呪文を唱える。 「五行開眼せよ、水! 全天全地の神々に、土! 我申し立てるなり八卦の、金! 我が敵倒せ、火! 契約の名の下に、木! 五掛八通深奥義『民架十字符』!」 八枚の符の表面の呪文に炎が走ったかと思うと、符はいずみそっくりに変わった。 「な、なにぃっ?!」 八体の彩と八体のいずみ。気がついたときにはすでに勝負はついていた。彩は血にまみれて闘技場の外に放り出されてしまう。 「あ、あれは……」 「知っているのか、璧琉?」 「ええ、あれは間違いなく古代中国に伝わる五掛八通の秘技!」 「五、五掛八通だと?」 「なんでも漢時代に隆盛を極めた達磨大師の一派がたてた謎の古代中国拳法だそうです。符を使って自由にバケモノを召還し、戦わせるという……」 「上等ですね。符にはいささかの心得があります」 シスターがゆっくりと闘技場にあがっていく。 「勝負です!」 シスターがのたまい、いずみが受けた。 いずみの呪文。 「五行開眼せよ、水! 全天全地の神々に、土! 我申し立てるなり八卦の、金! 我が敵倒せ、火! 契約の名の下に、木! 五掛八通究極縛奥義『笑灰範血剣』!」 そしてシスターの呪文。 「五行開眼せよ、水! 全天全地の神々に、土! 我申し立てるなり八卦の、金! 我が敵倒せ、火! 契約の名の下に、木! 五掛八通究極愕奥義『点昇炸舞裂』!」 「そ、その呪文はまさかヤツも五掛八通を極めたのか?!」 いずみの驚愕をよそに、事態は思わぬ方向に転がっていく。 五掛八通の異なる二つの究極奥義が同時に唱えられたため、二つの呪文は本来の効力を発揮できなかった。いや、この場合は呪文の相乗作用で思わぬ効力を発揮したというべきなのか。 地下六階に白煙がたちこめ、シスターたちはせき込んでしまう。 気がつくとシスターといずみは演台の座布団の上に座っていた。彼女たちの前には大勢の観客がいる。 「な、なんなのよココは……」 いずみの頬がヒクヒクと引きつっている。 「究極呪文同士の相互作用……なのでしょうか……」 とシスター。 その時だった。なにやらマヌケなBGMが流れてくる。 「う、このお馴染みのテーマソングは……」 「毎度お馴染み『衝天』の時間がやってきました。司会はわたくし華羽祢です」 これまた和服に身を固めた華羽祢が演台にスリ足で登場してくる。異様に沸き上がる観客席。 「な、なにしてんのよ、華羽祢さん……」 「そしてこちらはいつもの面々」 シスターの苦情も通じず、いきなり自己紹介をフられてしまう。 「日本経済も年々強まる不況の中、そういえば戦前にもこんな時期があったんだなあと思うことしきり。富強富強と騒いでいた日本と今の不況の日本はどこが違うのでしょうか? え? 全然違うって? シスターです」 そして観客席にペコリ挨拶。自分でもよくわからないうちに勝手に口が動いている。これも呪文の影響だろうか? 「わたくし、そういう難しいことはよくわからないんですが! 最も淫らな迷宮で生まれ、新潟で育った長崎いずみが故郷に錦を飾ろうと帰ってまいりました。郷土の皆さま、お元気だったでしょうか? いずみちゃんでーーーーすっ!!!!」 どうやらいずみの方もそうらしい。挨拶をした後、しきりに首をひねっている。 「そして座布団運びはこの方!」 「座布団と幸せを運ぶ、彩でーす!」 「彩まで……あ、音乃さんは?」 観客席の最前列で笑ってる音乃であった。 「シスターさん」 いずみがつついてくる。 「どうにかしてここを抜け出せる方策を探らないと」 「ええ、わたしたちの呪文が原因なのですから」 「さあ、それではいつものように、私がお題を出し、面白い回答をしてくれた人にはむにゃむにゃを1つ差し上げます。むにゃむにゃを10個集めますと大特典、この呪文から抜けだすことが出来ます」 二人が話し合っている間に司会の華羽祢がなにかいった。一部を聞き逃してしまったが、要するに観客を10回笑わせればこの呪文を抜け出せるのだろう。 「やるしかないわね」 「それでは第一問! 彩ちゃん、例の紙を配ってください」 「はい、かしこまりました」 彩が「チチ *** スグ ***」と書かれたボードを配る。 「これから皆さんが、そのボードにかかれた電報風の『チチ *** スグ ***』をいいます。そしたらあたしが、『お父さんどうしちゃったの?』といいますからなにか適当なオチをつけてください」 「ハイ!」 「お、シスター!」 「はい。えーでは『チチ キトク スグ カエル』」 「お父さんどうしちゃったの?」 「それがね、うちのお父さん奇特だからカエルになっちゃったとか」 「うーん。次ッ! いずみちゃん!」 「はい。『チチ ユレタ スグ オカセ』」 「お父さんどうしちゃったの?」 「父じゃなくて乳なの。巨乳を揺らしたら犯されちゃったんです」 「ハハハハ、いいね。彩ちゃん、座布団二枚だ」 「は〜い」 しかし、出てきたのは座布団ではなく屈強な筋肉オトコ二人だった。 呆然としたままいずみは二人の筋肉男に代わる代わる犯されてしまう。大勢の観客の前で痴態をさらし、いずみの頭の中は真っ白になってしまった。 「ああああああぅん〜いいぃッ!」 筋肉男の猛烈な責めにたまらず嬌声をあげてしまう。 「それでは第2問。なんでも今年の流行はメイドさんと巫女さんだそうです。そんなわけで世間はメイドさんブームに沸き返っていますが、そこであなた方がメイドさんになってご主人様のあたしに何かいってください。あたしは『なかなかだねえ』といいましからさらに何かかえしてください」 「ハイッ!」 「じゃ、いずみちゃん」 「ではでは『ご主人様、今日はどうします?』」 「なかなかだねえ」 「いやん、今日はアノ日なのに中出しなんて〜」 客席から爆笑があがった。どーやら下ネタでないと受けないらしい。シスターは下ネタが苦手だった。 「面白い、面白いよ。よっし、彩ちゃん。座布団三枚だ!」 「いやッ、ダメ、そんなぁ!」 こうしていずみは三人の筋肉男に輪姦された。 「すご……」 シスターも息を呑む。 ![]() 華羽祢が扇子で演台をぺちりと叩いた。 …… さらに3問終わって、ようやくいずみは座布団一〇枚を獲得した。対するシスターは真面目に答えているのだが、下ネタが口に出来ないためこちらは0枚。圧倒的な負けである。 紙吹雪が舞い散り、呪文の効力が薄れていく。シスターたちは気がつくともとの地下6階にいた。 「さあ勝負よ!」 だが、いずみは泡を吹いて倒れていた。 最後の一人に犯されたとき、いずみはアソコからとめどなく愛液と精液を、そして口からは白い泡を吹いて失神してしまったのだ。 「なんにもしないのに勝っちゃった……」 シスターの呟きが風に乗り、そして消えた。 計十人の筋肉男に輪姦され、疲労困憊した長崎いずみが目を覚ましたのはそれから数時間後のことだった。 胸の上に誰かがのしかかってくる夢を見た。寝苦しくなって目が覚めたのだが、残念なことにそれは夢ではなかった。 目を開けると、半透明のジェル状の液体が見えた。よく見ると人の顔のような物が表面に浮かんでいる。 そいつはジュルジュルと音もなく彼女を喰らった。 第7章;「陵辱!油地獄」 地下七階はそれまでとはうってかわって蒸し暑い部屋だった。 「アツイですーっ」 メイド忍者の璧琉が炎天下の犬のように舌をつきだして喘いでいる。霊能課の三人も汗をダラダラと流して状況は同じである。だが、地下五階で仲間になった彩だけは別だった。 「彩さん、凄い汗ですね。そんなに暑いんですか?」 「違うよっ! こ、これは冷や汗だっ! お前らこの部屋の番人を知らないから……」 いいかけた彩だったが、その身体に カカカカッ と八方手裏剣が突き刺さる。服だけを貫く絶妙の手腕だ。彩は壁に縫いつけられた。 「だ、誰っ!?」 沈黙が答えだった。 「この部屋の番人は甲賀の東雲紅葉なのよ! 汚い手を使うことじゃ有名な……」 カカカカカカカッ! またも八方手裏剣が彩の影を貫いた。殺そうと思えばもう何度も殺されているはずだ。 「ふぇ〜ん!!!!」 八方手裏剣で壁に縫いつけられた彩が泣き喚く。 シュバッ! 空気を切り裂く音がして最後の手裏剣が飛来した。今度は八方手裏剣ではない。殺傷力のより強い飛び苦無だ。 「音乃隊長っ!」 飛び苦無が彩につき刺さる寸前で音乃の手が飛び苦無を掴んでいた。手袋から紅い血が滲み出してきている。 「華羽祢、シスター、この娘をなんとかしろ」 音乃に命令されて呆気にとられていた二人はようやく彩を介抱する。 「いい加減に出てきたらどうなんだ、紅葉とやら!」 「フフフフフフフ……さすがは霊能課の隊長」 声は上からだった。忍者服に身をまとった東雲紅葉が天井に逆さに立っていた。 「心臓を狙うことはわかっていた」 「裏切り者には恐怖に満ちた死をプレゼントするつもりだったが……まあいい。後でじっくりやるさ」 「何てヤツだ! 隊長、ここはあたしに」 「いや、私がやる」 華羽祢を押しのけ、音乃が部屋の中央に向かった。 部屋には油が敷き詰めてあった。極端な可燃性の油ではなく、サラダ油のようなものである。しっかりと踏ん張らないとツルツルと滑ってしまう。紅葉の狙いもそのあたりだろう。 「一人で向かってくるとは豪毅だが、果たしてあたしに勝てるかな?」 天井から飛び降りた紅葉は音乃と相対峙する。二人とも素手だが音乃は目につくだけでも警棒と銃を、そして紅葉は忍者だけにどんな武器を隠し持っているかはわからない。そして足場は音乃に不利だった。 最初に動いたのは紅葉だった。ガーターベルトに装着してあった飛び苦無を一掴み投げる。 紅葉の手が動くのと同時に音乃もまたホルスターから9mm拳銃−ワルサーPPK−を速射していた。弾はことごとく飛び苦無に命中した。 「やるわね」 眉をしかめる紅葉。どうやら手裏剣は品切れらしい。音乃は八重歯を剥いて微笑った。 「アディオス!」 ワルサーが吠え、残弾が全て叩き込まれる。だが次の瞬間、表情が曇ったのは音乃だった。 なんと紅葉の忍者刀が9mmを全て受け止めていたのだ。手裏剣と違って銃弾は音速を超えている。 それでも音乃は握ったイニシアチブは放さない。手榴弾のピンを抜く。こればかりは刀で防ぐことはできない。 音乃はしばらく待ち、爆発間際になってから投げつける。音乃は宙にジャンプしたが、爆風に巻き込まれた。音乃にしてみれば床が油まみれな以上、その場から動かないで片をつける必要があったのだ。 「やったか?」 だが、やったと見えたのは誤りだった。爆風に巻き込まれたのは忍者服の上衣のみ。 「しまった!」 咄嗟にワルサーで顔面をかばったが、そうしなければ命はなかっただろう。ワルサーは忍者刀の前にあっさりと切断されてしまった。そして音乃の左手は新たな手榴弾のピンを抜く。 同士討ち覚悟のこの行為にトップレスの紅葉は慌ててステップバックした。だが、手榴弾もあとをついてきた。チェックメイト、だがまたしても紅葉の方が一枚上手だった。 「また変わり身の術か!」 忍者服のスカートだけが爆風に舞っている。しかし、二度は同じ手は喰わない。 「そこだあ!」 直感に導かれた音乃の警棒が何かを捉えた。鈍い打撃音が響く。チタン製の警棒が忍者刀を打ち砕いた音だった。紅葉は衝撃で弾き飛ばされ、床に激突する。彼女の全裸の身体に油がぬめってこびりついていた。 「今度こそアディオスね」 音乃は警棒を構える。いくら忍者でも全裸では武器は隠し持てないだろう。 「終わりだと……?」 まだ終わってはいなかった。紅葉は自分のあそこに指を忍ばせ、ズルッと太い筒状の巻物を引きずり出した。 「甲賀流東雲忍法、坐蝦凡蟇秘の術!」 甲賀に伝わる秘伝の巻物を口にくわえ、指を組み、呪文を唱える。すると紅葉の足下からモクモクと白煙が上がり、巨大な蝦蟇があらわれた。 「な、なによ、これ?」 全長三メートルの蝦蟇ガエルである。冗談にしても趣味が悪いが、現実に存在するソレは気色が悪かった。 蝦蟇は全身のブツブツから絶えず薄汚い脂を流し、そのクリクリとした金色のつぶらな瞳で周囲を睥睨している。 「カ、カエル……」 音乃隊長が引きつった。何が嫌いといってカエルほど嫌いな物はない。一方の紅葉このカエルとはお友達だったのだ。 「ハハハハッ! やれ! 喰ってしまえ!」 蝦蟇がのっそりと口を開け、ビュッと舌を伸ばした。自分の体長の二倍にも伸びる舌である。 「うぎゃあああああっ!」 蝦蟇が紅葉を喰ってしまった。 一番手近にいたのが紅葉だから、彼女を喰ってしまったらしい。爬虫類とお友達になることのなんと難しいことか……。 蝦蟇の口の中でジタバタと暴れる音が聞こえてきた。やがてそれも静まり、紅葉の悶える声が聞こえてきた。 ある種のカエルは獲物を呑み込みやすくするため、口腔に淫液を出し、獲物を疲れさせるという。 一度だけ、蝦蟇の口が開いた。紅葉が最後の力を振り絞って口を開けたらしいのだが、その時彼女の股間には巨大な蝦蟇の舌が潜り込み、身体は蝦蟇の唾液でテラテラと輝いていた。 地下八階の門が開いた。 ![]() 獲物を呑み込んだ蝦蟇ガエルは満腹感に満足し、うつらうつらと眠っていた。 彼女の−蝦蟇ガエルはメスだった−眠りを覚ましたのは、一匹の巨大なモンスターの影だった。 モンスターは紅葉を呑み込んだ蝦蟇を呑み込み、一瞬の遅滞もなくさらに地階へ向かう。 第八章;「悪魔娘散る」 地下八階の扉を開けるとき、わけもなくシスターの胸がチクリと痛んだ。 「どうしたの?」 シスターの異常に気がついた音乃が声をかける。 「なんでもありません。なんでも……」 だが、その言葉とは裏腹に、シスターの顔色は青かった。彼女の霊能力はこの階で大切な仲間の誰かが死ぬかもしれないと伝えていたからだ。 「隊長、これを」 華羽祢が自分の銃−グロッグ17−を渡す。 「隊長のワルサーは壊れてしまいましたからね」 「でも、華羽祢は……」 「わたしはこのレイピアで十分です。それにわたしはもともと魔族ですよ」 「わかったわ」 「それと隊長、この階の敵は私に任せて貰いますよ。地下五階以来戦ってないんで休養はたっぷり取りましたから」 「気をつけるのよ。敵はどんどん強くなってきてるから」 こうして音乃の不安をよそに華羽祢が地下八階の中央に進み出た。部屋は暗く、視界はひどく悪かった。 「この階には誰もいないのか! この腰抜けめっ」 華羽祢がうなり、その返礼に銃弾が足下に着弾する。銃口の発射炎からして敵は部屋の隅に陣取っているようだ。 「そこかっ!」 不意に屋内が明るく輝いた。照明弾である。その照明のおかげで部屋の様子がハッキリと見えた。 部屋は霊能課の侵入した方角こそ何もない平地だったが、反対側の発射炎の見えた方角は一面のジャングルだった。屋内にこんなものを建設してどうするつもりなのだろうと建設者の意図が憚られたが、ここは最も淫らな迷宮である。非常識こそ常識なのだ。 照明弾は一分ほどで燃え尽きた。 「くそっ!」 せっかく暗闇に目が慣れてきたところだったのに、照明弾のおかげでそれがパーになってしまった。 パパパパパパパパッ! 同じ場所からより正確な射撃が来る。音からして自動小銃の類らしい。華羽祢が横に転がって逃げるとその方向に着弾がついてきた。どうやら向こうからは華羽祢の姿が見えているらしい。 反撃もままならずゴロゴロと側転して逃げていると不意に地面が無くなった。川にはまってしまったのだ。あたりはジャングルだから川があるのもおかしくはないが、おかげで華羽祢の装備のほとんどは水没してしまう。照明弾は華羽祢から視界を奪うために打ち上げられたのだ。 「やるじゃないの」 華羽祢は唯一残った武器である退魔用レイピア「ブラッククロス」を胸に発砲炎めがけてジグザグに突進した。 パパパパパパッ! 足下に集中していた弾着が徐々にあがってくる。そしてとうとうライフル弾が華羽祢を捉えた。 「ぐうっ!」 だが、華羽祢は並の退魔師ではない。いや、正確には人間ですらない。 元々彼女は魔族の一員だった。だが、ある時一人の人間の男に惚れたことから彼女の人生は狂っていく。 魔族が人間に惚れられることはいい。だが、その逆はあってはならない。そういう掟なのだ。魔族は二人に刺客を向けた。彼氏と刺客は死に、生き残ったのは右目を失った華羽祢だけだった。この事件を境に華羽祢は復讐のため霊能課に入隊する。ちょうど霊能課も人材が払底していた時だったので、諸手をあげて華羽祢を歓迎した。音乃とのコンビもそれ以来である。 ダガガガガガガガガッ! 発砲音が変わった。ライフル弾では華羽祢を倒せないと悟ったのだろう。この音は軽機関銃の音だった。歩兵が単独で持ち運びできる最大の銃である。だが、身体の構造が根本から異なる華羽祢は12.7mmの軽機関銃弾を体表の装甲で弾きながら前進する。 着弾の衝撃で服が千切れ、普段は隠している角や尻尾があらわになった。二〇〇メートルも前進したところでいきなり銃声が絶える。弾切れか、軽機関銃ではラチがあかないと判断したか。ともかく華羽祢もほっと一息ついた。いくら悪魔でも12.7mmの着弾にいつまでも耐えられはしない。事実、口から血を吐いた。体表は無事でも着弾のショックで内臓にダメージがいっている証拠だ。 シュパッ! 何かが飛んできた。尻から煙を吐くそれはスティンガー地対地ロケットだった。戦車を大破させるロケット弾を喰らったらいくらなんでもヤバイ。華羽祢はジャンプした。しかし、ミサイルも軌道を変える。有線誘導なのだ。 華羽祢はコウモリのような羽を背中から出すと、ミサイルに自分から接近する。ギリギリまで接近するとレイピアで弾頭とモーターを切り離した。地対地ミサイルに近接信管はついていない。機動力さえあればこんなことはたやすいものだった。 空中に滞空したことはほかにも余録があった。部屋の照明のスイッチを見つけたのだ。スイッチを入れると下方のジャングルの中を紅白の衣装の巫女らしき女が走っているのが見えた。あれが地下八階の敵なのだろう。華羽祢はジャングルの木の葉ごしに見え隠れする獲物めがけて急降下した。 急降下して驚いたのは華羽祢だった。濃密な緑に囲まれたジャングルの中に一大陣地が設営されていたのだから。小銃、自動小銃の類はもとより重機関砲まで陣地には据え付けられている。陣地そのものもベトンでつくられた本格的なものである。 「あの女、戦争でもやってるつもりかッ!」 その肝心な『あの女』は見失ってしまった。ジャングルでは一度見失った敵の再捕捉は非常に難しい。とりあえず何丁かの銃と弾薬を補給して、と思ったときだった。ジャングルの奥からキュラキュラという独特のキャタピラ音と木々を押しのける破壊音とともに戦車があらわれた。 「なっ!」 T−80だった。異様に車高の低い120mm砲装備のロシア戦車である。本来は三人乗りだが、大幅なコンピューター化で一人乗りを実現したらしい。コマンダーズキューポラにのっている巫女娘は手元の操縦装置だけで全てを操作していた。 「お、おまえは……」 「あたしは一人機甲退魔師団の御影。そういうあなたは悪魔ね。その角、銀色の髪の毛、紅い瞳、鏃つきの尻尾にコウモリの羽。隠しても無駄よ。どうりで軽機関銃じゃ歯が立たないはずだわ。でも安心してちょうだいね、いくら悪魔でも120mm砲はキツイでしょ」 あまりの事態に呆然としている華羽祢にT−80の120mm砲の照準が合う。コマンダーズキューポラの御影がニッコリ微笑んだ。巫女服に暗視メガネは悪趣味だが、この場合そのセリフも悪趣味だった。 「魔女の大釜で茹でられちゃえ!」 さすがの華羽祢も何もできなかった。咄嗟にレイピアで身体を守ったが、120mmの砲弾は彼女の身体をレイピアごと撃ち抜いた。 「がっ、がはっ!」 華羽祢の右胸に巨大な穴があいている。右腕は根本からもげていた。どうやら狙いは右にずれていたようだが、致命傷には変わりない。 「あーら、まだ生きてたの。さすが悪魔ねー」 御影がT−80から降りてきた。心なしか顔が赤い。乳首が巫女服越しにそれとわかるほど勃っている。どうやら発砲で性的興奮を覚えているらしい。 「でも、これを挿入されたらどうかしら?」 御影は退魔用のレリーフの刻まれたバイブを華羽祢のアソコに突っ込んだ。 「あああうっ! 死ぬ! 死ぬ! 死んじゃう!」 「死になさい、悪魔は人類の敵なのよ」 絶頂に達したとき、彼女の心臓は活動を止めた。 第九章;「機甲巫女電撃作戦」 華羽祢が死んだことはなんとなくわかった。 音乃もシスターも戦闘の支度をする。仲間を失った打撃は二人とも表には見せないが、相当の打撃だということは部外者の彩や璧琉にもわかった。 「シスター、あたしが突入するから援護を……」 「いいえ、わたくしにやらせてください」 音乃は何かを言いかけたが言葉を呑み込んだ。華羽祢はシスターの恩人だったからだ。 彼女が一四歳の時だった。 横浜の学校から家に帰るとき彼女は運悪く地元暴力団組織に拉致・監禁され、輪姦凌辱ビデオを撮影されるという事件に遭った。 その暴行の傷を当時目覚めたばかりの『能力』を使って治癒していたのをたまたま見られた彼女は、そのまま組織の万能治療師として働かされることになる。 5年ものあいだ、彼女はヤクザに犯されながら敵対組織の人間の拷問の補助−拷問で死に損なった人間を治癒し再度拷問に耐えられるようにする−を行ってきたが、音乃率いる霊能課に救われ以後は霊能課に所属し現在に至っている。彼女が本名を名乗らず、シスターというあだ名を使っているのも当時の忌まわしい事件を忘れるためだという。 この事件の直後、華羽祢は何も言わずに彼女の所属していた組織を根こそぎ虐殺してくれた。彼女の悪魔的な良心からすると、この殺戮は正しいことをしたことになるらしい。もっとも、音乃はその後始末をため息をつきながらやらされることになったが。 「わたくしの復讐を代わりにやってくれた華羽祢さんの復讐はわたくしがやらなければならないのです」 「音からして敵は戦車を持ち出しているみたいね。勝算はあるの?」 「任せてください。敵の装備がわかっていれば楽勝です」 シスターは胸元から符を抜いて微笑んで見せた。音乃が初めて見る凶悪な微笑みだった。 ジャングルの奥からT−80がガスタービンの音も高らかに進み出てきた。シスターは平地でそれを迎え撃つ。 「あら、今度は人間なの?」 コマンダーズキューポラから半身を乗り出した御影がいった。 「悪魔のお仲間さんだから悪魔かと思ってたわ」 「華羽祢を殺したわね?」 「あったりまえじゃないの。120mm砲で直撃した後、アソコに神聖呪文を施したバイブを突っ込んでやったわ。悪魔をテッテー的に退魔するのがあたしたち退魔師のお仕事よ。違う?」 「違わないけど、違うわ!」 「安心してよ。人間なら命までは取らないから」 T−80の車載機銃がシスターを睨む。 タタタタタタタタタッ シスターの身体がボロ雑巾のように弾けた。1つ、2つ、3つ……シスターの符を使った分身の術である。 「クッ!」 ここはとりあえず移動すべきだった。御影はギヤをバックに入れ、全速で後進する。だが、右のキャタピラと床にも無数の符が張り付いていた。地面との抵抗がなくなったT−80はその場で回転してしまう。 「諦めて、華羽祢の冥福を祈りなさい。そうすれば命だけは見逃してあげるわ」 「しゃらくさい! 誰が悪魔の供養なんか!」 T−80の砲塔が回り、120mm砲がシスターをピタリと狙う。分身は数あれど、喋ったのは彼女一人だ。 「やめなさい。あなたはもう敗れているのよ」 「うそだっ!」 引き金を引いた。撃針が120mm砲弾の砲尾を叩き、火薬が化学変化を起こし爆発エネルギーになる。巨大なエネルギーは徹甲弾を秒速2000m/時で押し出したが、120mm砲の砲口はシスターの符で塞がれていた。超常の力で蓋をされた砲身は爆発エネルギーの行き場をなくして膨れ上がった。 砲身が破裂し、車内にも爆風が逆流する。御影はコマンダーズキューポラにいたのが幸いした。最初のショックでT−80から転げ落ちた。だが、そうでなかったら次の瞬間に起きたスプリンター(破片)を含んだ爆風にやられ、確実に即死していただろう。 戦闘力を失った御影はシスターに手荒に巫女服を脱がされてしまう。拷問ならヤクザに捕まっていたときさんざんに見ていた。実際に手を下すのは初めてだったが、彼女の動きはプロそのものだった。 「あなたに華羽祢と同じ痛みを味わわせてあげる」 ぼんやりとしか意識のない御影の耳にささやく。彼女は破裂した砲身の残骸にロープで吊されてしまう。全裸の彼女の真下には120mm徹甲弾があった。 「あうっ!」 ニュルリとタングステン製の弾頭が彼女のアソコに入ってきた。ズブズブと遠慮なく冷たい弾頭は彼女を犯し、ついに先端が子宮に達する。 「ヒッ!」 手首に力を込めて懸垂の要領で身体を浮かせると少し楽になった。だが、そんな姿勢がいつまでも続くはずはない。疲れて身体を沈めると再び砲弾に犯される。 「ロープの長さはこんな物ね」 絶妙の長さにセットするとシスターは立ち上がった。 「あっ! ど、どこに行くのぉ?」 「下の階に決まってるじゃない。あんたはそこで少し反省していなさい」 「い、いやぁっ! 待ってー!」 じゅぶっじゅぶっじゅぶっ…… 「あっあっあっあーーーーっ!」 大量の淫液が太股を伝わった。異常な状況で快感がいつもの一〇倍にも感じられる。その絶頂の中で彼女は見た。迫り来る透明のモンスターを、そしてモンスターの表面に浮き出た顔は前回の探査で行方不明になった霧香の顔だった。 第十章;「修道女葬送曲」 華羽祢を失い重い足取りのまま霊能課の面々は地下九階に向かった。 地下九階はそれまでの階とはうって変わってどこか懐かしささえ漂う空間だった。 「ここは……神社ですか?」 「そうみたいね」 「ここは蒼騎神社でーすっ!」 と久々のセリフに感動しながらメイド忍者の璧琉がいう。 「蒼騎神社、たしか……」 とこれもまた久々のセリフに感動しながら彩がいいかけた時だった。 パカラッパカラッパカラッ ご神馬に騎乗した巫女さんが神社の境内を走ってくる。 ご神馬は蒼くて巨大、そしてそれに騎乗している巫女さんの胸も巨大だった。蒼騎神社の巫女、蒼騎紫暮とその愛馬。紫暮は胸が大きすぎて普通の巫女服では胸が収まりきらず、特注の巫女服を着ている。 「黙死録第四章三節『見よ、蒼き馬に乗りし災厄を。その者の名を死暮という』。たしか世界の滅亡を予言した予言書にそんな一節が……」 「そんなん、あるわけないがな!」 彩がボケ、璧琉が突っ込むと紫暮を含む一同がずっこけた。 「……と油断させておいてぇ、地下九階の守護者・蒼騎紫暮お覚悟ぉ!」 突如、彩が飛び上がった。忍者だけにその跳躍力は並ではない。騎乗の紫暮の背後に楽々と回ることが出来た。あとは水落刀でその首を掻き斬るだけである。 「お命ちょうだい!」 紫暮が振り向いた。彼女の大きな二つの乳房はタプンタプンと揺れる。 「キエエエエエエエエ……え?」 勝利を確信し、首を掻き斬る寸前までいった彩は、急に体勢を崩して地面に落下する。どうやら自爆したらしい。彩はそのまま口から泡を吹き苦しそうにもがいている。 「な、なに?」 「なにが起こったの?」 馬上の紫暮は指一つ動かしていない。なのに彩は致命的なダメージを受けた。 「……な、なんて怪しい技なのかしら」 馬上の紫暮はニッコリと慈愛に満ちた眼差しで微笑んでいる。とてつもない強敵だ。 「きっと道中で悪い物でも食べたんですよ、彩ちゃん食い意地が張ってるから」 トンチンカンなことをいいだす璧琉。 「いえ、食中毒ではないようです。身体が痙攣していますが、これはまるで……」 シスターが言葉に詰まる。 「音乃隊長、この勝負わたくしに任せてくださいますか」 「勝てるのか?」 「彩さんが倒れた原因を確かめたいんです。それにこれを……」 シスターが音乃に三枚の符を手渡した。 「この先、絶体絶命と感じたときに使ってください。きっと役に立つはずです」 音乃がうなずき、シスターが一歩前に出た。両手には符が握られている。 「五行開眼せよ、水! 全天全地の神々に、土! 我申し立てるなり八卦の、金! 我が敵倒せ、火! 契約の名の下に、木! 五掛八通究極愕奥義『雀遭怒留士』!」 また、シスターが分身した。今度は8体の分身それぞれが符を持っている。 「将を得んと欲すればまず馬から射よといいます。あなたを倒す前にまず、その馬から倒してみせましょう」 「フフフ、私の愛馬は凶暴よ。そううまく行くかしら」 そういった紫暮の瞳はどこかうつろだった。そのセリフさえも誰かに操られているような気配がある。 シスターの探るような視線はご神馬に止まる。紫暮を操っているのはこの馬だ。この馬さえ倒せば紫暮は正気に戻る。 蒼いご神馬はシスターをバカにするようにブヒヒッといなないた。 「音乃隊長、この勝負、何があっても手を出さないでください」 「なぜだ?」 「おそらく蒼騎紫暮は今までに出会った敵の中でも最強。そして彼女こそこの迷宮攻略の鍵だとわたくしの直感が囁いています。おそらく彼女が仲間になれば任務は達成できるでしょう」 音乃はシスターの予知能力は知っている。 「わかった、まかせよう」 「ありがとうございます。では……」 まなじりを決した八体のシスターがそれぞれに符を持ち、さらに八ツ身分身の呪文を唱える。8*8=64体のシスターが紫暮とその愛馬を取り囲む。 「第一陣!」 八体のシスターが紫暮を取り囲むようにジャンプした。火炎符を持ち、八卦包囲攻撃を敢行する。紫暮はさっきと同じようにぐるりと周囲を眺めるだけで手も動かさない。 火炎符を唱えようとした八体のシスターが紫暮に睨まれただけでしわくちゃになり、ついには八つの護符に戻った。彩の時と全く同じである。 「一人が八人になろうと無駄です」 紫暮は相変わらず悠然と微笑んでいる。 「第二陣!」 第一陣の二倍、一六体のシスターが時間差をつけて紫暮を襲う。八つの火炎符、八つの轟水符による時間差攻撃だ。 これだけの攻撃には、さすがの紫暮もまったく動かないではいられなかった。前方の敵には睨みで、そして後方の敵にはお祓い棒で対処したのだ。巨乳揺れる紫暮の一睨みで前方の八体はしわくちゃの護符に返り、お払い棒でなぎ払われた後方の八体の護符は一文字に切断されている。 「あ……」 璧琉が短く呟いた。 「隊長さん、シスターさんの顔色が」 残り40体のシスターたちの顔色が一様に青い。退魔術は一様に生命エネルギーを削る。符を使う退魔術はその中でも最も生命エネルギーを削る術だと聞く。六四体もの分身を作り出したシスターが消耗してもなんの不思議もないのだ。 だが、解せないのは紫暮だ。彼女も何らかの退魔術を使っているはずなのに、少しも消耗していないばかりか彼女の発するオーラは以前より充実している。心なしかその巨乳すらさらに大きくなったようにも見えるのだ。 「第三陣!」 残る四〇体のシスターが一斉に襲いかかった。微妙な時間差をつけた波状攻撃に次ぐ波状攻撃に紫暮も両手を使って応戦するが、間に合わない。ついに三体のシスターが同時に蹴りを加えてくるその身体を踏んで真上へ飛ぶ。 「なにぃっわたくしを踏み台に!」 誰よりも上空に位置した紫暮の攻撃で無数の護符が消える。そして短いが激烈な闘いが終わり、護符の分身は全て消え唯一残ったシスター本体はその顔色も真っ青。肩で息をしながら立っているのがやっとの有様だった。 一方の紫暮は度重なる執拗な攻撃にもめげず、ご神馬の隣で勝ち誇っている。 「あなたの技の秘密がやっと解けたわ……」 シスターは荒い息をつきながらいった。 「あなたの技は他人の退魔術を吸収する性質のもの。おそらくその胸に秘密があるんだわ」 「フフフッ、たったそれだけのことを知るのにずいぶんと体力を使いましたね。そう、たしかにあたしの技はこの胸の膨らみを揺らすことで生じるルルソーマ波動効果を応用したもの。でも、あなたはもう創神号を倒す力も残っていない。創神号、トドメを刺してやりなさい!」 ご神馬がブヒヒッといなないてシスターに馬乗りになった。そして巨大な肉棒が修道服ごと秘所を貫く。 「あひっ!」 ![]() 音乃がたまらず助けに入ろうとするが、シスターは首を振ってそれを遮る。 「た、隊長……ダメ、来ない、で……絶対、勝って……みせるから……」 そうしている間にもシスターはご神馬に犯され、ドロドロの精液にまみれていく。そして不思議なことに精液にまみれるごとにシスターの苦悶の表情に力が戻っていった。 彼女は紫暮と同じく交わっている相手の生命エネルギーを吸い取っているのだ。その証拠に彼女を憑かれたように犯しているご神馬の肌艶がだんだんと悪くなっていくではないか。一頭と一人の凄絶なる淫闘はいつ果てるともなく続いた。 ついにご神馬がバッタリと倒れて虫の息になってもシスターは攻撃の手をゆるめない。逆にご神馬の上に馬乗りになって最後の一滴まで生命力エネルギーを吸い取ろうとする。 ご神馬がこの世で最後の射精を行うのと同時にシスターの心臓が止まった。いや、ご神馬と交わった直後にすでに彼女の心臓は止まっていたのかもしれない。 シスターはご神馬の上で堂々の腹上死を遂げていた。彼女と創神号の亡骸はまるで人馬一体の墓標のようだった。 第十一章;「悪魔少女氷冴」 地下十階へと続く階段を下る音乃たちの足取りは重かった。 地下十階の扉が開いた。湿った風が吹く。 そこは西洋式の墓地になっていた。 「この階は誰が守ってるんだ?」 「クスクスクス……私よ」 墓石の上に真っ黒な喪服を着た少女が、大きな鎌を肩に担いで腰掛けていた。その姿はまるで死神。 「邪魔するつもり?」 「私の使命はこの階を誰も通さないこと……」 フワッと、まさにフワッととしか形容のしようがないジャンプで少女は宙に浮く。重力の法則なぞ鼻にもかけていない。 「超振動……」 少女の色白な手が巨大な鎌をぶんぶんと振り回す。空中を薙いだ鎌の刃先から極超音波のエネルギーが放出された。 たまたまその攻撃軸上にいたのは彩だった。 彩は咄嗟に胸の前で腕を組んで防御するが、効果はない。極超音波は防御を素通りし、彩の内臓を直接破壊した。 「彩ッ!」 彩はなにが起きたのかよくわからないまま鮮血を吐く。鮮血はいつまでたっても止まらない。彼女の内臓はすでに掻き回され、ボロボロになっていた。 「あ、……お、お姉さま?」 彩のお姉さま、シスターはすでに死んでいる。どうやら彼女は音乃のことをシスターと勘違いしているらしい。 「しっかりしてよ彩ッ!」 「彩は……がんばった……んだ……でしょ? あたし、お姉さまのお役にたった……わね?」 虚空のシスターに話しかけ、ついに絶命する彩。 この迷宮で最初に闘い、仲間になった彩。だが、実力はからきしだったものの、立派にチームのムードメーカーの役をこなしていた。 「音乃さん、こいつは私に任せてください」 「紫暮……」 「私はシスターさんに助けていただきました。できればこの女性も助けてあげたいんです」 音乃がうなずき、紫暮が立った。 「まず名前を聞いておきましょうか。私は蒼騎紫暮。蒼騎神社の退魔師です」 「私は……私は……」 少女の穏やかな顔が急に歪む。 「私は氷冴。お前らを地獄に叩き込む!」 「なるほど、悪魔憑きね!」 不意打ちの衝撃波を横っ飛びで避ける紫暮。 氷冴の身体が小刻みに震えていた。 エンティティー現象。目の前の可憐な少女は悪魔にとり憑かれているのだ。 「いいでしょう。巫女の本職は悪魔退治です」 祓い棒を構えた紫暮の胸がたぷんたぷんと揺れる。 空中をユラユラと浮遊する氷冴が衝撃波を出そうと鎌を振る。その一瞬を狙って紫暮が懐に飛び込んだ。振り下ろした鎌と祓い棒が閃光と共にぶつかりあう。 結果は相打ちだった。氷冴の衝撃波が暴発し、二人の武器が粉微塵と砕け散り、爆圧を至近距離から受けとめる結果となった二人の服がビリビリに破れてしまう。 「よくも……」 氷冴の周囲の空気がピシパシと音をたてながら凍っていく。念動力で空気中の水分子の振動だけを停止させているのだ。急激に冷却された水分子は結晶化し、寄り集まって巨大な氷塊となる。 「死になさい!」 氷塊が音もなく襲いかかってくる。紫暮は絶妙の体術でなんとか紙一重で避けた。 「まだまだですわ」 氷冴の周囲に無数の氷塊が浮かび上がった。 「この全てを避け切れるかしら?」 対する紫暮は自分の巫女装束の一端を千切り、それをハチマチ代わりに頭に巻く。 「蒼騎流格闘術、目にもの見せてあげましょう」 腰を低く落とし、左拳を前に突き出すカラテスタイルだ。そして目を閉じ、耳を澄ませた。氷塊の接近を目ではなく耳で感じ取ろうとしているらしい。 「死ねェ!」 氷冴が吠え、無数の氷塊が襲いかかってきた。 紫暮は目をカッと見開き、先頭の氷塊へ右拳を繰り出した。拳と氷塊は接触する寸前、退魔の気が込められた残影が氷塊を破壊し、水に還元する。だが、氷塊の数は無数。紫暮の目にも留まらぬスピードで繰り出される拳の隙間をかいくぐり、小さな氷塊が彼女の身体を貫いた。 「ふうううううおおおおおおおおおっ!」 その時、紫暮の全身から退魔の気がみなぎり、その波動が全ての氷塊を消し去ってしまう。 波動の余波は氷冴をも襲う。間一髪、背中から堕天使の翼が生え、それが彼女を防御する。 「な、なにこの娘の力は……」 思わず愕然と唸る氷冴。堕天使の翼でガードしても退魔の気は彼女の身体をビリビリと揺さぶったのだ。 「ふう……」 ようやく紫暮は退魔の気を終息させた。巫女装束は乱れ、両方の乳房があらわになり、乳首にまといつくように真珠のような汗が光っていた。闘えば闘うほど彼女の気力は充実していくように見える。 逆に氷冴は闘えば闘うほど悪魔にエネルギーを吸い取られてしまう。この時点で勝負は見えていた。氷冴が最後の大技、デスモードに突入しようと身構えたとき、紫暮が空中の氷冴に駆け寄ってきて大きくジャンプ、身体を回転させながら浴びせ蹴りを氷冴の脳天に叩き込む。あまりの威力に失神し、空中から落ちるところにさらに袈裟切りのカラテチョップを肩口に叩き込まれてしまう。 「あウッ!」 ボキッと骨の折れる音。鎖骨が折れたのだ。 痛みで身動きもできない氷冴に紫暮がのしかかる。 「蒼騎流退魔、一ノ法!」 紫暮の巨大な乳房が揺れた。退魔のリズムで揺れる乳房が氷冴の中の悪魔を追い出そうとする。 「仝‖≠¥♂§∈∩∀∝!!!!!!!」 声にならない悲鳴を上げてのたうち回る氷冴。だが、紫暮のリズムは少しも崩れない。 「蒼騎流退魔、二ノ法!」 紫暮の乳房の揺れるリズムがヒートアップした。氷冴は服を掻きむしり、海老ぞりになって苦しむ。 「蒼騎流退魔、三ノ法!」 紫暮の乳房から白い乳液が飛んだ。乳液は氷冴の顔に、そして身体にもかかった。 「ギャアアアァァァァァッ!」 ジュウジュウと氷冴の身体を焦がしていく聖なる乳液。そしてついに耐えられなくなったのか悪魔が彼女の身体から逃げ出そうとした。 ![]() 「ムギュウゥゥホホホホホーォー、人間ノクセニーッ!」 氷冴のアソコからニュルニュルと抜けだしながら悪魔がいった。氷冴はあまりの痛みと悪魔的な快楽に悶絶している。 「覚悟シロロォォォーッ、今度ハオ前ニ取リ憑イテヤルーッ!」 「おだまりなさい、悪魔! 蒼騎流退魔、最終ノ法!」 紫暮は悪魔の身体を掴むとごぼう抜きに氷冴の胎内に寄生していた悪魔を一気に引っこ抜いた。 「ヒヒヒヒヒヒィィィィッ!」 泣き喚く悪魔を紫暮は必殺のドラゴンスリーパーに固めた。 「た、ただデハ死ナヌゥゥゥッ!」 消滅していく悪魔は最後の力を振り絞って紫暮の口めがけて触手を放つ。 「バカめ!」 半ばまで侵入した触手は紫暮に噛みきられ、悪魔は痕跡も残さず消滅する。 「紫暮さん! 大丈夫ですか?」 紫暮が前のめりにつんのめる。音乃が駆け寄ってきた。 「私は大丈夫ですから、氷冴さんを……」 音乃は倒れたままピクリとも動かない氷冴の脈を診た。脈拍は弱々しかったがなんとか動いている。骨折した箇所に応急手当を施し、退魔の念を気付け程度に注入してやると目を覚ます。 「わ、私は何を……」 「……悪い夢を見ていたのよ。悪魔に心を鷲掴みにされる悪い夢をね」 「ゆめ……よかった……」 「そう夢よ。もう怖いことなんかないの」 「私、悪魔に取り憑かれてみんなに悪いことばかりしてたみたい……」 「もう悪い夢なんか見ないって保障するから、もうしばらくお眠りなさい。あたしたちは用が終わり次第、あなたを迎えに来るから。ほんのちょっとの辛抱よ」 「あ、ありがとう……」 氷冴は再び気を失った。悪魔に取り憑かれていなければただの可愛い娘らしい。 「こっちはこれでよし。紫暮さんは……」 見ると紫暮は自力で立ち上がっていた。つんのめったのは単に疲労していただけのことらしい。 風が吹き、その場に氷冴を残した一行は次の階へと向かった。 氷冴の頬を撫でる手があった。 熟睡していた氷冴も目を覚ます。 彼女の眼前には透明のニチャニチャした何かがあった。 それが何なのか、彼女は考える前に吸収された。 第十二章;「裏切りと陵辱のサンバ」 「地下十一階、最終階でぇーす! 地下十二階は宝物庫。ここの敵を倒せば宝物庫にたどり着けまーす!」 案内役のメイド忍者璧琉が明るく朗らかにいった。 辛く長く苦しかった迷宮もこの階を突破すれば終わる。ようやく音乃の心に希望の光が見え始めた。 思えばこの探索の旅の目的は、朧花に夏休みの宿題を頼まれた紫暮の捜索というバカバカしい目的から始まったのだった。 「そういえば紫暮さん、朧花さんの夏休みの宿題なんですが……大丈夫ですか、紫暮さん?」 紫暮は真っ青な顔でうつむいている。 「え? あ、ああ大丈夫よ。何でもないから。それより夏休みの宿題ね。あれなら宝物庫に保管されているはずです」 正直な話、音乃は宿題のことなんかもうどうでも良くなっていた。華羽祢を失った瞬間から彼女がこの迷宮を攻略する目的は意地とメンツ以外の何物でもない。 それより気になるのは真っ青な顔の紫暮だ。 「紫暮さん、もしかしてどこか怪我してるんじゃないですか?」 「いいえ、何でもありません」 「ちょっと見せてください。軽い怪我なら……」 「かまわないでください!」 紫暮が音乃を突き飛ばした。 「すいません。悪気はなかったんです。でも、退魔をしたばかりなのでちょっと気が立って……」 音乃は腑に落ちないものを感じながらも引き下がった。実際、退魔術を使うと気が高ぶるというのはよくあることだった。 「わかりました。ではこの階の敵はあたしが引き受けましょう。ゆっくり休んでください」 「…… −_☆(キラーン)」 紫暮の瞳が怪しくキラリと光ったが、音乃はそれを見ていなかった。彼女は部屋の隅の祭壇に横たわる人影に気を取られていたのだ。 「ま、まさかあの人影は……」 見間違えようのない姿だ。なにしろ長年コンビを組んだ相棒の姿なのだから。 「華羽祢、生きていたのか!」 祭壇の上の人影がムクリと起きあがった。 白百合の花を踏みしめ、起きあがった人影には矢尻のついた尻尾、コウモリの翼、そして隻眼・白髪の見間違えようもないかつての部下、華羽祢だった。だが彼女は地下八階のT−80との激闘によって右半身を砕かれ、殉職したはずなのだ。 「久しぶりですね、隊長」 華羽祢のかすれたハスキーボイス。だが、この口調には少し違和感があった。まるで音乃とはじめて出会った頃の華羽祢を思い出させる。 「しかし、どうやって生き残ったんだ……死体はバラバラになったものだと……」 「私は悪魔ですからね。人間とは身体の構造が違います」 華羽祢は口を大きく開けてハハハハと乾いた笑いをする 「そうですよ音乃さん、私にも彼女が良い悪魔だということは感じられます」 不浄を何よりも忌み嫌う巫女の紫暮からもこういわれてしまうと、音乃は自分の感じていた不安がなんだかバカらしい物に感じられた。 「そうだな。とにかく華羽祢が復帰してくれてこれ以上、力強いことはない」 音乃が華羽祢に手をさしのべた。 その手がグイッと引っ張られ、音乃は華羽祢に抱きしめられる。 「クンクンクン、この匂い、まだ音乃隊長は処女なのですね」 「な、なにを言うんだ華羽祢!」 「私は音乃隊長のことを好きだったんですよ。フフフフフ、処女を奪いたいぐらいに!」 華羽祢の鋭利な爪が10センチほども伸びた。それは音乃の首筋に突き立てられ、動くこともままならない。 「か、華羽祢……この迷宮に洗脳されたな!」 「洗脳だなんて人聞きの悪い。本来の自分に戻っただけですよ」 華羽祢の爪が音乃の制服を横一文字に切り裂いた。ジャケット、インナーそしてブラが切断され、白い肌に血が流れる。 「おっと、忘れていた。隊長の射撃と棒術は天下一品。処女を奪ってあげる前に、まずは銃と警棒を壊さないと……」 華羽祢の指が目にも留まらぬスピードで動き、銃と警棒が破壊された。音乃は丸腰になってしまう。 「不憫だな、華羽祢」 音乃が呟く。 「不憫なのはあなたの方ですよ、隊長。これから陵辱されるのはあなたなのだから」 「華羽祢、どうしてあたしのような特殊能力のない人間が霊能課の隊長でいられると思うの?」 「そりゃ、隊長が人間のエリートだからですよ。私のような悪魔やシスターのような慰み者にされた女には逆立ちしたって隊長にはならせてくれませんから。そんなことより隊長も自分のことを心配した方がいいですよ。悪魔に処女を奪われた女を警視庁のお偉いさんはどう考えるのか、ってね」 「華羽祢、あなたは一つ大きな間違いを犯しているわ。警視庁といえど実力社会なのよ」 音乃の周囲に白い退魔の気が生まれた。 「……!」 いまや音乃は華羽祢の悪魔の身体を焼き焦がす一つの高熱体と化していた。喉を掻ききることも忘れ、華羽祢は遁走する。 「逃がさないわ」 音乃が悪魔の羽を掴み、それを根本から引きちぎった。絶叫を放つ華羽祢。だが、そんな華羽祢の上に馬乗りになった音乃はマウントポジションから鉄拳の嵐を見舞う。 なにしろ清浄の気をまとった音乃が周囲にいるだけでも耐え難いのに、ガッチリと腹の上に居座られ拳の乱打を喰らう悪魔の惨めさといったら、華羽祢が思わず涙を流したことからも想像がつく。 そしてぐったりと動かなくなったかつての部下を見下ろし、音乃は腕に白の気を集めた。 「華羽祢、正気に戻してあげるわ」 消耗の酷い華羽祢はピクリともしない。だが、さすがに音乃のメラメラと燃える腕が秘所にあてがわれたとき、それが何を意味するかわからないほどではなかった。 必死に逃れようとする華羽祢の胎内に熱くて太くて異質な物が侵入してくる。悪魔として長い年月を生きてきた彼女にとっても、こんな激しい拷問は初めてだった。 音乃の腕が肘まで埋まる。ズッポリと白い気をまとった腕をのみこんだ華羽祢の秘所は苦しげなギチギチという悲鳴をあげ、盛んに分泌される愛液は湯気を立てていた。 「動かすわよ……」 音乃の腕が最初はゆっくり、そして次第に激しく出し入れされるようになった。華羽祢はその責め苦に悲鳴を上げた。T−80の戦車砲を喰らっても悲鳴一つあげなかった彼女がである。 華羽祢の胎内で音乃の拳は所構わず突きまくった。指を広げ、子宮を鷲掴みにし、最奥部を容赦なくこづく。いつしか華羽祢は自分の身体が音乃に馴らされていくのを感じた。それは甘美な敗北であった。と同時に彼女が悪魔であることに失格した証でもあった。 華羽祢が以前の彼女に戻ったとき、音乃は涙を浮かべて彼女に抱きついた。そして親友をあんな目に遭わせたことを詫び、許しを請うた。もちろん音乃の奴隷であることを自らに誓った華羽祢に否はない。 こうして再び華羽祢が仲間になり、迷宮最後の扉が開かれたのである。 第十三章;「悪魔と巫女」 「音乃隊長、華羽祢の看護は私がします。隊長は早く十二階へ」 「華羽祢……紫暮、大丈夫なのか?」 紫暮が深くうなずく。だが、そのうなずいた顔に浮かんだふてぶてしいまでの凶悪な笑みは音乃には見えない。 「大丈夫ですよ。すぐにあとから追いつきますから」 「そうだな、わかった。華羽祢、これを」 音乃はシスターに託された三枚の護符を華羽祢に渡す。 「きっと役に立つはずだとシスターがいっていた。お守りみたいな物だが、あたしが持っているより、お前が持っていた方がいいような気がする」 「ありがとうございます」 「さあ、治療の邪魔です。早くいってください」 紫暮に促され、音乃はメイド忍者の璧琉と共に十二階へ向かう。璧琉の話によると十二階は宝物庫があるだけで守護者は特にいないらしい。 「華羽祢……」 何か妙な胸騒ぎがした。もう彼女とはこれっきり会えないような、そんな胸騒ぎである。 「音乃さーん!」 「ああ、うん」 名残惜しげに音乃は親友の傍らを通り過ぎた。 紫暮は音乃の姿が見えなくなるのと同時に動き出した。豊満な乳房をさらけ出し、かつて地下十階で悪魔氷冴にしたのと同じ術を華羽祢にかけようというのだ。 「やっぱりな」 華羽祢が薄く笑った。 「なにがやっぱりなんだ?」 紫暮の声。だが、その声はどこかで聞いたことのある声だったが、紫暮の声ではなかった。 「紫暮、私はお前に出会ってから二つ、不思議に思っていたことがある。一つは普通の退魔師なら私を見た瞬間に嫌悪の表情を示すのに、お前は少しもそうではなかったことだ」 「それは音乃隊長に華羽祢は人間の味方をするいい悪魔だと聞いていたから」 「もう一つ腑に落ちなかったのは、お前から悪魔の匂いがすることだ。おそらく地下十階の守護者に取り憑いていた悪魔だな」 「フ、フフフフ……気づいていたか」 「同じ悪魔だ。気づかないわけがないだろう」 「では、どうして音乃隊長のいる前でそういわなかった?」 紫暮はすでに悪魔に取り憑かれていることを隠そうとはしなかった。思えば氷冴と闘ったあのとき、最後に悪魔の触手を噛み切った拍子に憑依されたのだろう。 「隊長はなぜかお前を信頼しきっていたからな」 「なるほど、信頼しきった相手に裏切られるのは辛いからな。まるで悪魔らしくない心配りじゃないか」 「上等な悪魔なんだよ、私は」 「そんな身動きもならない身体で何を抜かすっ!」 華羽祢が哄笑した。 「ハハハハハハハッ! 身動きできないだと? 貴様は悪魔のクセに我らの強力な回復力を忘れたのか!?」 華羽祢の身体が三メートル近く一気に移動した。背中の翼のおかげである。 「そういうお前も何かを忘れてはいないか? 悪魔が悪魔を退魔する事は出来ないのだ!」 「お前だって悪魔じゃないか」 「いや、オレにはこの娘の身体がある」 紫暮は邪悪に淫笑うと巨乳を揺すった。それは悪魔を金縛りにする退魔のリズムである。 「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!」 「うぐぐぅはがああっ! 喰らえぃっ!」 痺れる身体に残された最後の力で華羽祢はシスターの符を投げる。 三枚の符は空中で人型になり紫暮を囲んだ。 「な、なんだこれは……」 「陵辱〜陵辱〜」 「陵辱〜陵辱〜」 「りょおぉじょくぅ〜〜♪」 三体の符が紫暮の巫女服を問答無用でひっぺがす。 「退魔〜退魔〜」 「退魔〜退魔〜」 「たぁいまぁ〜〜♪」 符の怪物の股間が盛り上がりムキムキと巨大な肉棒が形成された。 「ま、負けるか!」 紫暮は乳を揺すり、退魔のリズムを刻む。だが、符は悪魔ではない。退魔のリズムは何の効果もないのだ。そして符の怪物は巨大な力で紫暮を押さえ込むと口、アヌス、アソコに肉棒を突っ込み始めた。 符の肉棒はすぐにも最初の一撃を発射する。白い液体がビュッビュッとかけられ、紫暮の顔が歪む。この白い液体こそ悪魔を撃退するシスター特製の聖水なのだ。 「ハハハハハハハハハッ!」 華羽祢が嘲笑う中、紫暮の胎内の悪魔が浄化されていく。 ![]() 紫暮の中の悪魔はとっくの昔に完全に浄化されている。それなのに三体の符の怪物は紫暮を陵辱し続けている。すでに紫暮は汁まみれだ。 「あー、酷い目にあったー……ケホッケホッ」 正気に戻った紫暮が白い液体の中で空気を求めて喘いでいる。三体の符は全ての聖液を放出し、しわくちゃの符に戻っている。 「どうやら正気に戻ったみたいね。それじゃあ、私たちも宝物庫に行きましょうか」 「ええ。あの、華羽祢さん。あらためてよろしくお願いします」 「こちらこそ」 紫暮は初めて華羽祢が心の底から微笑むのを見たと思った。 第十四章;「決戦! 地下十二階」 地下十二階は宝物庫である。 金銀財宝ざっくざくを夢見ていた音乃たち一行はその何にもない空っぽの部屋に肩すかしを食らったような感じがした。 「なんにもないですー」 「いや、あそこに何かがある」 見ると床に半ば埋まる形で拳大の大きさの珠が埋まっている。珠の表面は透明で、中にはモヤモヤとした気体のような物が詰まっていた。そしてその横には取扱説明書らしき注意書きがある。 『これは<欲望の魂>なり。持つ者の欲望をかなえる宝珠なり』 「ふーん、なんだか便利そうなお宝じゃないの」 音乃は珠を取り出そうとしたが、半ば床に埋まっている宝珠は取れそうにもない。 「ここに説明書の続きがあるですー」 『汝、この珠を手に入れたくば、その資格を見せて見よ』 そしてその説明書の下にはクロスワードパズルがあった。 縦の鍵1;創神蒼魔の大好物は? 横の鍵1;muskaの属性を答えよ そんな問題がいくつも並んでいる。要するにこれらの問題を解いて、クロスワードパズルを埋めて合い言葉を発見しないと宝珠はゲットできないシステムになっているらしい。 「わったし、こーゆーの得意でーす」 璧琉が嬉々として謎解きにかかる。 「えーと『創神蒼魔の大好物は?』キョニュウ、『muskaの属性を答えよ』はツルペタロリロリ、『山本提督の好きなキャラは?』ムラナコ……」 「やれやれ」 長期戦を覚悟した音乃はペッタリと床に座り込む。 しばらくして紫暮と華羽祢も合流する。だが、三人ともクロスワードの超マニアックな問題がさっぱりわからない。することもなしに寝転がっていると、その音が聞こえた。 ペタッペタッペタッ…… ズルッズルッズルッ…… 音乃・華羽祢・紫暮の三人が電流に弾かれたように飛び上がる。 「禍々しい気が……」 「恐ろしい敵が……」 「敵は一人じゃないぞ!」 だが、意に反して地下十二階の扉を押し倒してあらわれた敵は単独だった。 「あれは……」 音乃が絶句する。 巨大な怪物の半透明な体表に霧香、御子柴、菖蒲、パオ、彩、いずみ、紅葉、御影、氷冴、シスターの計十人の顔が浮かび上がっている。すべてこの迷宮で行方不明になった者たちの顔だ。 「あ……シスター、まさか……生きてたの?」 フラフラと怪物に近寄ろうとする音乃を華羽祢がものすごい力で引き留める。 「隊長、あれはシスターじゃない!」 「でも華羽祢、シスターを助けなきゃ……彼女はまだ生きて……」 水の悪魔の体表でシスターが切なげな顔をして、こっちへ来い、助けてくれと手招きしていた。 「あの娘は死んだ! あそこにいるのは抜け殻だ!」 「でも、でも……ッ!」 華羽祢が音乃を峰打ちに殴った。 「紫暮、隊長を頼む。私はあのバケモノを倒す」 紫暮は失神した音乃を受け取る。 「あのバケモノをどうやって倒すんですか……?」 「なに、あのバケモノなら知っている。人間を消化吸収するしか能のない低級悪魔だ。それに、あいつの弱点も知っている」 そういって華羽祢は水の悪魔に向かって歩み出す。 「液体怪物、人間を同化吸収するしか能のない低級悪魔、お前の弱点はこれだ」 華羽祢は指をパチリと弾く。水の悪魔の足下から巨大な炎が生まれた。 「グギャアアアッ!」 十人の退魔師が口々に悲鳴を上げる。身体を構成する水分が蒸発していく。 「グゴガハハハハァッ!」 氷冴の顔が吠えた。その口からブリザードが吹き出て足下の火事を鎮火する。 「チッ、取り込んだ敵の能力も利用できるのか!」 次の瞬間、華羽祢の胸を貫く正拳の一撃。御子柴の顔が吠えていた。 「グルルルルルッ!」 華羽祢の胸を貫いた御子柴の拳はそのまま彼女の心臓を鷲掴みにし、握りつぶした。 「……!」 虚空から落下する華羽祢。その落下地点には水の悪魔がいた。 「か、華羽祢……さん!」 紫暮が叫び、水の悪魔の体表に十一人目の顔が浮かぶ。 「ヒヒヒャハハハハハハ!」 答えたのは華羽祢の口を借りたバケモノだった。 「許さない!」 紫暮は失神している音乃を横たえるとバケモノと対峙した。 「紫暮ッ! やめなさい!」 音乃が目を覚ましていた。 「音乃隊長……その命令だけは聞けません。それにシスターがあたしを救ってくれたのはこの時のため何じゃないかって思うんです」 「紫暮ッ!」 紫暮は何の策もなくバケモノに突っ込んでいった。バケモノは口を大きく開けて彼女を呑み込む。だが、その瞬間こそが紫暮の狙いだった。 紫暮の乳房が退魔のリズムをハイテンションで奏でる。胎内に直接攻撃を喰らった水の悪魔は不快そうに身をよじるが、そのまま紫暮を呑み込んだ。 「紫暮……」 やがて水の悪魔の体表に紫暮の顔が浮かんだ。だが、彼女の賭は一方的な負けではなかった。一拍を置いて水の悪魔が崩壊したのだ。 「やった……」 喜んだのもつかの間、崩壊した水の悪魔はそのまま分裂して十二人の水の悪魔になって蘇ったのだ。 「璧琉ちゃん、宝珠はあとどれぐらいで取れそう?」 「もうちょっとですー」 「わかったわ。あたしが時間稼ぎをするから、その間に封印を解いて、何でも望みが叶うというその宝珠を持って逃げるのよ」 「はいですー。逃げるのは得意ですー」 音乃はクロスワードをする璧琉をかばうように両手を広げた。彼女の眼前には半透明の悪魔退魔士十二人、いずれもかつての仲間達の顔をしたバケモノがズラリ勢揃いしている。 「フフフフッ、警視庁霊能課月縒隊隊長・平間音乃。簡単にはやられないわよ」 音乃は全身に退魔の気をみなぎらせる。この白い気にかかれば雑魚妖魔など一発であの世送りだ。 だが、所詮は十二対一。 死闘は短く激烈だったものの音乃は完膚無きまで叩きのめされ、悪魔退魔士の股間にそびえる十二本の巨大なイチモツに刺し貫かれ、処女を失った。 「えーと、『ゆーやんの四大好きなものは?』ポニテヒンニュウピンハメイド……と」 十二人の仲間達が音乃を犯しまくる。華羽祢の股間にはえたイチモツが咽を貫いたと思えば、シスターの白い指が胸をまさぐり、霧香のイチモツがアナルを、紅葉と彩と紫暮のイチモツがアソコを同時に責めまくる。 ![]() いずみが音乃の乳首を噛み、御子柴が白い尻を舐め回し、菖蒲の指がクリトリスをもてあそぶ。 「やーっと最後の問題ですー。えーとなになに『DPCに送る誉め言葉は?』って、うーん、わかんないですー」 パオが音乃の全身に白い液体をふりかけ、氷冴と御影が自分のアソコに音乃の手を導き、根本までくわえこむ。 いつしか陵辱される音乃の身体も半透明になってきた。紫暮の退魔のリズムを喰らったおかげで退魔師を吸収することは出来なくなったようだが、こうやって仲間を増やすことは出来るらしい。 そして数分後、音乃もまた水の悪魔の手先になった。合計十三人の悪魔退魔師が最後に残った獲物、メイド忍者の璧琉を囲む。しかし、クロスワードパズル最後の問題に熱中している彼女はそれに少しも気がつかない。 「うーん、なんだろなー」 璧琉を囲む包囲の輪が狭まり、ついに彼女の襟首に腕がかかったときだった。 「あーっ! わかったですー。最後の問題の答えは『リョウジョク』です! そしてクロスワードの答えは『鼻から精液』ですー!」 その瞬間、床に埋め込まれていた宝珠が明るく輝いた。 エピローグ 屋敷の庭を散歩していた山本老人の目の前に十三人の全裸の女性と宝珠を持ったメイド忍者の璧琉が唐突にあらわれた。 迷宮に挑戦し、水の悪魔に呑み込まれた退魔士たちも元の肉体を取り戻している。華羽祢の悪魔の肉体が人間のものになり、顔の傷跡と目も治っているのはちょっとした余録のようなものだろう。 そして璧琉が宝珠を抱きしめ、駆け寄ってくる。 「ご主人様ー、璧琉は任務を無事に果たしましたですー」 手を振って駆け寄ってくる璧琉の足が庭のデコボコに引っかかる。思わず両手を振り回し、肝心の宝珠が宙に舞った。 青空に吸い込まれた珠が戻ってきた先は璧琉の口の中だった。 ゴックン 「えへへへへー、飲んじゃったですー」 「……音乃君、下剤を1カートン用意してくれるかね?」 こうして朧花の夏休みの宿題はうやむやになってしまったのである。 <了> |
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